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車いす・電動車いす【利用者の声】
わが家の愛する車いすたち

藤原千里

 自力で立つこと・座ることのできない娘にとって、より良い姿勢保持・移動手段を探すのはとても大変なことです。多種多様な病状の子どもがいる中、市販品では対応が不十分な物が多く四苦八苦している折、神奈川県総合リハビリテーションセンターのリハビリの先生方にお会いしました。
 そうしてでき上がった百葉(ももは)1号(スリングシートタイプの車いす)は反り返りが強く、落ち着いて座っていられなかった娘に「座るのって辛くないんだ~!」を初めて教えてくれた車いすです。娘の体型・クセをできる限り考慮していただいたため、市販の車いすに5分と座っていられなかった娘が長時間座っていられるようになりました。座ることの苦痛から開放された娘は、外出のたびに周りの環境を興味深く観察し、よい刺激として吸収することができるようにもなりました。ラクチンすぎるのか(笑)外出時には決して眠ることがなかったのに座ったままお昼寝までするようになりました。
 この成果に欲を出し作っていただいた百葉2号「どこでもチェアー」(携帯可能な簡易座位保持装置)は、娘のQOLをより高いものにしてくれています。日本のスタジアムや劇場の車いす席の多くは取って付けたような、とりあえずの場所に用意されている所が多く、芸術鑑賞・スポーツ観戦施設などでは本来、楽しむべき内容が半減するような場所にあることも少なくありません。その点、百葉2号は何をするのもできるだけみんなと同じ場所で経験させてやりたい親のわがままに十分応えてくれています。6月に出掛けたサッカーW杯ではイタリアンサポーターの中に交じり、血湧き肉踊る迫力を肌で感じた娘は、とてもご機嫌でした。家族一緒に世界に触れた瞬間はわが家の宝物です。もちろん、車いすでは入れないレストランのイスやお寿司屋さんのカウンター、新幹線やバス、お友達の車に乗ったときにでも使えるのでとにかく便利です。そして何より「車いすから下りた後は長時間の抱っこ」のパターンから開放された私たちは、娘のことを考え遠慮がちだった場所へも勇気を出して出掛けて行くことができます。
 こうして作っていただいた車いすたちは娘自身を助けていることはもちろん、介助する者の精神的・肉体的助けにもなっていると強く感じます。使用については周りの方々の理解も必要ですし、使い勝手についてもまだ改良の余地はあると思いますが、私たちにとって大切なのは『こんな物があったらいいな』と思う気持ちを『何とかして形にしてみよう』と動いていただける方々の存在です。

(ふじわらちさと 東京都新宿区在住)