音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

精神障害

山口弘美・山口弘幸

 精神障害者の生活がどう地域に根ざしていくのか、この命題は20世紀、21世紀と時代を超越した課題である。精神障害者を取り巻く生活状況は、「障害者」として捉えられる時間があまりに浅いことを前提としつつも、ノーマライゼーションの理念からは程遠く、就労、教育、制度、情報、交通、文化活動等のさまざまなバリアは人々の意識にも、生活を支えるはずの法の中にも根強く存在している。
 さて、これまでの障害者プランの成果を振り返る時、その当時の社会的入院患者の34万人(うち10万人は社会的条件が整えば退院可能)を対象にしたものでありながらも、掲げられた障害者プランの精神障害者社会復帰施設の設置数値目標はおおむね3万人を対象としたものであった。初めから低い目標設定でありながらも、現在までの障害者プランの状況を見てみると、その数値目標は入所授産施設、地域生活支援センター、福祉工場においては、はなはだ達成されそうもない。この原因として、国の障害者プランを受けた各県の障害者プラン作成にあたって、状況把握の不十分さが挙げられよう。また障害者プラン達成を義務化としなかったために、民間が手を挙げるのを待っている状態が見受けられた。
 今後、新障害者プランにおいてはこれらの点を十分に踏まえ、達成に向けての努力と対象とすべき精神障害者の拡大を切にお願いしたい。今なお病院には何十万人もの社会的入院を続けている人々の存在を忘れないでほしい。
 新障害者プランに対する提案としては次のことを提案したい。1.精神障害者に対する施策としてだけではなく、国民全体の視野に立ったサービス計画の策定、2.医療法と福祉法が混在する精神保健福祉法下においての福祉体系の不備を配慮した障害者計画、3.今後の3障害統合という施策展開を踏まえた総合的なサービス供給体制の確立、4.障害種別、個別性に根ざしたきめ細かいサービス供給体制の確立、5.人権意識に配慮された環境整備等の推進、6.既存の社会復帰施設のより柔軟な有効活用と企業等との連携強化を支援するものであること、7.市町村精神保健福祉時代で地域格差の拡がりが生まれつつある市町村に対して、市町村障害者福祉計画策定に一定の配慮がなされること、8.市町村障害者計画推進に対する市町村への責任の明確化。

(やまぐちひろみ NPO法人全国精神障害者団体連合会理事長、やまぐちひろゆき 長崎純心大学大学院)