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ウオッチング支援費制度

利用方法の周知と
サービス内容の充実を市区町村に望む

最上太一郎

 期待と不安でスタートした支援費制度、心ひそかに期待をしていた一人でした。それは「しょうがい」という今までの既成概念によるサービスが崩され、サービスの枠がある程度であるが広がりを増したようですが、財政を握る市区町村がどこまで制度を理解し、だれに利用決定を行おうとしているのかが、市区町村の温度差としてひとつの鍵を握るものだと考えていました。
 それは介護保険が導入される時のようにテレビを通じて報道したり、広域での介護認定審査会が設置されたり、ケアマネジャーが位置づけされることにより適用者の利用状況がスムーズにスタートした時から比べてみても、そこにははっきりとした差が感じ取れ、利用できるものも利用できない、そんな密室での決定が行われている気配さえ感じ取れる支援費制度の雲行きでした。
 支援費制度がスタートしてはや5か月が過ぎようとしていますが、いまだに「しょうがい」を有する家族の方々が相談に来られます。その9割は支援費制度の利用の方法です。施設等を利用されている家族においては施設側から説明が詳しくされているので、不安な点はあまりないようでしたが、在宅の家族には市区町村によっては何ひとつ説明がなされていないところもあったようです。
 説明ではなく、市区町村の広報誌で「支援費制度が始まります」程度で終わっているところもあって、情報の不足というより、内容の不足がサービスを受ける方にとって利用できるものとなっていなかったようです。
 もちろん、私たちとしてはそれを見ていることなく、説明会を近隣市町村へ呼びかけ開催していったのですが、サービス事業者となるところが私欲のために行っているようにも見えたようです。
 市区町村は財政の財を先に計算し、政(施策)を後回しにしているようにもうかがえます。
 一方の受け入れ側の事業所(施設)はどのように変革をしたのでしょうか。
 この制度の仕組みであるサービスを選択し、自己決定を尊重して事業者との対等な関係で契約を行いサービスを利用することとなっているのですが、施設利用者のほとんどはそのまま契約をしているのではないでしょうか。
 私の施設では、契約に至るまでに5回の説明会を本人はもとより家族も交え行いましたが、これでも理解、納得するまでに至っていないことを感じたものでした。そんな状況で全員が契約されましたが、選択決定していただいたうれしさと反面、他のサービス(居宅支援)を選択していただけなかった寂しさもあったものでした。それは施設というものしか利用したことがない本人と家族の安心、安全な場所としての選択であって、施設の提供するサービスの内容を選択していただいたものではないような気がしています。
 なぜかと言えば「家族」の決定が少なくとも介入しているからです。本来なら後見人ではない家族が契約に携わることはできないのですが、私たち事業者側からは、国が示した原則論が優先しなければスタート時の契約に間に合わない状態であったのも事実であり、障害者福祉を経営するものから言えば、介護保険以上の混乱を招くことは予想していたのは私だけではないと思われます。
 支援費制度により施設の提供できるサービス範囲が措置費制度以上に大きく飛躍していかなければならないのに、なぜか、その考えが変わらない施設も見受けられます。その原因にもなったであろう移行までの期間の不足です。
 国としては反論をされるでしょうが、平成15年1月27日のホームヘルプ事業に対しての「厚生労働省の考え方」に、「現在提供されているサービス水準が確保されるよう…」と、この時点でこのような文言がでてくるとは思っても見なかったのです。反対に捉えるならば「現在のサービスを下げないように」と書いているのも同然で、愕然としたものでした。多少なり「より一層」とか「今まで以上」という文言が入れば、前段で述べた市区町村や事業所の考え方は変革をしたと思います。
 最後に私にも「しょうがい」がある弟がいます。「家族」として考えると、この制度に今まで以上のサービスが拡大し、細分化し、理解ある事業者が共に良い意味で競争をしていくことを将来に求めるものです。
 家族の言葉に「親亡き後」の心配が施設というところに求められてきましたが、本来のあるべき知的障害者福祉が発展するとしたら、施設生活も地域生活も利用する選択が多ければ多いほど便利で好ましいものと「家族」の一員とすれば思います。
 支援費制度、それは決して満足のいく薔薇色の制度ではないのですが、その薔薇にはたくさんの種類があり、たくさんの花色があるように、きっと新しい品種のサービス形態が生まれ、たくさんのサービスが色づくことを将来に期待するものです。

(もがみたいちろう 熊本県知的障害者更生施設わらび園園長)