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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年4月号

わがまちの障害者計画 長野県長野市

長野市長 鷲澤正一(わしざわしょういち)氏に聞く
地域全体で福祉レベルをアップ
~長野市障害ふくしネット~

聞き手:藤村 出(ふじむらいずる)
(自閉症支援施設あおぞら、本誌編集同人)

▼長野市の障害者施策は勢いがあっておもしろいということをうかがいました。今日はぜひその辺のお話をうかがいたいと思っております。まずはじめに、これまで市政を手がけられて、常に心がけておられることはどのようなことでしょうか。

長野市を選んでいただいたことは非常にうれしいことですね。いつも心がけていることは、いくつかありますが、基本は情報公開です。そのうえで常に考えていかなければならないことは、四つのポイントがあると思います。

一つ目は、2006年がピークで日本の人口が減っていくという認識をもつことです。今までのように右肩上がりという発想ではないということが一つ目です。二つ目は、財政が国も地方も非常に問題があることです。三つ目は、市民のみなさんも常にこれらのことを認識しながら、ものを考えることをしていかなくてはならいということ。市民の意識改革ということも基本になります。もう一つは、市の職員の意識改革です。市民はお客様であるという、企業で言えばカスタマーサービスをしていく必要があります。今まで市の職員は、機関委任事務という決められたことをやればよかったわけです。しかし、平成12年に地方分権一括法ができたことによって、機関委任事務はなくなったわけです。そうすると、全部自分たちで企画してやらなくてはならないということですね。財政的なことで難しい点もありますが、今後は私も含めて市の職員は自主性が非常に大切になってきています。

▼福祉の分野でも機関委任事務というものがありましたが、この分野も各市町村でそれぞれ施策を作っていかなければならなくなってきています。長野市として、これはやっていきたい、ここに力を注いでいきたいというものはどのようなことでしょうか。

難しい質問ですね。どこに力を入れるかという選択は、基本的には全体を見られる福祉の専門家がきちんとやる。そういう意味から言うと、福祉だけの話ではないのですが、非常に大切なのは、相談業務だと思っています。福祉の世界には「ケアマネージャー」がありますね。そういう話をきちんと聞いて、的確なアドバイスをする人がいるということが非常に大事だと思います。

▼福祉の対象者になる人たちは、いろんな意味で障害があって情報に関しても情報弱者と言われています。一般市民以上に積極的に情報提供をしていかなくてはならなかったり、あるいは相談業務の意味を伝えていかなくてはならないと思うのですが、何か具体的に考えていらっしゃいますか。

情報弱者は、障害者だけでなく、老人もそうですね。これからはいろんな端末機器がでてくると思います。障害者の場合は、障害に合わせて特殊な端末が必要になってくると思います。しかし、生産する数が少ないのでコストがかかり難しい面があります。逆にローテクではないですが、相談業務のようなものが一番フィットすると思いますね。相談員が一番コストがかかると思いますが、それが一番必要だと思います。

▼長野市の障害福祉施策の目玉としては、相談業務を充実させることになるのでしょうか。

そうですね。相談業務が一番大切なわけですが、国は15年度から補助金を廃止して一般財源化しましたが、同時に障害者地域移行推進特別モデル事業を新たに実施しましたので、これを活用して従来の相談業務に加え、長野市独自の取り組みとしてケアマネージメントの充実や、NPO法人や事業所など地域の障害福祉に携わる皆さんとともに「長野市障害ふくしネット」(以下、「ふくしネット」)を立ち上げて、地域全体の福祉レベルの向上を図る事業を実施したところです。

▼事業を実施してどのような効果が出てきていますか? また、これからの取り組みをどう考えていらっしゃいますか?

具体的な成果の一つとして、NPO法人や民間の事業所の皆さんとの協働によってさまざまな具体的な提案があり、共に研究する中で、協働して各種事業を開発し、実施するシステムができつつあります。これからの取り組みとしては、既存の施設、たとえば市街地の空き店舗などを活用して小規模多機能施設の充実が図れないか「ふくしネット」の中で研究するなど、NPO法人や民間事業所などとのパートナーシップを大切にしていきたいと考えています。

▼昨年4月から支援費制度がスタートしましたが、支援費制度への取り組みで長野市独自の事業があるとうかがいました。その点をご紹介ください。

ケアマネージメントの良し悪しと、それに応えられる地域資源の充実が支援費制度の鍵を握ると考えています。「ふくしネット」では、市内のさまざまな施設や機関・団体等のネットワーク化により、総合的なサービス提供を図ることができるようになりました。また、身近な場所でのケアマネージメントの実施が必要であることから、通所施設などでケアマネージメントを行い、引き続きその後の見守り支援を実施する「ケアプラン作成委託事業」を今年の1月から実施しています。

▼最近、新聞でも話題になっている宮城県の浅野知事の入所施設解体宣言や長野県でも西駒郷の地域移行が進められています。障害のある人たちが地域で暮らすということに対してはどうお考えですか。

