音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

みんなのスポーツ 第11回

“1000万人のスポーツ”
それが卓球

白石三重子

1 はじめに

 日本の卓球人口はなんと1000万人、競技人口でも25万人と言われているスポーツです。卓球は、だれでも楽しめるところが特徴です。医療機関では認知症や脳血管障害の患者のリハビリに用いられ効果を上げるなど、健康スポーツとしても注目を集めています。
 14歳の天才卓球少女“愛ちゃん”の登場は、卓球人気に大きく拍車をかけています。最近では、卓球を題材にした漫画や映画が製作され、卓球の人気もだんだん高まるばかりです。

2 障害者の卓球

 障害者の卓球は、「サウンドテーブルテニス」と「一般卓球」とに分けられます。
 視覚障害の方が行う「サウンドテーブルテニス」は長年「盲人卓球」という名称で行われていた競技であり、2002年4月1日より名称が変更になりました。視覚障害の方にとって、ボールを3次元的に捕らえるのは(空中でインパクトすること)困難なことであり、転がるボールを打つという2次元的(平面上でのインパクト)なものに変えることで、ラリーの展開を安易にしています。さらにサイドの一部とエンドがフレーム(枠)で覆われているのも特徴です。ボールの中には小さな金属性の球が4個入っており、はずみにくくしています。ラケットはボールを打つ音が出るようにとラバーは貼っていません。サウンドテーブルテニスには、視覚障害の障害特性を配慮した卓球台の構造・ボール・ルールが反映されていると言えます。
 一般卓球には肢体不自由、聴覚障害、知的障害、精神障害の方が含まれます。しかし、卓球スタイルが大きく変わるわけではありません。基本的には健常者の競技と同じです。ただし車いす使用者については、ルールが加えられます。それは「サーブがサイドラインを横切らないように行わなければならない」というルールです。横切ったサービスが出された場合にはレット(やり直し)となります。車いす使用者はどうしても移動範囲が制限されることから、サービスのみについて前記のようなルールが適用されています。
 また、一般のルールでは、プレー中、競技者のフリーハンド(手首から先)がコートに触れた場合は、相手に1ポイント与えることになっていますが、障害のクラスによっては、フリーハンドがコートに触れても失点としないとするルールがあります。
 現在、障害者卓球の人口は視覚障害者で1000人、肢体不自由では376人がそれぞれの協会に登録しています。障害者スポーツの中でも卓球人口は少なくはありません。

3 埼玉県障害者交流センターでの取り組み

 埼玉県障害者交流センターでは、さまざまなスポーツの教室・練習会を実施しています。いずれのスポーツにおいても、段階的な流れを基本とし指導に当たっています。
 卓球については、平成2年から教室や練習会を継続して行っており、第1段階=「教室」、第2段階=「練習会」、第3段階=「サークル」、第4段階=「大会」という流れが基本となります。
 第1段階の「教室」では初心者を対象にしており、ラケットの持ち方から打ち方、楽しくラリーができるよう指導しています。展開する中で、身体を動かすことの喜びや楽しさを味わってもらうことが目的です。その指導については、センター職員と卓球サークルの会員が行っています。
 第2段階の「練習会」は中級・上級者を対象として実施しています。指導は県の卓球協会に依頼し、技術の体得・向上を目的として実施しています。
 第3段階の「サークル」では「教室」「練習会」を終了した後、継続して卓球に取り組みたいと思っている人が対象となります。現在サークルの会員数は38人、活動は週に1~2回行っています。リハビリの一環として、健康維持・増進を目的として行う方や、技術の向上、大会出場をめざしている方などサークル会員の目的はさまざまです。
 第4段階の「大会」については、あくまでも競技スポーツとして取り組んでいます。活動範囲を拡大し、県内の大会や近県で開催される大会に出場することを目的としています。

4 競技大会におけるクラス分け

 障害者スポーツではほとんどの競技がクラス分けを行います。競技大会では卓球もクラス分けを行います。単純に障害別に分けるなら、「肢体不自由」「車いす使用」「聴覚障害」「視覚障害」「精神障害」等に区分されますが、大会の規模あるいは主催者側の意向によっても異なります。
 全国障害者スポーツ大会では、肢体不自由は14区分、視覚障害者は2区分、それに聴覚障害、知的障害の計18区分に分かれます。ただしこのクラス分けは、日本独自の方法です。
 大きな大会(国際大会)になると、厳密な競技区分がなされています。「立位競技者」「車いす競技者」とも、機能のレベルによってそれぞれ5つのクラスに分けられています。知的障害の区分を含めると11区分となります。当然のことながら選手登録においては、メディカルチェック(医学的判断)やテクニカルチェック(実際の動きによる判断)が行われるのは言うまでもありません。
 近年では、障害のある人とない人が同じ大会に参加し競うことも報告されています。肢体不自由の方や聴覚障害の方、多くの皆さんが一般の大会へ参加しています。上級者になるとハンディキャップはまったく感じられません。
 埼玉県障害者交流センターでは、毎年「交流卓球大会」を開催しています。「一般男子」「一般女子」「シニア(50歳以上)男子」「シニア(50歳以上)女子」「車いす使用者」「初心者(上肢障害)」「初心者(下肢障害)」「知的障害者」「視覚障害者男子」「視覚障害者女子」の10区分に分けて実施しています。全区分合わせると200人近くの参加があります。「一般の部」「シニアの部」には障害のある人もない人も一緒になって参加します。ハイレベルなラリーに驚かされることもありますが、なんと言ってもお互いの健闘をたたえあい、卓球を愛好する者同士、卓球という種目を通じ親睦を図ることに大きな意義があると考えています。

5 卓球をはじめませんか?

 ラケットがうまく握れない方は、グローブをしたり、弾性包帯を巻いたりなど工夫次第でだれにでも楽しめるようになります。「卓球のサークルに参加したい」「大会に出場したい」という方はあなたの住んでいる地域の福祉センター、社会福祉協議会、県の障害者スポーツ協会、または、日本肢体不自由者卓球協会・日本盲人会連合日本視覚障害者卓球連盟など関係機関に連絡をとってみてください。

6 終わりに

 卓球は障害の有無にかかわらず、だれにでも楽しめる手軽なスポーツです。自分の目的に合わせ、自分のレベルにあわせて取り組むことが大事です。まずは技術の向上よりも、身体を動かしここちよい汗をかく爽快感や卓球を通じた仲間同士の関係により、長期的に生涯スポーツとして取り組めるような環境づくりを優先すべきと考えます。それ以降については、個々の卓球に対する目的を発展させ、心身の健康の維持・増進に取り組むのもよし、競技レベルでの向上をめざすのもよし。
 大事なことは、卓球が自己実現のための手段として有効に機能することだと考えます。

(しらいしみえこ 埼玉県障害者交流センター)

●日本肢体不自由者卓球協会
 〒489―0953 愛知県瀬戸市柳ヶ坪町136藤原方(TEL:0561―21―2471)
●日本盲人会連合日本視覚障害者卓球連盟
 〒034―0092 青森県十和田市西1番町13―5(TEL:0176―25―1136)
●埼玉県障害者交流センター
 (TEL:048―834―2248)