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足利むつみ会の取り組み

阿由葉寛

1 日中活動支援の充実

 社会福祉法人足利むつみ会では、働く場である「社会就労センターきたざと」を中心にノーマライゼーション社会の実現に向け、さまざまな取り組みを行ってきました。
 そのひとつとして活動環境の整備が挙げられます。だれもが地域でできるだけ普通に暮らすためには、利用する方それぞれに適した、さらには選んで利用できる活動の場が必要になります。支援費制度によって自らが選択をして利用することが可能になっても、選べる資源が準備されていなければ、制度そのものが絵に描いた餅でしかありません。
 足利むつみ会では、日中活動を支援するための三つの機能として、現行制度を以下のように整理し、資源の整備を行いました。

1.福祉的就労支援

 社会就労センターきたざと(知的障害者通所授産施設) 定員60名

2.日中活動支援

 デイ・アクティビティセンター銀河(知的障害者通所更生施設) 定員20名

3.介護等活動支援

 知的障害者デイ・サービスセンターWIN(重介護型)1日利用15名以上
 それぞれの利用に際しては、利用するご本人と家族に、施設で提供しているサービスの内容をわかりやすくビジュアル化して作成したサービスガイドを活用して、サービス内容を説明しながら利用したいサービスの希望を確認します。
 サービスガイドで確認した、ご本人や家族の希望を基に支援目標を立て、支援目標に沿った個別支援計画を作成し、ご本人と家族へ説明し同意を得た後にサービスを提供することになります。このような個別支援計画の作成やサービス提供を、平成13年度から試行的に取り組んできましたが、支援費制度ではサービスガイドに施設で提供しているサービス内容だけでなく利用者との契約の際に必要になる重要事項を盛り込み、サービスガイドを活用して重要事項の説明を行い、ご本人と家族の理解を深める必要があると考えています。
 来年度から、支援費支給制度が導入されます。社会福祉基礎構造改革で謳(うた)われている「地域での生活を総合的に支援する地域福祉の充実」を進める上で、現行の措置費制度は利用者と事業者の対等性を妨げる最大の要因であり、サービス提供の対価としての支援費とすることによって、福祉サービスの消費者という立場と施設で提供できるサービスを買ってもらうという立場への転換が図られることになったわけです。であれば、施設は消費者である利用者のニーズにどれだけ応えられるかということに最善を尽くしてこそ、その役割を全うすることになり、自ら質の向上を目指すことができなければ生き残ることは困難なはずです。

2 学齢期の支援の充実

 現在、養護学校等を卒業されて、当法人の三つの日中活動の場を利用されている方は毎日100人余りですが、足利むつみ会では学齢期のご本人と家族への支援にも取り組んでいます。
 そのひとつがビタミンクラブであり、障害児を対象とした学童保育の場です。本来この事業は障害児を対象にしたものではありませんし、小学部の低学年しか利用できません。市の理解を得て、小学部の高学年や中等部までの利用を可能にしていただきました。また、障害児加算をいただき4人の支援スタッフで運営しています。単発のニーズに対しては当法人の運営する生活支援センターアシストのサービスを利用していただいております。短期入所の日中受け入れやレスパイトサービスなどを利用していただくわけですが、毎日15人位の方が日替わりで利用されていますし、多いときにはビタミンクラブと併せて30人以上の子どもたちが利用しています。
 ここでの課題は、短期入所の日中預かりや学童保育(放課後児童健全育成事業)を含めて、障害児の放課後を保障する公的な制度の問題です。当法人でも障害児の受け入れの充実を図るため支援費制度に向けて、平成15年から障害児デイ・サービスを実施するための準備を進めていますが、事業そのものは従来の就学前の幼児が対象であり、放課後のみで運営することはできません。利用できる範囲も小学部だけであり、中等部では利用できません。完全週休2日制が実施され、家族の介護負担が増える中で解決されなければならない課題です。

3 生活の場の充実

 地域で自分らしく生活していただくためにはグループホームの機能の充実が必要です。足利むつみ会では、従来のグループホームでは個人の生活が保障しにくいため、平成13年に個人の生活に視点をおいたドナルドとデイジーという二つのグループホームを開所しました。グループホームの最低定員である4人を基本として、共有のリビング、キッチン、ダイニングは通常のグループホームと同様です。個室であることは当然ですが、ドナルドとデイジーは各個人の部屋の中にバス、トイレ、ミニキッチン(冷蔵庫付)を用意しています。生活空間も前述の設備や二つのクローゼットを除いて10畳程あり、自分の好きな家具を置いたり家族が泊まりにきても十分な広さがあります。生活環境への配慮も全館暖冷房によって、個人の部屋でストーブなどの予備暖房を使うことなく、ホーム内どこでも快適に過ごすことができます。また、ホームヘルプサービスを利用して自分の好きな時間に自分のお風呂に入ることやヘルパーに自分のための食事を作ってもらうこともでき、自分の希望する生活が可能になりました。個々の生活を豊かにするためにはサービスを提供する施設の努力も必要ですが、支援費制度を生活の豊かさが築ける制度になるよう育てていくことが課題ではないでしょうか。

4 地域での生活を支えるために

 地域生活支援の対象は施設利用者だけでなく、地域で生活している障害のある方とその家族であり、年齢もさまざまです。足利むつみ会では平成7年から生活支援センターアシストにおいて、地域での生活を支える資源づくりに取り組んできました。
 アシストの機能は総合相談機能とサービス提供機能であり、24時間365日の対応を基本としています。スタッフはケアマネジメント従事者、コーディネーター、主任ヘルパー、支援スタッフ(ヘルパー)常勤6人、非常勤(登録)47人です。
 サービス利用者は登録制ですが、緊急の場合などはサービス提供を優先します。登録者は、平成14年8月末現在で161人、登録料は無料です。
 対象者は事業の規定によって異なりますが、地域や年齢などの規定はありません。

1.総合相談機能

 障害者ケアマネジメントの提供、障害児(者)地域療育等支援事業による相談支援事業などの提供、地域生活支援調整会議の実施(両毛障害福祉圏域)

2.サービス提供機能

 短期入所(日中受け入れ)、ホームヘルプサービス(介護保険訪問介護+障害児・知的障害者ホームヘルプ)、レスパイトサービス、パーソナルアシスタントサービス、送迎サービス、ナイトケア
 足利むつみ会では、これらの機能を有効に利用していただくことで、いつまでも地域での生活を続けていただきたいと考えています。また、10月からはアシストに機関型ジョブコーチを2人配置し、一般就労支援を積極的に進めていく予定です。

(あゆはひろし 社会福祉法人足利むつみ会常務理事)