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韓国・済州島で4か国協議
DPI東アジア地域会議

三澤了

 10月27日から3日間、韓国の済州(チェジュ)島でDPI東アジア地域会議が開催された。ホスト国の韓国をはじめ、中国、モンゴル、日本から各国のDPI代表者が集まった。この地域でのDPI活動の現状や今後の活動方針などを討議課題に、活発な意見交換がなされた。
 会議の冒頭、今回の会議で話し合われるべき議題が選定された。各国からの意見をまとめる形で決定された議題は、(1)各国の障害者状況と各国DPIの活動状況、(2)この会議の今後のあり方、(3)この会議のまとめとしての「済州宣言」の内容、(4)朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の会議への参加問題、(5)障害者権利条約の制定促進に向けた東アジア地区での環境整備、である。
 まず各国から自国の障害者の状況とDPIの活動状況ついて報告がなされた。
 日本からは、障害者差別禁止法制定に向けた取り組み、各障害者団体間の連携、昨年行われたDPI世界会議札幌大会の効用、第2期に入ったアジア太平洋の十年への取り組みなどが説明された。また、障害当事者の政策提言能力を向上させるプログラムとして、「障害者政策研究集会」を開催してきたことも紹介された。
 モンゴルからは、障害者の厳しい状況について説明がなされた。全人口約300万人のモンゴルには、現在約12万人の障害者が生活しており、障害者の団体も40ほどある。しかし多くの障害者は、教育や就職の機会を得ることができない。そのため、教育や職業訓練の機会拡大や専門家の養成などが急務であるとのことである。社会主義時代には旧ソ連との関係が深く援助も受けていたが、現在それもなくなった。この会議を通じて、人的・物的支援を要請したいとのことであった。
 中国からは2008年の北京オリンピックに向けた取り組みやDPIの活動状況について報告がなされた。2008年オリンピック組織委員会には障害者も参加し、パラリンピックの準備のためにスポーツ管理センターも設立された。中央のDPI事務局には100名以上のスタッフがおり、地方組織も拡充している。2010年には上海で万国博覧会も開催される予定であり、これを機会にオリンピック施設などのバリアチェックなども検討したいとのことであった。
 韓国からは、若い障害者リーダーを養成する「青年学校」の取り組みや、障害者権利条約の啓発事業などについて説明がなされた。特に障害者個人のレベルにまで権利条約を身近なものとするために、「権利条約推進連盟」をつくり、小冊子やCDなどを通じて広報しているとのことである。また、分立している障害者団体をまとめる作業も行っており、当事者主体の運動を作り上げることに努力しているとのことであった。さらに、DPIの世界会議を将来韓国で開催することも検討しており、その際にはこの済州島で開きたいとの意向も表明された。
 ついで、この会議を今後どのように継続させていくかが話し合われた。その結果、各国持ち回りで、2年に一度開催することで合意した。場所については、次回2005年を日本、2007年を中国、2009年をモンゴルで行うことが確認された。またこの会議の事務局やホームページ管理を韓国がしばらく担当することになり、各国が協力し合ってこの会議を発展させていくとの合意がなされた。
 東アジアブロックに位置する国として、北朝鮮の参加も促していくことで合意した。この間、韓国DPIは北朝鮮の障害者団体と何度か連絡を取っており、このような会議に参加する意向があることを確認できているとのことである。北朝鮮と国交のある中国とモンゴルの協力も得ながら、この会議への北朝鮮の参加を促すことが確認された。
 障害者権利条約発効へのさらなる取り組みの必要性も確認された。権利条約が発効し各国が批准することで、障害者関係の国内法整備は一段と進むはずである。そのような観点から、東アジアブロックのDPIとしても権利条約制定に向けて連帯して取り組むことが重要である。具体的でより実行力のある権利条約制定をめざし、自国の内外で運動を展開していくとの認識で一致した。
 最後に「済州宣言」として、域内協力の推進、この会議を継続していくこと、北朝鮮への働きかけを行っていくこと等が確認され、3日間の討議が終了した。
 初日のレセプションには済州道の道知事も来賓として参加し、会議の発展を願うとのコメントを述べた。また地元のDPI組織である済州DPIの全面的なバックアップにより、会場と宿舎との移動をはじめ、会議に必要な事柄は滞りなく進行した。開催場所や時期により、会議そのものの運営状況は変わってくるであろうが、議事進行のうまさも含め、今回の会議は非常にスムーズで実りあるものであった。次回2005年に日本で開催するまでの間、各国でどのような取り組みがなされ、いかなる状況の発展が見られるのか、期待したい。

(みさわさとる DPI日本会議事務局長)