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てんかん

福井典子

 てんかんのある人は100人に1人近くいると言われているが、医療、教育、福祉、就労などをとりまく状況はきわめて貧しい。発作がなくなり、安心して暮らしていくことができるようにという願いは切実である。当協会が新障害者プランの策定に、特別に大きな期待をもってのぞむ所以である。
 現行プランは障害者施策推進のうえで一定の役割を果たしたとはいえ、数値目標が低いうえに市町村計画の策定が義務化されていないこともあって、不十分なまま終わったことは非常に残念と言わなければならない。
 欠格条項の見直しでは、相対的欠格事由への移行が中心であったが、道路交通法改正に伴う運転免許取得では、当協会も果敢な運動を展開し、てんかんのある人の社会参加に光明を与えるものになった。また、無認可作業所の法内施設化への方途が開かれ、街づくりや交通などのバリアフリーも少しずつ定着してきてはいる。
 しかし「障害者基本法」では「てんかん」などを対象外にし、諸施策の遅れは著しく、市町村への権限委譲による地域差もいっそう拡大するばかりである。無年金問題は未解決であり、割当雇用の適用も見送りとなっている。来年からの支援費制度には不安が多く、基盤整備が整うまでは実施の延期を求めているところである。
 以上のような総括のうえに今後の新障害者プランについては、抜本的な施策の転換を強く望むものである。
 まず、第一に「障害者基本法」を見直し、てんかんを含むすべての障害者を対象とした総合的な福祉を制定すべきである。障害種別の体系を廃止して、交通運賃の割引や福祉諸制度の適用など、すべての社会資源を他の障害者と平等に利用できるようにすべきである。
 2番目には自治体の障害者プラン策定を義務化すべきであり、「絵に描いた餅」にしないよう国の責任を明確にすべきである。
 3番目には、てんかんのある人たちの医療、教育、福祉、就労の各分野の要求を計画の中にきめ細かく具体的に盛り込むべきである。
 いつでもどこでも安心して受けられるてんかん医療、学校教育での福祉教育(てんかんについて教えるなど)の義務化、所得保障と地域で暮らすための支援策、障害者雇用率の適用と雇用の場の拡大など、遅れているてんかんについての特別な推進体制をつくることである。
 そして最後に、計画や政策決定の場へ障害別当事者の参加を保障することが重要である。何よりも憲法で保障された基本的人権の保障を基礎に、実態に則したプランの策定とその実現のため、協会も全力をあげなければならないと奮い立つ思いである。

(ふくいのりこ (社)日本てんかん協会常務理事)