音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年3月号

みんなのスポーツ

ふとした事で世界が広がるから

清水直樹

私は普段、電動車いすに乗って生活しています。交通事故で体が思うように動かなくなったからです。事故から十数年の間に、病院から身体障害者療護施設に移り、そこで生活してきました。その中で私の目や耳に入ってくる車いすでできるスポーツといえば、バスケットボールやロードレースくらいでした。身体障害者体育大会を知りスラロームにも毎年出場はしていますが、それを除けば、電動車いすでのスポーツなど、とあきらめていました。

それがある時、いくつかのタイミングと意志がかみ合ってサッカーに出会えたのです。もともと体を動かすことは好きでしたし、サッカーも好きでした。初めて電動車いすで、その専用の大きなサッカーボールを蹴った時、心の中でも何かが弾むようでした。

それからもう3年になりますが、その間にさまざまな人と出会い、多くのゲームを通じてますますサッカーが好きになっていきました。また、縁あって、その中で知り合った女性と昨年暮れに結婚し、この春には施設を出ようと準備しているところです。

サッカーの話を紹介しようと思ったきっかけは、私の仕事に絡む話です。私は企業組合ユニフィカでお世話になっていて、「ハートフルオンライン Ho!」というサイトで使用するファイル操作を受け持っています。このサイトには障害者スポーツを紹介するページがあり、ある時「じゃ、サッカーを紹介すれば」という話になりました。私のように電動車いすでスポーツをあきらめている人が、もしかすると楽しみを見つけるかもしれない。少なくとも、情報提供はできる…。

とりあえず、「こんなことをしてる人もいるよ」ということを紹介したいと思いました。純粋に体験談として、「こんな人の、こんな話」を書きたいと思いました。それを読んで「楽しそう」と思ってもらえたら言うことはないと。

次に書いた時は、「電動車いすサッカーを紹介する」という目的で書きました。全く知らない人、名前くらいは知っている人に、どういうものなのか、かいつまんで、というつもりで。そしてその次は、プレーヤーとしての自分の感想をまとめてみました。自分が得たものを下敷きに、サッカーへの思いを書きました。

今までの3年間で、投稿は右に挙げたように3回です。年1回の投稿でも、毎回切り口を考えるのに時間がかかってしまうほどの遅筆ですから、自分の成長と環境の変化を書いていくのがよいと自分では思っています。

また、読んで楽しくないと、紹介しているスポーツ自体への興味も湧かないかもしれません。どうせならただの情報提供で終わらず、文章の奥から手招きしてもいいだろう、と思っています。

「伝えたい」という思いは、おそらくだれかの選択肢を広げる一助になればとの想いからくるエネルギーなんだろうと思います。私は私の書いたものを読んで「おもしろそうなものがあるんだな」と思ってもらえたらそれで十分うれしいです。それでもし、電動車いすサッカー人口が少しでも増えたとしたら、それを書いたものとしてはとても幸せだろうと思います。

そして、もちろん私は紹介記事を書くためにサッカーを始めた訳ではありません。私はプレーヤーであり、私のサッカーへのエネルギーがそのまま筆に向かう訳で、これからもプレーヤーとして、チームのみんなと夢を追いかけたいと思っています。そして、「試合に負けて、電くるはガタガタ、心はボロボロ」みたいな話ではなく、「ついに天下取ったぜー」と、いつかそんな景気のいい話が書けたらいいなと思っています。

(しみずなおき 企業組合ユニフィカ岡山サテライト)