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所得保障

金政玉

 DPI日本会議では、2001年8月、国際人権規約の大きな柱となっている社会権規約(経済、社会、文化的権利に関する国際規約)に基づく第2回「日本政府報告」に対するNGOレポートを提出した。レポートの関連部分では、次の二点を問題点として指摘している。
 1.社会権規約第9条で「…締結国は社会保険その他の社会保障についてのすべての者の権利を認める」と明確に述べているが、現状においては、就労が困難な重度障害者が家族や施設入所から脱却して地域生活を求めていく場合、所得保障が極めて不十分な状況にあること。
 2.障害基礎年金を受給することができない無年金障害者が多数存在する。年金制度上のさまざまな理由による無年金障害者は、厚生労働省によると8万人に上るが、実際はそれよりも多いと思われる。このような現状は、同規約第9条からみると明らかに権利侵害状態であるといえるが、「日本政府報告」では、「障害者プラン」(95年)において「無年金障害者の救済」を課題にあげているにもかかわらず、残念ながらそのことについて何も触れていない。
 一般的に就労の困難な障害者の場合、年金等のさまざまな給付は生活の根幹にかかわるものとなっている。障害基礎年金を受給できる重度障害者は全障害者の30%程度でしかなく、受給者中80%以上が生活保護の最低生活基準以下の年金額でしかない。したがって、障害基礎年金を受給していても、地域での自立生活を行うためには生活保護を受けざるを得ない障害者が多数存在するのが現状である。
 しかし、現行の生活保護制度は、「国民生活最後の砦」として「最低限度の生活」ということだけが強調されているため、民法上の「扶養義務」をはじめとする受給の要件が非常に厳しく、制度の趣旨からみても救貧対策に基づく恩恵的側面が強い。就労の困難な障害者については、障害基礎年金で最低の生活が可能な給付額を保障すべきである。現実的に障害基礎年金の拡充が困難であれば、生活保護制度について扶養義務等の受給要件を緩和し、権利性を明確にした受給者主体の制度に抜本的に見直すべきである。
 こうした方向を指向する観点から、都道府県・市区町村で障害者団体との協議と合意に基づき所得保障にかかわる当事者のニーズを把握し、それを全国的に吸い上げて「新障害者プラン」の基盤整備にかかわる数値目標の一部に位置づけていくことが必要である。

(きむじょんおく DPI障害者権利擁護センター)