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ウオッチング支援費制度

支援費制度の初期評価
~その課題~

高野牧人

 個別支援計画、重要事項説明書、契約書の3点セットに基づいた支援費制度が動き出しました。
 新しい制度の初期評価をする際の軸足を、次のようにおいてみました。

  1. 利用者は、生活づくり・暮らし向き・サービスの使い勝手が少しでも良くなっていっていると実感できるのか?
  2. 利用者を支援する使命をもつ各施設は、措置費制度より、質の高いサービスを提供できているのか?
  3. 制度を否定するのではなく、制度を充実し発展させていくための評価となっているか?

 1については、利用者本位、利用者の選択といいながらも、基盤整備が充実されたわけではなく、理念だけ先行しているきらいがあります。我々事業者は、当然、理念には同意し尊重していますが、物理的なサービス不足については、行政の取り組みが不可欠です。また、障害者を取り巻く状況は、年齢、障害程度、生活への希望等、千差万別です。しかしながら、現行制度の運用において、個々のニーズに柔軟に対応する面が不足しています。
 また、支援費制度においてはケアマネジメントが組み込まれなかったため、市町村において、ケアマネジメント実施状況に大きな格差が生まれている実態もあります。

 2について、支援費制度は、利用者との対等な契約に基づくものですから、○○のサービスを○○の時間帯に提供しますといった明確な説明の責任義務が付随します。施設側の一方的なサービス提供があったとすれば、そのことに苦情が出てくるのは当然です。
 苦情解決には、まずしっかりと受け止めること(気にかける、声をかける、耳を傾ける)を日頃から積み重ねているかが大きな意味をもちます。施設自らが利用者の評価に耐えられる支援とは何か、をよく議論しておかなければならないでしょう。
 支援費外サービス(オプション)で気になることがあります。支援費制度内では自己負担分は応能負担ですが、支援費外サービスは一律応益負担の原則を適用するケースが見られます。これは施設側が負担の原則を自ら壊してしまっている気がします。
 県下のある施設は、支援費外サービスの自己負担分について減免措置を設けています。生活保護受給者は半額、無年金者や施設長が認める生活困窮者は2割引、個別明細方式より一括包含(ぶっこみ)等利用者の現実に即した対応をされています。こうした考え方の議論も必要だと思います。ただし、本来、自己負担額は実費徴収しか認められていませんので、減免した部分は施設が負担することになります。
 措置費時代よりも運営費が増えたある施設では、収入が増えたので利用者には負担は求めない(支援費外徴収を実施しない)という謙虚な見識を示しています。また、今年度1年間自治会で議論していただき、利用者から実施を望む行事は何かを提案してもらう施設もあると聞いています。
 だれのための、何のためのサービスか。利用と評価の主体はだれか、原点の議論が求められる時です。その評価に耐えられる施設の在り方を考えるのが真の経営責任だと考えます。

 3について、全国社会就労センター協議会は、いくつかの課題を提起しています。重度重複障害者加算の通所施設への適用拡大、判定基準・項目の科学的基準システムによる見直し、判定を支払当事者である市町村から分離し、公正な第三者機関において判定する等です。これらは、制度にかかわる多くの人々の共通要望でもあります。
 支援費制度は、行政の関与や責任が極めて高い制度です。障害程度区分判定、サービス種類ごとの支給決定は行政が行い、ケアプラン策定も支援費制度内ではありませんが、行政の役割です。行政は今後、支援費制度の運用を明確にする義務があるはずです。
 近い将来に介護保険の障害者への適用もありうるとの議論も始まる中、介護保険給付の中にある、訪問介護、訪問入浴(見守り)等の幅広いサービスの適用も考えてほしい一つでもあります。
 中期評価の前に、各都道府県単位で、制度の初期評価をする試みを民間レベルで実施したいものです。利用者の意見・評価、支援施設の困難事例、苦情、ヒヤリハットの共有、支援費制度を建設的に充実させていく知恵の共有を進めていかなければなりません。

(たかのまきひと 身体障害者入所授産施設恵生園施設長)