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定住外国人無年金者として
年金法改正に望むこと

姜博久

 私たち現在41歳を超える定住外国人障害者は、障害者の根幹的な所得保障となっている障害基礎年金を受給できないでいる。国連の難民条約の加入にともなって日本政府は国民年金法における国籍要件を撤廃し年金への加入は認めたが、それが発効される1982年1月1日時点で20歳を超えていた障害者、60歳を超えていた高齢者に対しては、年金受給の年齢に該当していたにもかかわらず、国民年金が創設されたときのような経過措置がとられず、無年金のまま放置されたからである。
 障害者にとって年金が欠かせない経済基盤として機能していることはいうまでもなく、こうした不利益を一刻も早くなくすために、在日の当事者たちが国や地元の自治体に働きかけをはじめて15年以上が経とうとしている。無年金状態が障害者の地域での自立生活と社会参加を阻害するものであり、国が果たすべき是正策がとられないことを受けて、各地の自治体では都道府県レベルや市町村レベルで年金には遠く及ばない金額ではあっても、独自で給付金制度を設けるところが続出した。さらに、96年に策定された国の障害者プランでも無年金問題に対する検討が付記された。しかし、国は月々の掛け金によってこそ年金の受給権が生じるとの保険原理と、82年当時における国籍要件の撤廃は制度の拡大適用であるから、発足当初のような経過措置を講じる必要性はなかったという理屈を盾に、長年にわたる私たちの要望を却(しりぞ)けつづけてきた。
 折しも、坂口厚生労働大臣は無年金問題の解決に向けた私案を提出し、同問題に対する議員連盟も発足し、所得の面から実態調査がはじめられているという。しかし、その実態調査の対象には施設に入所している障害者や知的障害者が含まれておらず、本当に無年金者の生活実態が把握できるか、大きな疑問を抱かざるを得ない。本来の問題は年金制度そのものから外国人を排除しつづけてきたことにある。年金制度が大きく改められようとしているいま、この問題を素通りしたままであってはならない。
 日本の社会を構成する一員として、私たち定住外国人は日本で暮らしている。その私たちの不利益を除去すべく定住外国人障害者及び高齢者すべてに本来の年金が支給されるような改正を強く求めたいと思う。

(かんぱっく 障害者自立生活センター・スクラム代表)