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国際協力面からの提言

中西正司

1 基本方針

 これまでの海外支援と言えば、途上国にリハビリテーションセンターや職業訓練センターなどの箱物を作ることが主流であった。また人材開発というものも在るにはあったが、PT、義肢装具技師などの専門家の養成コースはあっても、障害当事者のリーダーが海外の支援に出かけていくということは考えられもしないことであった。
 わが国では新障害者プランの中で、施設から地域での自立生活への動きが加速化されようとしている時、海外支援では施設増設や専門職員養成を続けていてよいものだろうか。
 日本では70年代から施設中心の政策方針を採った。そのために障害者は今、社会的経験を奪われ、施設依存から来る自信の喪失感に直面し、自立生活センターの自立生活プログラムやピアカウンセリングプログラムを必要としている。国もそれに気づいて市町村障害者生活支援事業でこれらの事業を制度化し、施設中心政策を展開した。
 日本が経験した施設政策の失敗を、途上国、特にアジア諸国の障害者には味わわせたくない。同じお金を掛けるのであれば、在宅生活の継続と地域生活の支援のための政府の事業展開を支援してほしい。それが障害当事者からの切なる願いである。

2 具体的施策提案

 具体的に言えば、以下のような施策を提案したい。
1)途上国における当事者団体の育成支援…福祉は障害当事者のためにあり、当事者のニーズを聞くことから、施策は生まれる。まず当事者団体を育成することから始めるべきである。
2)当事者団体のリーダー育成…日本等当事者団体の成熟した国から講師を招き研修会を開き、途上国で障害者のリーダーを育成することが急務である。
3)自立生活運動の展開…施設もなにもない国で、障害者支援をどう展開するか。ニーズを知った障害者を中心に団体が形成され、必要な自立生活サービスモデルを海外の支援を得て数年行う。その実績を政府に示し、徐々に移管する。在宅ケアから入るのは金がかかり過ぎるという主張があるが、自立生活支援では月に5000円の家賃、24時間介助者を雇っても1万円、生活費5000円の合計2万円で暮らせる。このようなアジアの国は多い。20億円もかかる施設を作る海外援助をするのには抵抗がないようであるから、その金で8000~1万人の地域支援は可能ということになる。
 介助だけでは障害者は暮らせないという事情もあるので、精神的なエンパワメントをはかるピアカウンセリングや障害者特有の生活能力を育てる自立生活プログラムを指導させるために、障害者専門家の派遣は必須事項である。

(なかにししょうじ 全国自立生活センター協議会代表)