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編集後記

 お正月に届いた年賀状の中に中学時代の恩師からのがありました。すでに退職されていて、今は畑で野菜を作ったり、週4日ほど働くほかは好きな読書三昧の日々を送っているようです。『兎の眼』を読み返してもう一度教師に戻りたいと、現役時代を反省し、しきりにその頃の夢をみるのだと書かれてありました。詩や文学が好きだった先生はことばを大事にしていたし、私は先生から人とのかかわりについて教わったように思います。自分からという一方通行ではなく、自分がいやでも相手がそれを必要とし、望んでいるとしたらどうだろうかということをいつも生徒に投げかけ、問いかけをしていたと思います。中学時代の自分がそのいくつを素直に受けとめていたかはあやしいのですが、先生を思い出したのも今子どもの中学校が荒れていて、保護者会などで聞かれる先生の言葉が伝わってこない、響いてこないことが気になっているからです。活字を通してことばにかかわる仕事をしている以上、改めて文字に込められたメッセージやその思いがひとに届くよう、こころして仕事にあたりたいと思っています。今年もどうぞよろしくお願いします。

(S)

 先日、見えない世界を体験しました。その場所は、グラビアで紹介した「さわるアート『触覚の庭』」の会場。真っ暗な部屋に入り、中に置かれているものを触って、それが何かを当てるコーナーがありました。真っ暗闇の中に一人、本当に真っ暗で最初は足が前に進みません。恐る恐る壁づたいに進んで手に触れたものは…、大きく、つるつるしていてひんやりしたもの、それは亀の形をした作品でした。見るだけでは作品の質感や温かさ冷たさを感じることはできませんが、その日は、五感を使って楽しむことができました。会場はデパートの一角にあり、いろんな人たちに来てほしいという主催者側の意図が会場選びにも感じられ、こういったきっかけ作りを、大いに参考にしたいなと思います。
 さて、今月号から表紙の作者は、さとなかちえさんになりました。さとなかさんの作品は、アジア太平洋障害者の十年国際会議記念切手のデザインに選ばれたり、読者のみなさんも目にすることが多いと思いますが、本誌流に紹介していきたいと考えています。お楽しみに!

(K)

(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
2003年1月号(第23巻 通巻258号)