支援費制度の施行準備状況について
厚生労働省障害保健福祉部支援費制度施行準備室
はじめに
障害者福祉施策に係る支援費制度の施行まで、いよいよあと半年ばかりとなりました。
本誌5月号にて準備状況についてご紹介して以降、厚生労働省では、6月に支援費制度担当課長会議を開催し、支援費制度事務処理要領等の提示を行ったほか、関係政省令の整備、施設・事業者の人員・設備等や障害程度区分に関する省令の公布など、支援費制度施行に向けて着実に準備を進めてきているところです。
9月12日には支援費制度担当課長会議を開催し、支援費基準、利用者負担基準の案をお示ししました。本稿では、今回の支援費制度担当課長会議においてお示しした内容を中心に支援費制度について紹介します。
支援費基準
支援費基準は、厚生労働大臣が定める基準を下回らない範囲内において、市町村長が定めることになっています。厚生労働大臣が定める支援費基準は、次の基本的な考え方に基づいて設定しました。
1.各居宅支援及び各施設支援ごとに、当該サービスに通常要する費用を適切に評価した基準とすること。
2.障害者の地域生活の推進を評価するような基準とすること。
3.施設訓練等支援費は、重度障害者や重複障害者が適切にサービスを利用できるように、障害程度区分に応じて格差を設けた基準とすること。
4.居宅生活支援費のうち、デイサービス、短期入所及び知的障害者地域生活援助に係る支援費基準についても、障害の程度を考慮した基準とすること。
5.居宅生活支援及び施設訓練等支援を担う事業主体において、安定的かつ効率的に事業運営が行えるような基準とすること。
6.同一のサービスであれば、設置主体にかかわらず、同一の支援費基準とすること。
7.居宅支援及び施設支援に必要な人件費等の水準が同じような地域ごとの基準とすること。
8.利用者や事業者などにわかりやすく、簡素で合理的な基準とすること。
9.支援費基準の具体的な設定に当たっては、現行の措置制度からの円滑な移行に十分配慮すること。
なお、今回お示しする基準額(案)は、今年度の人事院勧告(△2.03%等)等を考慮していないものであり、今後の予算編成過程において、変動することが見込まれるものですのでご留意願います。
主な支援費基準額(案)については、表1のとおりですが、区分A、区分Bといった障害程度区分については、本誌5月号で取り上げたとおり、個々の障害者ごとにその支援の必要性を把握するため、各施設支援ごとに定められたチェック項目ごとに聴き取りを行い、チェック項目ごとに三つの選択肢に支援の必要性の大きい順に2点、1点、0点を与え、その合計点数により障害程度区分(3区分)を決定することとしています。
なお、各施設支援の認定の基準は表2のとおりです。また、居宅支援に係る区分1、区分2といった障害の程度による単価差の区分については、概要を表3として掲載しています。
表1 支援費基準額(案)
※今回お示しする基準額(案)は、今年度の人事院勧告(△2.03%等)等を考慮していないものであり、今後の予算編成過程において、変動することが見込まれるものである。
(1) 施設訓練等支援費(例)(1月につき)
(2)居宅生活支援費(例)1.居宅介護支援費
※2 日常生活支援は身体障害者居宅支援のみ。 2.デイサービス支援費
3.短期入所支援費
4.知的障害者地域生活援助支援費(1ヶ月につき)
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表2 障害程度区分の内容(案)
障害程度区分の認定の基準の内容については、身体障害程度区分に関する省令(厚生労働省令第98号)第2項、知的障害程度区分に関する省令(厚生労働省令第99号)第2項に基づく厚生労働省告示(「厚生労働大臣が定める方法」)としてまもなく公布する予定である。
障害程度区分の認定点数(案)
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表3 居宅支援に係る障害の程度による単価差の決定について
