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フォーラム2003

国立コロニー独立行政法人化
検討委員会の報告

厚生労働省障害保健福祉部障害福祉課

1 はじめに

 群馬県高崎市にある国立コロニーのぞみの園は、平成15年10月に特殊法人(心身障害者福祉協会)から独立行政法人に組織形態を移行し、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園(以下「のぞみの園」という)として新たにスタートした。これに先立ち、厚生労働省では、平成14年8月に「国立コロニー独立行政法人化検討委員会(座長:岡田喜篤川崎医療福祉大学学長)」(以下「検討委員会」という)を設置し、のぞみの園の独立行政法人化に伴い、国として提示すべき施策目標の内容等について幅広く検討を行い、平成15年8月に報告書の取りまとめを行った。
 本稿では、のぞみの園の独立行政法人化に至る経緯を踏まえ、検討委員会における主要な議論について紹介することとしたい。

【参考】のぞみの園の概要

  • 入所定員:550人
  • 平成15年10月1日現在の入所者:499人
     ※ 青森県、宮城県、長崎県、沖縄県を除く43都道府県から入所
     ※ 関東・甲信越地区からの入所者が、全体の約68%
     ※ 平均年齢53歳、平均在籍期間28年
  • 主な施設:管理部門、企画研究部門、居住区部門(22寮)、治療・訓練部門

2 独立行政法人化に至る経緯

 国立コロニーのぞみの園は、昭和46年4月に心身障害者福祉協会法に基づいて、群馬県高崎市に開設された。
 平成13年12月に、特殊法人等整理合理化計画が閣議決定され、のぞみの園は、重度知的障害者のモデル的な処遇を行う施設として明確に位置づけ、組織形態を独立行政法人とすることが定められた。
 平成14年12月に、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法が成立し、平成15年10月により、のぞみの園が独立行政法人として運営されることとなったものである。

3 時代背景の変化~終生保護から地域生活へ

 のぞみの園が開設された当時は、重い知的障害のある人たちのための総合的な福祉施設の設置が強く求められており、のぞみの園はそうした時代の要請により開設されたものであった。
 設立の経過について検討委員会報告書では「終生保護の場としてのコロニーの設置が切望された」と記述している。
 検討委員会では、また、昭和56年の国際障害者年を契機として、わが国の障害者施策にもノーマライゼーションの考え方が浸透するようになったこと、平成7年に決定された「障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略~」、平成12年の社会福祉事業法等の1部改正、平成14年に決定された新障害者基本計画などにおいて、知的障害者がコロニーのような大規模施設で一生を終わるのではなく、地域でその人らしく生活することが当然であるということが多くの人々の共通理解になったことなどが指摘された。そして、のぞみの園についても重度知的障害者のケアに一定の役割を果たしてきた、としたうえで、時代のニーズに合致したものに大きく転換することを求めた。

4 のぞみの園に対する政策目標

 入所者の地域への移行について、検討委員会報告書では次のように記述されている。
 のぞみの園が、入所者の地域への移行、退所後の生活支援体制づくりと継続的な支援を進めることは、今日の知的障害者福祉行政の方向性と整合するものであり、特殊法人等整理合理化計画において「重度知的障害者のモデル的な処遇を行う施設」と位置づけられた趣旨とも合致したものであるとともに、類似施設の運営に先導的な役割を果たすものと期待される。
 のぞみの園の運営においては、今後、新たな入所者を受け入れないことを基本とし、現在の入所者については、効果的かつモデル的な処遇を行うことにより、地域への移行を進めていかなければならない。その結果として、定員規模についても段階的に縮小されていくことになる。
 のぞみの園が、今日の時代の要請に応じて転換していくための政策目標としては、中期目標期間中(平成19年度末までの期間を想定)に、現在の入所者数を3割から4割程度縮小させるものとして設定されるべきである。
 また、中期目標期間終了後においても地域への移行に積極的・継続的に取り組むべきことはいうまでもなく、この目標数値が地域移行の最終目標ととらえられてはならない。
 また、運営の合理化・効率化については、次のように記述されている。
 のぞみの園が現在の収支構造を維持したままで重度知的障害者へのモデル的な処遇を行った場合には、国民の納得が得られないものと考えられ、また、民間施設等がこれを応用していくことが難しいと考えられる。今日、すべての独立行政法人において、運営の徹底的な合理化・効率化が求められていることを考慮すれば、のぞみの園においても同様の経営努力が強く求められる。
 独立行政法人化後にあっては、職員の能力や業績に応じた人事評価の仕組みの導入や非常勤職員の積極的な活用などによって、効率的な職員体制を構築することが求められる。
 また、入所者の地域への移行に伴って、入所部門と地域生活移行部門間での適切な人員配置を進める必要がある。
 なお、入所者の地域への移行を着実に進めるためには、施設から地域への移行や地域生活の支援に実践経験を有する外部人材の登用についても積極的に検討すべきである。
 運営費の大部分を占める人件費については、本検討委員会においても厳しい見方が示されたところである。このため、事業の内容や規模に応じた職員の適正配置、非常勤職員の活用等を進めるとともに、類似施設における取り組みも参考としながら、給与水準についても大方の国民の納得が得られるよう見直すなどの経営努力が求められる。

5 おわりに

 検討委員会報告書では「おわりに」と題して次の3点の見解を示した。

(1)本人の意思の尊重

 障害者の自己決定を尊重した利用者本位のサービス提供を基本として、障害者自らがサービスを選択する仕組みとされた支援費制度の趣旨を踏まえ、のぞみの園によるサービス提供においても、この方針がさらに徹底される必要がある。
 特に、入所者の地域への移行にあたっては、入所者本人の意思が十分尊重され、主体的な選択が行われるよう最大限努力すべきである。

(2)家族への配慮

 家族の心情に配慮し、特に地域への移行に関しては、必要な基盤整備の取り組みに加え、家族に負担や不安が生じることのないよう十分な説明を行うことはもとより、グループホームにおける地域生活の実際の状況を見学する機会を確保するなど、家族の理解と協力を得るための十分な努力が行われなければならない。

(3)検討結果の具体化に向けた関係者一丸となった取り組み

 本検討委員会としては、今後、この検討結果の方向性の着実な具体化に向け、のぞみの園が最大限の努力を傾注することはもとより、国における積極的な支援、さらには、地方自治体や関係団体の協力など、幅広い関係者による一丸となった取り組みが行われることを強く要請したい。

 のぞみの園においては、平成15年10月の独立行政法人化と同時に、地域生活支援室を設け、入所者の地域への移行に本格的に着手した。また、高崎市内に自立訓練ホームを開設し、地域生活の体験や、地域生活を想定した自立支援の取り組みも動き出した。
 「終生保護」の場として設置されたのぞみの園が、今日の知的障害者福祉のニーズに適った運営を確立するためには、さらなる努力と今しばらくの時間が必要と見込まれるが、のぞみの園が今、大きく変わろうとしていることは確かであり、その足取りがさらに確実なものとなるよう国としても積極的な支援を続けるとともに、地方自治体等にも協力要請を行っていきたい。