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支援費制度の導入に伴う課題と
西宮市の取り組み状況

小川美智子

支援費制度実施に向けての課題

 平成14年4月、私を含め4人の職員により障害新制度準備室が設置された。まず、最初に課題と問題点の洗い出しを行い、支援費制度の円滑な実施に向けて次の五つの課題を掲げ、整理に取り組んでいる。
1.広報啓発・情報提供―障害特性に応じた広報・情報提供
2.情報システムの整備―支援費制度に関する一連の事務処理の電算化
3.相談体制等の整備―地域で暮らすを支える仕組み作りとネットワーク
4.サービス提供基盤の整備―サービス参入意向調査とサービス基盤整備
5.支援費基準等の設定―公正で客観的な支援費支給基準の作成

主要な課題への取り組み状況

(1)障害の特性に応じた情報提供

 4月に「支援費制度の概要(一般向け)」「支援費制度の概要(知的障害者向け)」を各4000部、「支援費制度の概要(音声版・点字版)」を各80部作成し、障害のある人へ配布した。
 9月初旬には、ユニバーサルデザインによるパンフレット「支援費制度~制度の仕組みと利用のしかた~」5000部(16ページ)を発行し、申請書の書き方や受給者証の様式等について幅広く広報啓発を行っている。
 また、今年度中に手話や音声により、支援費制度をはじめ、障害者施策全般にわたる情報提供を行うためのホームページを開設する予定である。

(2)障害者あんしん相談窓口の設置

 地域に根ざしたきめ細かな相談・支援体制づくりと障害種別を超えた横断的な相談機能の連携を進めていくため、既存の相談支援事業者を活用した“障害者あんしん相談窓口”を6か所設置した。
 さらに、障害者あんしん相談窓口をはじめ、保健所(精神障害者)、基幹型在宅介護支援センター(高齢者)との連携強化を図り、障害者福祉に関連する相談・案内が総合的に提供できる環境づくりを進めていく“障害者あんしん相談窓口連絡会”を設置し、アセスメント表、ケアプラン等の書式の標準化や具体的な連携方策等の検討を行っている。

図 相談窓口のネットワーク化

テキスト

図 相談窓口のネットワーク化

(3)支援費支給基準ガイドラインの作成

 支給決定に際して勘案すべき事項は、厚生労働省令において規定されるが、国の表現は抽象的であり、また、要否の判定基準や支給量の決定基準は各市町村で作成することとなっている。このため、政省令で示された勘案すべき事項をもとに、西宮市が公費において障害のある人の地域生活を支援する範囲を定めた支援費支給基準ガイドラインを作成した。
 ガイドラインの作成にあたっては、次の四つの視点を定めた。
・支給決定の判定は、利用者に説明しやすい簡素で客観的な判断基準とする。
・勘案事項整理票等により障害のある人が地域で生活していくために必要な支援の必要度を明らかにする。
・障害のある人の支援の必要度を類型化し、類型ごとの標準ケアプラン(公費によるサービス提供水準)を明らかにする。
・このガイドラインを西宮市障害福祉推進計画の改定の基礎資料とすることで、計画に基づくサービス提供基盤の整備との整合性を確保する。

(4)仮称「支援費サービス調整会議」の設置

 支援費の支給決定は、ケースワーカーによる聞き取り調査もしくは、障害者あんしん相談窓口で作成されたアセスメント・ケアプラン表を参考に、ガイドラインで示した標準ケアプランに基づき決定するが、標準ケアプランに該当しない場合は、ケースワーカー会議により支給決定を行う。
 支給決定した内容に対して、本人等から相談があれば仮称「支援費サービス調整会議」を開催し支給決定に対する意見を求める。支援費サービス調整会議は、支給決定に対して、公平で中立的な役割を果たす第三者機関として、市が決定した支給決定の内容に対して意見を聞くことで支給決定の客観性を確保したい。

図 相談申請から支給決定の流れ

テキスト

図 相談申請から支給決定の流れ

(5)障害者福祉サービス参入意向等調査の実施

 支援費制度を見据えて3年前から障害者ホームヘルパー養成講座の充実を図り、ホームヘルパーの養成に積極的に取り組んできた。ホームヘルパー等のマンパワーの把握をはじめ、どの程度の事業者が参入し、サービス供給量がどの程度となるのかを把握するため、5月から6月にかけてサービス参入意向調査と成年後見制度の利用見込み者等を把握する権利擁護調査の2種類の調査を実施した。その結果、介護保険サービス事業者や障害者福祉団体、既存の障害者福祉施設からのサービス参入実態を把握することができ、西宮市では、基準該当事業者の指定は行わないこととした。

地域生活支援の推進「自分の暮らしは自分で決める」

 障害のある人も地域の中で自らがどう生きたいか、どう暮らすかを決めるという、ひとりの人間としてごく当たり前のことを、国・県をはじめ、市はどう支えるのかが問われることになるが、当事者主体の考え方・施設のあり方や地域の中でどう支えられるのかをしっかり見据え、重い障害があっても地域の中に受け入れられ、たくさんの応援団に囲まれながら暮らしていける、真に障害のある人の地域生活支援となるよう今後とも努力したい。

(おがわみちこ 兵庫県西宮市健康福祉局福祉部障害新制度準備室長)

(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
2002年10月号(第22巻 通巻255号)