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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年3月号

列島縦断ネットワーキング

宮城 共生型グループホーム「ながさか」がオープン

宮城県保健福祉部地域生活支援室

1 プロジェクトM(みやぎ)からのスタート

宮城県では、平成14年に職員からの企画提案を事業化する「プロジェクトM(みやぎ)」(事業提案型新組織新設・事業実施制度)を創設しました。

今回ご紹介する「共生型グループホーム」は、県立拓桃医療療育センター(肢体不自由児施設)の医師を中心としたグループが、これまでの経験をもとにして、重度・重複障害(児)者が、高齢者や知的障害者と共に、地域とのかかわりの中で、生きがいや役割をもって豊かに過ごす新たな生活の場としてのグループホーム(共生型グループホーム)の創設を企画・提案し、「プロジェクトM」の第1号として採択、事業化されたものです。

2 共生型グループホーム「ながさか」の誕生

県では「みやぎの福祉・夢プラン」の基本理念である「地域で自分らしい生活を安心して送れる社会」の実現に向けてさまざまな取り組みを行っています。その理念の具現化のひとつとして行うこととなった共生型グループホーム事業を実施するため、平成15年4月、県庁内に「地域生活支援室」を新設し、具体化に向けた作業を進めてきました。

共生型グループホームの運営は、社会福祉法人に委託し、法人と地域生活支援室職員が協力しながらより良いかたちを作り上げるための検討を繰り返しました。「地域で自分らしい生活をする」というキーワードのもと、立地場所の選定やスタッフ研修を行いました。また、地元住民や障害者団体等に対する事業説明のほか、市町村や在宅介護支援センター等の協力をいただきながら利用者選定などを法人とともに実施してきました。

「共生型グループホーム」は、宮城県白石市内の民家を改修して使用することに決まりましたが、入居者が「わが家」と思えるような居住環境となるよう、個室化やバリアフリー化の工事を行いました。庭を見ながらのんびり時間を過ごせる広い縁側や掘りごたつのある居間など、おちついたたたずまいのある建物となりました。そして、平成16年1月15日、共生型グループホーム「ながさか」はスタートしました。

3 「ながさか」の概要

共生型グループホーム「ながさか」の概要については、次のとおりです。

  1. 運営委託法人…社会福祉法人白石陽光園(理事長・石川規夫氏)
    知的障害者更生施設及び授産施設4か所(入所3、通所1)を運営するほか、知的障害者グループホーム16か所、障害児(者)地域療育等支援事業、重症心身障害児(者)通園事業(B型)など、障害者の地域生活支援を積極的に行っています。
  2. 場所…宮城県白石市福岡長袋字永坂1番地(敷地面積 4、657.75㎡)
    住居スペースのほか、敷地内には以前まで保育所だった建物や蔵などがあります。
  3. 利用定員…重度・重複障害者2名(うち1名は体験スティ)、知的障害者3名、痴呆(現 認知)性高齢者8名(当面は5名)
  4. 建物…居室13室、トイレ・浴室2か所、居間、台所など

4 「ながさか」での生活

「ながさか」では、社会福祉士、介護支援専門員を含む10名のスタッフが24時間体制で日常生活の支援を行っています。うち2名は看護師を配置し、日常の健康管理などをしています。

現在、入居者は、重度・重複障害(児)者1名、知的障害者3名、痴呆(現 認知)性高齢者3名で、それぞれが支援費制度、介護保険制度を活用しながら自立的な生活を送っています。日中、障害のある方々は、施設への通所や食品加工会社での職場実習に通っています。また、高齢の方は、散歩や夕食の買出し、お茶を飲みながらおしゃべりをしたりと、それぞれ思い思いの時間を過ごしています。

5 「もぞこいごだぁー」

雪の降るとても寒い日に知的障害のSさん(43歳)が通所施設から寒さで手を真っ赤にして帰宅したときのこと、出迎えた高齢者のOさん(84歳)は、Sさんの手をさすりながら「もぞこいごだぁー」(宮城県の方言で「いとおしい」と「かわいそう」が重なった感じの言葉)と声をかけているのです。SさんにとってOさんの優しいまなざしとあたたかい手のぬくもりは、自分のお母さんのそれと重なって、とてもおだやかな気持ちになっていたようです。

「ながさか」での生活が始まって1か月。日頃の生活の中で、入居者同士の関係も深まってきています。食事の準備の時には、包丁の使い方やお皿の洗い方を高齢者が障害者に教えたり、障害者が高齢者にお茶をいれたり、お互いにできることを通じて、思いやりの気持ちを表現しあえる関係が育ちつつあります。

6 これから…

共生型グループホームについては、3年間のモデル事業という位置付けです。この3年間という短い期間の中で、さまざまな課題を抽出し、方向性を確かなものにしていきたいと考えています。また、他の事業主体でも実施できるように、国をはじめとする関係機関にも必要性を訴えながら、一般事業化に向けた取り組みを行っていきます。

まだまだスタートをきったばかりです。今後とも、どんなに重い障害があっても、高齢になっても、一人ひとりが求めている地域生活を支援していく「共生型グループホーム」となるように事業を進めていきたいと考えています。