居宅支援のうち、身体障害者デイサービス、身体障害者短期入所、知的障害者デイサービス、知的障害者短期入所、知的障害者地域生活援助及び児童短期入所については、従来より障害の状況に着目した単価差が設けられてきたところであり、支援費制度においても必要な見直しを行った上で以下のとおり障害の程度による単価差(支援費額の差)を設ける。 1.身体障害者短期入所及び身体障害者デイサービスの場合 現行と同様の取扱いとする。具体的には、次のとおり。 区分1:食事、排泄、入浴及び移動のうち3つ以上の日常生活動作について 全介助を必要とする程度又はこれに準ずる程度 区分2:食事、排泄、入浴及び移動のうち3つ以上の日常生活動作について 一部介助を必要とする程度又はこれに準ずる程度 区分3:区分1及び区分2に該当しない程度 2.知的障害者短期入所及び知的障害者デイサービスの場合 身体障害者に係る居宅支援との整合性をとり、3区分の単価差を設定する。 具体的には、 ○食事、排泄、入浴、移動に係る日常生活動作について、どの程度の支援が必要か、 ○どのような行動障害があり、どの程度の頻度で対応を要するか、 に着目して適用すべき単価を決定する。 3.知的障害者地域生活援助の場合 従来どおり2つの単価を設定することとし、日常生活動作への支援及び行動障害への対応等の観点により、適用すべき単価を決定する。 4.児童短期入所 身体障害児については1に、知的障害児については2に準じて、適用すべき単価を決定することとする。 |
利用者負担
利用者負担額は、身体障害者(知的障害者、障害児)またはその扶養義務者の負担能力に応じ、厚生労働大臣が定める基準を超えない範囲内において、市町村長が定める基準により算定することとされています。具体的には、負担能力に応じてまず利用者本人が負担することとし、その負担額が利用者本人にかかる支援費基準により算定した額に満たない場合には、その不足分について負担能力に応じて主たる扶養義務者からの負担を求めることとしています。
厚生労働大臣が定める利用者負担基準の具体的な決定については、平成15年度の予算編成過程において行われるものですが、現段階で考えられる基準は次のとおりです。
(1)扶養義務者の範囲について
・現行の措置施設における費用徴収制度を踏まえ、その扶養義務者の取扱いを超えない範囲で設定する。
・施設訓練等支援及び居宅生活支援について、整合性を持った取扱いになるように設定する。
主たる扶養義務者の範囲(案)については、施設支援及び居宅支援とも次のとおりです。
○利用者が20歳以上の場合
支給決定の際に、同一世帯・同一生計にある配偶者及び子のうち最多納税者
○利用者が20歳未満の場合
支給決定の際に、同一世帯・同一生計にある配偶者、父母及び子のうち最多納税者
(2)負担能力の判定方法について
・身体障害者及び知的障害者に係る施設訓練等支援の利用者本人分については、利用者本人の前年の収入から必要経費を控除した額に基づき判定する。
・身体障害者及び知的障害者に係る居宅生活支援の利用者本人分については、利用者本人の前年の所得税額等に基づき判定する。
・身体障害者及び知的障害者に係る施設訓練等支援・居宅生活支援の扶養義務者分については、主たる扶養義務者の前年の所得税額等に基づき判定する。
・障害児に係る居宅生活支援については、障害児及び主たる扶養義務者の前年の所得税額等の合算額に基づき判定する。
(3)利用者負担額の設定について
1.施設訓練等支援
○施設訓練等支援の利用者負担額については、現行の費用徴収制度における費用負担額と比べて、著しく異なることのないよう、十分配慮して設定する。
○階層区分及び負担基準月額については、現行の費用徴収制度と同様とする。
○暫定措置としての負担基準月額の上限については、平成8年度以降据え置いていることから、その間の施設における生活費のアップ率を考慮して所要の改定を図る。
2.居宅生活支援(表4参照)
○居宅生活支援の利用者負担額については、低所得者に配慮し、所得に関わらず必要なときに必要なサービスが利用できるよう、居宅介護を利用する場合30分当たり、デイサービス及び短期入所を利用する場合1日当たりの単位ごとに負担能力に応じた負担額を設定する。
なお、その際、利用者負担額がその支給量に応じて著しく増大しないよう、負担能力に応じた階層区分ごとに、居宅生活支援の利用者負担総額について、本人及び扶養義務者それぞれに上限月額を設定する。
階層区分については、施設訓練等支援との整合性を持った取扱いとするため、施設訓練等支援の扶養義務者分と同様とし、上限月額についても施設訓練等支援の通所者に係る扶養義務者分の負担基準月額と同額とする。
