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利用者中心の支援費制度に
―全日本手をつなぐ育成会本人活動支援委員会から―

光増昌久

 来春の制度改革を目前にして、知的な障害のある方の不安はいっぱいです。市町村の担当者に聞いてもまだ詳しいことはわからないとの返答が返ってくる。今までと違う理念で制度改革をするのですから、利用者中心主義の基本に立ち返って、障害のある一人ひとりに合ったサービス提供をすべく関係者が一緒になって制度改革を進める必要があります。
 今まで知的な障害のある方へのわかりやすい情報提供の取り組みは各国に比べて遅れていました。スウェーデンの知的な障害のある人たちに関する法律の策定時には、当事者への聞き取りもしたり、いろいろな報道媒体を通してわかりやすい情報提供が行われて国全体で取り組んできました。わが国はこの点、当事者中心になっていません。関係者、事業者側が中心でサービス利用者への情報提供が不足していました。今からでも遅くはありません。既定のスケジュールを消化するあまり、やさしくわかりやすい情報提供を怠ることは許されないのではないでしょうか。

本人を対象にした学習会の開催

 全日本手をつなぐ育成会では、行政からの情報提供だけでは幅広い利用者の要望には応えられないであろうとの思いから、本人活動の支援の一環として、支援費に関するテキストの作成『支援費ガイドブック これであなたも支援費つう』(自分に合ったサービスを選び利用するために)(7月25日発行)とテキストを使った学習会の開催を行っています。この事業は、今年度の中央共同募金会からの補助金の助成を受けています。
 まだ支援費制度の全体が見えない時期に、編集会議を本人の方も含めて行い、ただ単なるパンフレットやテキストではなく、実際に区市町村の支援費を申請する担当者のところにこのガイドブックを持って行き、話や説明を聞きながら自分に合ったサービスを選択して選び、利用できるようにしようとの考えで作成しました。A4サイズで38ページのテキストですが、内容は6月段階でわかる最新の事項を入れています。
 では簡単に内容を紹介します。1支援費ってなに?、2『支援費つう』になろう!、3支援費に入っているサービス、4支援費に入っていないサービス、5いま、あなたはどんなところで暮らしていますか?、6地域で生活するときに使えるサービスは、どんなものがあるでしょうか?、7ホームヘルプサービスはなにをしてくれるのでしょうか、8デイサービスを利用する、9ショートステイ(短期入所)、10グループホーム、11入所施設ってなあに?、12通所施設、13どんな手つづきが必要か?、サービス計画を作ってみましょう、14花子さん、拓也君と支援者の鈴木さんの話から、15支援費キーワード、の15項目からなっています。
 『支援費つう』になろう!のポイントは、1.自分の生活や、夢(これからしたいこと)は、自分で考えましょう、2.「選ぶこと」を勉強しましょう、3.できることと できないことを はっきりさせて、自己主張(こうしてほしいということ)しましょう、4.かならず書いてあることを読んで、内容がわかってから、書類に名前を書いたり、印鑑(判)を押すようにしましょう、5.自己負担金(自分で払わなければならないお金)の金額(いくらか)に注意しましょう、6.一度決まっても、変えてほしいときは「変えてください」と、いうことができます、という内容です。
 しかし、テキストを読んだだけでは難しいので支援費について理解し、うまくサービスを利用する学習をする必要があります。今年度は全国8か所で研修会を実施しています。

支援費学習(研修)会の予定

 全日本手をつなぐ育成会の8ブロック大会の本人大会(本人分科会など)に合わせて開催しています。北海道(帯広市7月27日)、東北(全国大会青森市9月8日)、関東甲信越(水戸市9月14日)、東海北陸(富山市9月21日)、九州(鹿児島市9月28日)、中国(福山市10月20日)、近畿(大阪市11月17日)、四国(調整中)。

帯広での内容紹介

 本人委員の方から、なぜ支援費ガイドブックを作ったのか、このガイドブックをうまく利用してほしいことを伝えました。PCプロジェクターを使いガイドブックの内容を説明、簡単な寸劇(同じパンを作っている作業所と通所授産施設でも、作業所は支援費の対象にならないことを本人の方がパン屋さんになったつもりで作業内容や生活の様子を説明。グループホームを利用している人が施設での生活とグループホームでの生活の違いを説明。支援費担当の役所の人にも本人がモデルになって、ホームヘルパーの利用の相談場面を実際やってみる)でわかりやすくしました。最後に、北海道の担当係長から短時間の説明を受けた後、会場の利用者との質疑応答が行われました。

青森での内容紹介

 まず本人のあいさつの後、8月6日に内閣府で行った3人の参考人として提言したことの報告があり、特に支援費に関する情報提供が不足していることを強調していました。その後、厚生労働省の山口専門官から『支援費ガイドブック』を使っての説明があり、質疑応答が時間いっぱいまで行われました。山口専門官が会場の人たちに語りかけたのは、「とにかくわからなかったら、わかるまで係りの人に納得のいくまで聞いてください」との語りかけには、多くの本人の人たちがこれから役所に行って聞いてみようとの動機付けになる話でした。今までは親や家族の人が施設利用を決めて、本人の意見や考えが無視されてきた現実があります。今まで施設に入ったら、ずーっと入りっぱなしでした。しかし、来年度からは、少なくとも3年以内には見直しを本人と事業者と市町村がする時期がきます。山口専門官はこうも述べています。「みなさん方は各地から代表としてこの大会に参加していると思います。ぜひ各地に帰ったらみなさん方から、仲間のみなさんにこの研修会のことを伝えて、みなさんと学んでください」。

水戸での内容紹介

 本人の方から今の暮らしや、将来どんな暮らしをしたいかを会場の人にレポーターとして、聞いてみました。次に委員がテキストを使った説明をPCプロジェクターで行いました。自分がこうしたいということが大切、うまく言えないときは信頼できる人と一緒に支援してもらい、意見を伝えることが大切であると述べました。最後に、茨城県の担当係長の説明と質疑応答がありました。グループホームに暮らしたいと思っているが、グループホームが近くにないとの会場の本人の人からの質問には、みなさんの希望や要望をどんどん伝えていってくださいとの話がありました。
 このように、全日本手をつなぐ育成会では、地元の行政の人と一緒に学んでいく学習会を続けています。このほか各地でこのような本人向けの支援費学習会が開かれています。その際にはぜひ、このガイドブックをご利用ください。(問い合わせ先・電話03(3431)0668・全日本手をつなぐ育成会)

(みつますまさひさ 全日本手をつなぐ育成会本人活動支援委員会、松泉学院)