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交通バリアフリー

箭子稔

 平成8年に施行された障害者プランも、今年でもう最終年になりますが、あの頃と比べ交通を取り巻く環境を比較してみて、障害者プランが我々の生活にどのような影響を与えたかということについて、考えてみたいと思います。
 「交通バリアフリー法」「ハートビル法」など、障害者の自立を促すための施策の成立が後押しし、都市圏での交通アクセス率は確かに向上しました。実際都内などに出かけると、公共交通を利用する車いす障害者を見かける回数も、以前に比べだいぶ増えました。これは我々障害者の要望を、行政が真摯に対応した結果と捉え、まず評価したいと思います。ここにきてようやく従来の措置的な交通弱者対策から、まちづくり・地域福祉という大きな視点を含んだ交通バリアフリーへと、一歩前進したのではないでしょうか。この思想の質的な転換という意味で、障害者プランの果たした役割というのは大きいと思います。
 ただ障害者プラン全体の枠組みの中でのみ考えたとき、実際の交通バリアフリーの普及に、どれだけの割合でプランが寄与したかを考えると、他の(いわゆる箱ものの)充実ぶりに比べあまりにも遜色があることは、以前から言われているとおりです。国土交通省など、他省庁との具体的な連絡・調整(特に数値目標)等を視野に含め、これが新障害者プランでの第一の課題になると思います。
 またこれからの問題なのですが、障害者や高齢者に関する法律を策定したり意見を交換したりする場において、今までのような参考意見を述べるだけの当事者参画でなく、行政や事業者と対等に発言し、その意見がダイレクトに返ってくるような、ダイナミックなシステム作りが求められてくるのではないでしょうか。そのためにはまず当事者側がエンパワメントし、より専門性をもつ強固な組織作りが求められるなど、我々の側の課題も多々あります。
 いずれにせよ行政は、旧障害者プランの交通施策を通して、地域福祉がどのように向上し、何が欠落していたのかという正しい見解を、データを交え公表するべきでしょう。まずそういった過去の反省のうえに、新たな話し合いの場を設けなければ、新障害者プランでの建設的な考え方は生まれてきません。

(やこみのる わかこま自立生活情報室事務局長)