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列島縦断ネットワーキング

神奈川
支援費制度~制度設計と実践の立場から
全国地域生活支援ネットワーク
かながわフォーラム

小林博

■地域支援ネットの種まき役として

 「利用者主体のサービス提供・支援費を上手に使おう」をテーマに2002年11月23日~24日、全国地域生活支援ネットワークかながわフォーラムが横浜・新都市ホールで開催されました。全国地域生活支援ネットワークは、知的障害者を中心とした障害者の地域生活支援を実践的に担っている人たちの結集の輪として1999年7月に結成され、現在500人あまりの会員を擁しています。
 全国地域生活支援ネットワークは結成以来、全国各地で精力的にフォーラムを開催してきました。地域生活支援の理念と今日的実践のあり方を各地の実践者を巻き込んで、熱く語り合うこのフォーラムは、全国に地域生活支援の種をまき、人的ネットワークを醸成する大きな役割を果たしてきました。今回のよこはまフォーラムは通算30数回目になるものです。
 フォーラム初日の11月23日、折しもこの日、朝日新聞1面トップに宮城県社会福祉事業団の施設解体宣言の記事が載りました。早速新聞コピーが当日のプログラムにはさんで配布され、「施設から地域へ」という流れがいよいよわが国でも時代の本流になっていく予感を参加者全員が共有するところから、フォーラムは開始されました。

■よこはまフォーラムの概要

 フォーラムの概要は次の通りです。

【11月23日】

●基調講演「地域で安心して暮らすために」~地域生活を可能にするための利用契約制度の構築へ~
大塚晃(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課障害福祉専門官)
●シンポジウム「地域での生活を支えるために 実践者編~地域の資源づくり・グループホーム、ホームヘルプでめざせるもの~」・中村修子(東久留米市グッドライフ)・福田恭子(栃木県・生活支援センターアシスト)・牧野賢一(茅ヶ崎市・下宿屋)・増渕晴美(横浜市・朋)・進行 河原雄一(藤沢育成会 湘南ゆうき村)

【11月24日】

●講演「この街で地域自立生活の確立を~2003年を目前にして私たちが今しなくてはならないこと~」冨田昌吾(寝屋川市民たすけあいの会)
●シンポジウム「地域での生活を支えるために~地域の資源づくり・市町村の時代を迎えて~」・山田優(愛知県・愛光園 生活支援センターらいふ)・大津邦彦(藤沢市・障害福祉課)・瀬古隆(滋賀県社会福祉事業団企画事業部)・石渡和実(東洋英和女学院大学教授)・進行 加瀬進(東京学芸大学助教授)

 制度設計と実践の立場から、2日間のフォーラムを私自身の感想も含めて横断的に紹介していきます。2日間で4コマの演目がありましたが、内容的に大きく二つに分けることができます。一つは、支援費制度を巡る、制度設計の立場からの発言です。これは1日目の大塚晃氏による基調講演と2日目のシンポジウム「地域での生活を支えるために~地域の資源づくり・市町村の時代を迎えて~」です。
 大塚晃氏は、厚生労働省の障害福祉専門官の立場から、現段階における支援費制度の概略について説明を行いました。
 2日目のシンポジウム「地域での生活を支えるために~地域の資源づくり・市町村の時代を迎えて~」では、神奈川県藤沢市の大津氏と滋賀県社会福祉事業団の瀬古氏が、それぞれ行政の立場から地域生活支援の仕組みづくりについて報告がありました。
 二つ目は、地域生活支援の実践の立場からの発言です。1日目のシンポジウム「地域での生活を支えるために 実践者編~地域の資源づくり・グループホーム、ホームヘルプでめざせるもの~」と2日目の冨田昌吾氏による講演がこれにあたります。
 1日目のシンポジウムで、地域生活支援の実践の立場から中村修子氏は、知的障害者へのヘルパー派遣事業について、東久留米市グッドライフにおける先駆的な事例について報告しました。福田恭子氏は栃木県の生活支援センターアシストの、ホームヘルプ、レスパイト、ナイトケアなど多岐にわたる地域生活支援の実践を紹介しました。
 グループホームの実践について二つの報告があり、これが私にとっては一番印象に残るものでした。牧野賢一氏は、茅ヶ崎市・下宿屋における中軽度の知的障害者のグループホームの実践を語り、増渕晴美氏は、横浜市・朋における重度重複障害者のグループホームの実践を語りました。
 牧野氏は、消費者被害、異性問題、就労先でのトラブルなど決して平坦ではない地域生活の実態を紹介しながら、仲間同士のグループワーク的な問題解決の力と支援者の生身の付き合いによる個別支援のあり方を語りました。
 重度重複障害の人のグループホームの職員体制について、初めはローテーションを組んでいたが、やはり中心的な職員が必要ということで、キーパーソンという名称の毎日恒常的に勤務する職員を置くようになったという増渕氏の話が印象的でした。冨田氏の講演は、制度やサービスという枠には収まり切らない、地域における人のつながりを原動力とする福祉力を強調するものでした。
 支援費制度の制度設計的な枠組みがほぼ固まっていく中で、人と人とのつながりという共同性の問題が改めて問われているということを考えさせられたフォーラムでした。

(こばやしひろし 社会福祉法人藤沢育成会・みらい社副施設長)
【社会福祉法人藤沢育成会・みらい社】
電話 0466―83―6481
FAX0466―83―6483