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ひろがれ
APネットワーク!

奥平真砂子

■はじめに

 4月から約半年にわたって“ひろがれAPネットワーク”と題して、ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業の卒業生の活躍や、スタッフが面接で訪れた研修生の国々の障害者事情を紹介してきた。具体的に国の名前を挙げると、インドネシア、韓国、カンボジア、スリランカ、タイ、ネパール、パキスタン、バングラディシュ、ベトナム、ラオスと10か国について見てきたことになる。
 実際のところ、韓国やタイの事情は少しずつ良い方向に向かっているが、他の国々の障害者はまだまだ悲惨な状況下で暮らしている。JICAや本事業の卒業生のような障害をもつリーダーが数多く育ち、地域の障害者のよきロールモデルになることで、少しずつ状況は変わっていくものと思う。そして一人ではできないことも複数が集まれば大きな力となり、可能性もより大きくなる。そのためにも、このAPネットワークが形を成し、広がっていけばよいと思う。

■第5期生7名

 今年もリーダーとなるべく、8月の下旬に新しい研修生が来日した。5期目を迎えた今年は、スリランカ、タイ、中国、ネパール、パキスタン、バングラディシュ、ラオスの7か国からの7名である。障害の内訳は視覚障害が3名、聴覚障害1名、そして肢体不自由3名である。
 ここで、大きな希望と強い意志を持って日本にやってきた、第5期生7名を紹介する。
 まず、タイからやってきた、ナンタヌット・スワナウットさん。彼女は愛称をアップルさんと言い、障害は弱視である。タイの教育省が開設した就学前訓練や障害に関する調査を実施するセンターで点字教材の作成などを行っており、特殊教育や情報技術、日本の福祉制度などを学びたいと考えている。
 次に、ネパールのカマル・ラミチャネさん。彼は全盲で、障害当事者団体と支援団体の連携をめざして立ち上げた障害者団体の代表を務めながら、ラジオ番組を持ち啓発活動をしている。パソコン技術を習得し、ネパールの視覚障害者を指導したいという目的を持っている。
 もう一人の視覚障害をもつ研修生は、中国から来ているインナンさんである。彼は天津市盲学校内按摩治療室に勤務しており、日本の福祉制度やコンピューター、臨床と制度についての知識を得るためにこの研修に参加した。
 たった一人の聴覚障害をもつ研修生、モハマド・J・M・ファズルル・ハックさんは、スリランカから来ている。1996年よりクルネーガラ地区聴覚障害者協会のメンバーで、現在は財務を担当している。研修期間中、聴覚障害者の運動組織を中心に訪問し、幅広く学びたいという目的を持っている。
 パキスタンから来たムハマド・アクマルさんは両足ポリオの障害をもち、10代の頃から第3期生で研修を積んだシャフィクと共に障害者運動を続けている。日本の自立生活運動や統合された社会システムについて学びたいと考えている。
 脊髄損傷の障害をもち、車いすを使用しているアシュラフン・ナヘア・ミスティさんは、バングラディシュ人である。DPI加盟団体として、活発に国内全域に活動を広げているBPKS(障害者団体)に勤務し、障害をもつ女性の権利と自立をめざして活動していくうえで、まず自分が研修を通して広く学びエンパワーしなければいけないと感じ応募した。
 最後にラオスから来た、スパター・スワナウォンさん。ラオスからの初めての研修生である彼女は、難民を助ける会ビエンチャン事務所に勤務し、人材育成は大切なので、障害者リーダーの育成のスキルを習得したいと考えている。
 彼らは1週間のオリエンテーションの後、9月1日(月)には開講式に臨み、2日(火)からは3か月間の日本語研修を受けている。聴覚は手話、視覚は点字研修も加わる。今の時点では研修が始まって1か月足らずなので、研修生の多くはたどたどしい日本語しか話せないが、日本語研修の後は、一人で個別研修を受けるべく日本各地に散っていくので、3か月後には何とか意思疎通ができるほどになっていると思う。

■これからのこと

 ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業は、今年で第5期目を迎えた。これまでに第4期を終え、19か国から33名の卒業生を輩出している。そして、今月号に報告されているスリランカの作業所開所に見られるように、少しずつ結果を出してきている。このほかにも4月からの特集でいろいろ報告されているが、本事業の卒業生たちは帰国後、それぞれの国における障害者のために、悩みながらも懸命に活動している。
 彼らの活動を支えるために、今年度よりフォローアップ・プログラムを実施する予定である。その実施過程で、過去の研修生に連絡を取る機会が増えるであろう。ネットワークを作りたいと考えている研修生も少なからずいるので、これを機会にネットワーク作りが具体化することを願っている。
 ひろがれAPネットワーク!

(おくひらまさこ 本協会職員)