表4 厚生労働大臣が定める利用者負担額の基準(案)
〔居宅生活支援費の利用者本人分(障害児を除く)及び扶養義務者分(案)〕
税額等による階層区分 | 上限月額※ | 負担基準月額 | ||||
居宅介護 30分当たり |
デイサービス 1日当たり |
短期入所 1日当たり |
||||
A | 生活保護法による被保護者 (単給を含む) |
円 0 |
円 0 |
円 0 |
円 0 |
|
B | A階層を除き当該年度分の市町村民税非課税 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
C1 | A階層及びB階層を除き前年分の所得税非課税の者 | 当該年度分の市町村民税 所得割非課税 (均等割のみ課税) |
1,100 | 50 | 100 | 100 |
C2 | 当該年度分の市町村民税所得割課税 | 1,600 | 100 | 200 | 200 | |
D1 | A階層及びB階層を除き前年分の所得税課税の者であって、その税額の年額区分が次の額である者 | 30,000円以下 | 2,200 | 150 | 300 | 300 |
D2 | 30,001 ~ 80,000円 | 3,300 | 200 | 400 | 400 | |
D3 | 80,001 ~ 140,000 | 4,600 | 250 | 500 | 600 | |
D4 | 140,001 ~ 280,000 | 7,200 | 300 | 700 | 1,000 | |
D5 | 280,001 ~ 500,000 | 10,300 | 400 | 1,000 | 1,400 | |
D6 | 500,001 ~ 800,000 | 13,500 | 500 | 1,300 | 1,800 | |
D7 | 800,001 ~ 1,160,000 | 17,100 | 600 | 1,700 | 2,300 | |
D8 | 1,160,001 ~ 1,650,000 | 21,200 | 800 | 2,100 | 2,800 | |
D9 | 1,650,001 ~ 2,260,000 | 25,700 | 1,000 | 2,500 | 3,400 | |
D10 | 2,260,001 ~ 3,000,000 | 30,600 | 1,200 | 3,000 | 4,100 | |
D11 | 3,000,001 ~ 3,960,000 | 35,900 | 1,400 | 3,500 | 4,800 | |
D12 | 3,960,001 ~ 5,030,000 | 41,600 | 1,600 | 4,000 | 5,500 | |
D13 | 5,030,001 ~ 6,270,000 | 47,800 | 1,900 | 4,600 | 6,400 | |
D14 | 6,270,001円以上 | その月におけるその利用者に係る支援費基準により算定した額 | その月におけるその利用者に係る支援費基準により算定した額 | その月におけるその利用者に係る支援費基準により算定した額 | その月におけるその利用者に係る支援費基準により算定した額 |
(注1)各サービスごとの利用者本人の負担基準月額が、その月におけるその利用者に係る支援費基準により算定した額を超える場合には、この表にかかわらず、その算定した額とする。
(注2)各サ-ビスごとの扶養義務者の負担基準月額が、その月におけるその利用者に係る支援費基準により算定した額(その利用者が本表により負担する場合には、当該利用者に係る負担基準月額を控除した残額)を超える場合には、この表にかかわらず、その算定した額とする。
※利用者負担額がその支給量に応じて著しく増大しないよう、負担能力に応じた階層区分ごとに、居宅生活支援の利用者負担総額について、1ヶ月当たりの上限を設定する。
今後の予定
いよいよ支援費制度施行まで半年となり、今年度第3四半期には市町村において支給申請の受付、支給決定が開始されます。また、第4四半期には、支援費基準、利用者負担基準が告示として公布され、受給者証が交付されることとなります。今後、厚生労働省としては、支援費制度の円滑な施行のために、制度の内容の周知や広報に努めていきたいと考えています。