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会議

障害のある人の権利と法制度を考える
―「障害者差別禁止法」への展望―
東京フォーラム・ルポ

阪本英樹

 去る8月31日(土)、「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラム組織委員会と(財)日本障害者リハビリテーション協会の主催により、キャンペーン「東京フォーラム」として『障害のある人の権利と法制度を考える―「障害者差別禁止法」への展望―』と題された会議が全社協・灘尾ホール(東京都千代田区)にて開催されました。
 今回のフォーラム開催の趣旨について、主催者側は次のように述べています。

 「本年は、「障害者施策に関する新長期計画」および「障害者プラン」の最終年次にあたり、国は新しい「計画」や「プラン」の策定にむけた作業を始めています。また、2003年度から利用契約型サービスを基本とする支援費制度が実施されることや、交通バリアフリー法の制定、ハートビル法の改正など、障害のある人の権利をめぐる国内の状況は、大きな変化に直面しています。
 一方、国際的には、昨年の国連総会において「障害者権利条約」について検討するための「特別検討会」の設置が決定され、本年7月末から検討が始まることや、障害のある人への差別を禁止し、権利を保障する法律を定めている国が40か国を超えているとの調査報告もあることから、障害のある人の権利に関わる法制度の制定は、今や国際的潮流ともいえる状況にあります。
 このような内外の動向を踏まえ、(中略)それぞれの立場で取り組みを進めている障害当事者団体を中心に意見交換を行い、取り組みの進捗状況や課題を共有したいと考えています。」

1 国連での「障害者権利条約」審議報告

 周知のように、今年の7月29日から2週間にわたり、第1回「障害をもつ人の権利と尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約を検討する特別委員会」(以下、「特別委員会」と略す)がニューヨークで開催され、活発な議論が繰り広げられました。そして、8月9日に「特別委員会報告書」が承認され、幕を閉じました。会期中、日身連兒玉会長を団長とする「特別委員会傍聴団」(以下、「傍聴団」と略す)がニューヨークへ派遣されていました。
 今回のフォーラムの目玉は、「傍聴団」のメンバーである三澤了氏(DPI日本会議)による臨場感溢れる報告でした。それによると、今回の特別委員会には60か国が参加し、また、政府代表以外に約100人のNGO等の民間人が討議の一部始終を見守った模様です。討議に使われた会場には200か国の代表が参加可能なスペースを有していましたが、実際には3分の1弱の代表しか参加していなかったようで、空席が目立っていた模様。この会合に対する各国の関心度の度合いを如実に示しており、強い印象を受けました。
 また、会議には、条約草案を用意して臨んだメキシコ政府およびそのメキシコ案を支持する中南米諸国グループと、まず新文書の位置付け、対象範囲および既成条約との関係から審議を始めようとするEU諸国との対立があり、会議の大勢を占めたのがEU提案でした。
 今後は、審議中の条約と六つの既成人権条約(『自由権規約』『社会権規約』『人種差別撤廃条約』『拷問等禁止条約』『女性差別撤廃条約』、それに『子どもの権利条約』)との整合性が真剣に討議される見通しです。条約制定まで長い道のりがあることを暗示しているように感じました。NGO(民間団体)の躍進振りも大変印象的でした。
 第2回目の特別委員会は来年5月前後に開催される見通しですが、ニューヨーク市が有力視されています。日本側NGOとして、次回派遣される日本代表団の中に、障害をもつ当事者が参加できるように政府に要望した、と三澤氏が語っていました。

2 フォーラムでの討議

 フォーラム当日は、主催者側を代表して、「傍聴団」に参加された河端静子氏(最終年記念フォーラム組織委員会副委員長)によるあいさつで始まりました。続いて、松友了氏(最終年記念フォーラム実行委員会キャンペーン委員長、「傍聴団」参加メンバー)が「基調報告」を行い、「国連会議に参加し、粛々と時代が進むことを実感した」との発言が印象的でした。
 「講演1」では、八代英太氏(最終年記念フォーラム組織委員会委員長/衆議院議員)が「『ADAの衝撃』ふたたび」という題目で発言され、ADA法の成立過程から有益な経験と知恵を学び、来年の『障害者基本法』見直しに役立たせる必要性を力説されました。続いて、「講演2」として、「世界の障害者差別禁止法の現状と課題」という題目で、池原毅和氏(弁護士、東京アドボカシー法律事務所)のわかりやすく丁寧な解説が行われ、「日本には『障害者基本法』とは別に『障害者差別禁止法』を作る必要がある」という見解が示されました。
 午後に開かれたフォーラム「障害者の権利法・差別禁止法に関わる取り組み」では、パネリストとして、伊東弘泰氏(障害者差別禁止法(JDA)を実現する全国ネットワーク)、江上義盛氏(全国精神障害者家族会連合会、「傍聴団」参加メンバー)、金政玉氏(DPI日本会議)、黒崎信幸氏(全日本ろうあ連盟、「傍聴団」参加メンバー)、時任基清氏(日本盲人会連合/日本あん摩マッサージ指圧師会)、野沢和弘氏(全日本手をつなぐ育成会)によって白熱した討議が展開されました。また、「指定発言」として、会場からは堀利和氏(最終年記念フォーラム顧問/参議院議員)、高山弘氏(日本身体障害者団体連合会/京都市肢体障害者協会)、東川悦子氏(日本脳外傷友の会)、石井政之氏(ユニークフェイス)および野村茂樹氏(日本弁護士連合会)による発言がありました。
 当日、全体の司会進行役は渡辺禮司氏(最終年記念フォーラム事務局)が担当し、午後のフォーラムは北野誠一氏(桃山学院大学)がコーディネーターを務められました。

(さかもとひでき 東京都身体障害者団体連合会・国際部長)