音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

雇用面からの提言

茅原聖治

 1995(平成7)年に提示された障害者プランでは、雇用に関しては、1.法定雇用率達成のための障害種類別雇用対策の推進、2.重度障害者雇用の推進、3.職業リハビリテーション対策の推進、が目標として掲げられた。
 1については、法定雇用率制度を中心とした雇用促進対策が採られ、2001(平成13)年の民間企業実雇用率は1.49%(法定雇用率1.8%)と障害者プラン策定後も、少しずつであるが改善されている。2では、『平成13年度障害者白書』における平成12年度の「障害者プランの進捗状況」によれば、第三セクターによる重度障害者雇用企業は22都道府県域にわたり、34の企業が操業していることを示している。3については、全国に障害者職業能力開発校が19校(国立13校、府県立6校)が設置され、障害の重度化・多様化、さらに産業構造の変化などに対応してきている。
 このように、障害者雇用は障害者プランの枠を越えて多種多様な制度・政策に牽引(けんいん)されて進展しているように見える。しかし、前述した障害者プランによってめざされた雇用対策は従来の伝統的なものとほとんど大差ない。しかも雇用については数値目標が曖昧(あいまい)で、障害者プランで雇用はどこをめざしているのかが不明確である。したがって、新しい障害者プランでは他の項目と同じように数値目標をはっきり示し、いつまでに目標を達成するかのスケジュールが必要であるのは言うまでもないが、問題点はそれだけではない。
 第一に、障害者の雇用形態の多様化である。近年のIT技術の発達は在宅雇用を可能とし、援助付き雇用という新しい考え方も米国から導入されつつある。特に援助付き雇用は重度障害者雇用において、今後重要な役割を果たすと考えられるので、援助を行うジョブコーチの量的・質的充実を新障害者プランにおいて数値化することが求められる。
 第二に、雇用と福祉的就労との有機的な接続である。先の障害者プラン策定時は雇用を管轄する労働省と福祉的就労を担当する厚生省は別々の省庁であった。今や、この二つの省庁は厚生労働省として統合されているので、雇用就労と福祉的就労の間に行き来ができる有機的な結びつきを考慮する必要が、新障害者プランには求められる。
 言うまでもなく、新障害者プランは障害者の生活全体をカバーするものにする必要がある。その意味で雇用も、今後さらに重要な要素となると考えられる。

(かやはらせいじ 龍谷大学経済学部非常勤講師)