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介護

亀山幸吉

 障害者プランは、ノーマライゼーションとリハビリテーションの理念を踏まえて、地域で共に生活するためになど、七つの視点に基づいて施策が展開されました。《介護・介助》に関しては、どの視点とも関連がありましたが、特に具体的施策目標との接点においては、《地域で共に生活するために》の視点について触れておくべきかと思います。
 地域生活援助事業としてのグループホームや福祉ホームの拡充、地域における自立支援としての障害児の地域療育体制の整備(重症心身障害児・者等の通園事業、全都道府県域において、障害児療育の拠点となる施設機能の充実)、精神障害者の社会復帰の促進、さらに介護サービスの充実として訪問介護員や短期入所生活介護、日帰り介護、施設サービスとして療護施設や知的障害の更生施設の拡充そして難病者への適切な訪問介護事業の推進を掲げ、具体的数値目標を示し、取り組んできました。しかし、全体的には必ずしも前文にあるような「障害のある人々が社会の構成員として地域のなかでともに生活を送れるように、ライフステージの各段階で…活動の場や保健福祉サービスが的確に提供される体制を確立…」したとは言えないのではないでしょうか。
 今日も某県の中都市で高齢障害者を父に持つ息子が介護疲れから殺人事件の記事が眼に飛び込んできました。今後、支援費制度に障害者福祉制度も移行するなかで、ハード面で施設や在宅介護サービスの選択権が保障しうる社会的基盤整備が必須であり、それらについては国家的責務が存在するのではないでしょうか。「障害者計画」も地方自治体によっては具体的数値のもとに計画、実行が不備な点もあり、国は強力な指導と財政的支援が必要であり、新プランで具体化すべきです。
 そのようなハード面と合わせ、ソフト面として、介護保険に関連する在宅介護サービス事業所は必ずしも支援費制度での障害者介護に積極的参入の意志は弱いものと判断でき、各障害者介護、介助の専門的ケアサービスが可能になりうる障害者介護の専門職者の量的質的向上に向けて研修制度等の充実を図る必要があります。特に人権思想を踏まえて、単なる生命的存在としての人間理解ではなく、社会的存在としての人間理解のもとに、各障害の特性を理解して障害者介護、介助論を展開し、人間らしい生活の実現に向けての量的質的保障をプラン化してほしいと思います。
 まだいまだに思うことは、身体障害や知的障害、精神障害よりも社会が負荷している障害のほうが重いということです。社会変革、意識変革に向けての取り組みをさらに強めない限り、障害者の求める介護は実現しないのではないでしょうか。

(かめやまこうきち 淑徳短期大学教授)