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だれのためのバリアフリー

大藪眞知子

 私の連れ合いは、ポリオによる両下肢障害者です。2年前、ふとしたことで骨折し、車いす生活を余儀なくされました。以前から覚悟はしていたものの、やはり最初は多少の動揺や戸惑いもありました。しかし今では、なんとかこの障害を受容することができるようになりました。住まいは、先のことを考えて、ある程度バリアフリーにしていましたし、職場もその点に関してはほとんど問題はないようです。ただ問題は、外出した時の段差、トイレ、駐車場などです。
 外食や買い物をするにも入り口に段差があるところはどうしても避けてしまいます。お寺やお墓も車いすで行くにはちょっと大変です。でも、これらはいざとなれば人手を借りればなんとかなります。最も困るのは、やはり駐車場とトイレです。小規模施設はもちろんのこと、この問題は大きな施設にもあるのです。
 ハートビル法の制定以来、デパート、スーパー、ホテルなど、一定の規模のところには、障害者用駐車場・トイレは必ずといっていいほど設置されるようになりました。しかし、それらの設備は本当に障害者の利用に供しているのでしょうか?
 まずはトイレ。建物自体が古いと、たいてい各階には備えられておらず、7階にあるというので、エレベーターでやっとこさ行き着いたら鍵が掛かっていて、やむなく地階へ、などということはしょっちゅうです。不審者が進入(?)するからというのが理由だそうですが、さらに清掃が行き届いていないことも多いようです。使用頻度が少ないとみて、清掃回数も少なくしているのでしょうか。そして最も困るのが、やっと見つけて入ろうとしたら、使用中という時です。絶対数が少ないのは無論のこと、広いから、ほかが混んでいるからということで、一般の人が使っているケースが大変多いのです。ある時など、ペット犬を3匹連れた中年女性が出てきたのには、本当に開いた口が塞がりませんでした。時々入り口に「どなたでもご利用ください」と表示してあるのを見かけますが、どうもその意味を取り違えている人が多すぎます。そうである以上、こんな表示はないほうがいい!
 さて、次に駐車場です。私たちがよく利用する京都市内の地下駐車場は、かなりの台数分を設けていますが、ほかに空きがたくさんあるにもかかわらず、障害者用はいっぱいで、停められないことがしばしばです。しかも大型の高級外車が並んでいたりします。あの広いスペースは、車いすを上げ下ろしするためのもので、愛車を守るためのものではありません。また、軽自動車やタクシーまで停まっていることもあります。出入り口、エレベーター、トイレに近くて便利だからでしょう。管理が行き届いていないのは無論のこと、ドライバーのモラルの低さには怒りさえおぼえます。アメリカではこのようなドライバーには厳しい罰則が与えられるとか。一概には言えないかもしれませんが、このままでは何のための設備、だれのためのバリアフリー、と言わざるを得ないのです。

(おおやぶまちこ 京都市在住)