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一般財源化で揺れる相談支援事業の整備を

根来正博

 今回の新障害者プランにおいて最も気になる点は、重点的に実施する施策およびその達成目標の中で2に掲げられた地域基盤の整備である。とりわけ1.に記載されている利用者本位の相談支援体制の充実の項目では、「市町村を中心とした相談・支援体制の充実を図り、これを拠点としてケアマネジメント体制を整備する」とある。
 はなはだ曖昧(あいまい)である。この表言では具体策が見えない。支援費制度の始まりにより、公費の支給決定は基礎的自治体である市町村が権限を持つことになった。実際の業務は福祉事務所の福祉司やケースワーカーが担うことになった。先行する介護保険では、介護支援専門員がおかれ通称ケアマネジャーとして、この機能を専門的に積み上げていく土台は用意された。
 しかし障害分野では、相談支援体制の基盤となる事業は中途で投げ出されてしまった。ホームへルプの上限問題とともに各地で波紋を呼んだ相談支援事業(市町村障害者生活支援事業及び地域療育等支援事業)の一般財源化という形で。
 厚生労働省は2002年9月の時点では、地域療育等支援事業並びに市町村障害者生活支援事業ともに、ケアマネジャー加算分として、それぞれに詳細な予算要求をしているのである。要求要旨としては地域療育等支援事業では「障害児者が生活する身近な地域で、相談や療育指導を行うため障害保健福祉圏域に2カ所の障害児(者)施設を指定し、障害者プランに沿って事業を推進してきたところであるが、支援費制度の施行を踏まえ、ケアマネジメントの実施も含め、障害児者の自立促進に向けた相談支援体制の充実を図るものである」となっている。
 また身体障害の相談については次のようである。「市町村障害者生活支援事業は在宅の障害者に対し、在宅福祉サービスの利用援助、社会資源の活用や社会生活力を高めるための支援、当事者相談などを総合的に実施することで障害者の自立と社会参加の促進を図るものであり、実施箇所数の増分による運営費を要求するものである。また平成15年からの支援費制度の施行を踏まえ、身体障害者の自立促進に向けた相談支援体制の充実を図るため、都道府県、指定都市が実施する『障害者ケアマネジメント従事者養成研修』を受講したものが当該事業に従事する場合についての加算を要求するものである」。
 そして1か所370万円分のケアマネジャー加算分を知的で3億4,000万円、身体障害で2億4,300万円を要求しているのである。厚労省は予算要求の時点では、現在では具体策が見えないケアマネジメントの実施機関に知的障害者地域療育等支援事業及び市町村障害者生活支援事業を据えて足場を築こうとしていたのである。
 また、一時期は身体と知的の事業の相違があまりにもあるため、知的の相談支援事業が市町村単位で行われるようにするにはどうしたらよいのか、とか、成人以降の生活支援を行うという視点に欠ける部分をどのように埋め合わせていくか等が課題となりそのための委員会も行われていた。
 しかしながら国は唐突に一般財源化を図るという形で、基本方針を転換したのである。
 その際の説明で重要な点は次の通りである。
 「障害者の地域生活支援に当たり、身近な相談支援体制を構築することは極めて重要な課題であり、国としても今後専門的な研修・技術支援等積極的な支援に努めていくこととしていますので、各自治体におかれましては、この趣旨を踏まえ、事業のさらなる推進をお願いします」となっている。
 支援費制度の元で新障害者プランが展開される。地域生活を支える基盤整備をはかるうえで最も重要なのは相談支援体制の構築である。冒頭に掲げたプランに示された「相談・支援体制の充実を図り、これを拠点としてケアマネジメント体制を整備する」このことは殊更に特別な配慮の元で仕組みの構築に工夫と段取りが必要である。
 ケアマネジメントについては、2003年度より障害者ケアマネジメント体制推進会議(仮称)が各県におかれ、従事者の養成研修と相談窓口の設置促進検討がなされる。
 地域で生活をしたいと願う方たちのニーズを受け止め、必要なサービスを調整し、足りなければ新たに資源を創出する役割を担うケアマネジメントの手法。地域を掘り起こす耕耘機とも言える機能である。残念なことに現状ではエンジンが積まれていない。市町村の考え方によっては手堀の鍬すら見出せない地域が続出するだろう。このままでは一般財源化は大きな傷として歴史に刻まれていく。地域福祉を推進するには、相談・ケアマネジメントをキーワードに、市町村にあり方を求めていくことが最も重要であると確信している。

(ねごろまさひろ サービスセンターぱる)