特に知的障害の皆さんのことですが、今、県は西駒郷を解体するということで、長野市でも相当受け入れることになるという話になっています。行政が自分で何かやりだしたらまた西駒郷と同じになってしまいます。そうではないことをやらなくてはならいと私も思っていますし、何とか障害のある皆さんが地域で暮らせるようになればいいと今話をしているところです。

障害者だけの話ではないのですが、「混在した社会をつくりたい」というのが、私のキャッチフレーズです。たとえば、具体的に住宅政策でいうと住宅団地を作ったことは日本の政策でいうと非常に失敗だったと思います。住宅とお店を分けてしまったことは郊外型の車社会にならざるを得なかった。社会がおもしろくなくなってしまったんですね。私は工業団地だけはしかたないと思うのですが、福祉の世界で障害のない人と障害のある人がうまく調和できるものならいいと思います。

▼「ノーマライゼーション」という考え方でいえば、混在できるのが一番いい形ですね。

そうですね。混在できる条件が整えば私は結構だと思います。以前、浅野知事が長野市に来たときに聞いた話や、私も実際に見たり聞いたりして小規模の施設でやろういう発想は、行政にとってもたいへんありがたい話です。

▼これからの地方自治は、市民一人ひとりが自分のこととして積極的に考えていかなければなりません。障害のある人たちの声を施策に反映させる考え方として、どういうスタンスで長野市と長野市民はやりとりをしていくのでしょうか。最後に市長として、一言お願いします。

障害者の皆さんの最終的な目的はやはり自立だと思います。自立に向けた支援をぜひやりたいと思います。

それから来年、長野市でスペシャルオリンピックスが行われます。1500人から2000人のアスリート。家族や関係者も入れると1万人くらいの規模になります。そういうものが長野市で行われることは長野市民だけでなく、社会的にみても非常に意義のあることです。これをみんなでやり遂げることは、私は長野市民にとっていいチャンスだと思います。

これらのことも含めて、障害のある人に対し、障害のない人がどこまで理解し変わるかというのが、私としては非常に大きなものだと思っています。

▼混在ということでは、障害のある人とない人たちがどう調和して生きていけるかが今後の課題になりそうですね。今日はお忙しいなか、お話いただきましてありがとうございました。


長野県長野市基礎データ

◆面積:404.35平方キロメートル
◆人口:364,550人
◆障害者の状況(平成14年度)(手帳保持者による)
身体障害者:13,264人
知的障害者(児):1,866人
精神障害者:753人
◆長野市の概要:
千曲川に沿って広がる平野部を取り巻くように山間部が位置し、年間平均気温11.5度、月平均降水量78.2mmとさわやかな高原的気候に恵まれている。善光寺の門前町として繁栄。城下町松代や飯綱高原などの観光資源が随所にある。98年冬季オリンピック、パラリンピックの開催地。99年に中核市に移行。05年には、スペシャルオリンピックス冬季世界大会が開催される。
◆問い合わせ:
長野市保健福祉部障害福祉課
〒380-8512 長野県長野市大字鶴賀緑町1613
TEL 026-224-5030 FAX 026-224-5093

長野県の地図 長野市の位置


平成16年度 障害福祉関係 主な新規事業

長野市障害福祉課

平成15年度予算額 3,203,948千円(人件費130,693・障害者2,905,812・障害児167,443)
平成16年度予算額 4,086,919千円(人件費145,826・障害者3,762,197・障害児178,896)27.6%増

事業名 事業内容
身体障害者グループホーム事業
6,368,000円
重度身体障害者を対象とし、既存のグループホームと同様に支援費相当額を支給する。(対象者の基準は長野市独自の基準による)
入居者 一人あたり 月額 132,650円(定員4人の場合)
4人入居の場合 132,650円×4人×12ヶ月=6,368,000円
介護型グループホーム運営補助金
8,352,000円
特別障害者手当受給資格者または強度行動障害の重度障害者が入居するグループホーム(知的・身体障害者GH、対象者は市独自基準による)に介護人又は看護師を配置する場合、その経費に補助する。(看護師補助は県の支給要件と同じ)
介護人 入所者一人あたり  月額 87,000円(4人×12ヶ月×2ヶ所)
看護師 入所者一人あたり  月額 137,000円(予算措置なし・要綱整備のみ)
障害者自立訓練事業
2,400,000円
在宅の知的・身体障害者がスムーズにグループホームに移行できるよう必要な自立生活訓練を社会福祉法人、NPO法人で実施する。
1人1泊あたり 14,000円(食費、家賃の一部等利用者負担あり)
自立訓練プログラムを作成し、支給決定を受け、範囲内でプログラムにしたがって訓練を実施し、定期的にモニタリングとプログラムの見直しを行う。
宿泊支援事業
2,740,000円
知的・身体障害者(児)を対象とし、宿泊施設の整備された通所施設等でショートステイを行う。 1人1泊あたり 7,000円(食費、人件費の一部等利用者負担あり)
ケアプランにより事前に支給決定を受け、範囲内で実施する。
対象事業所は事前に申請に基づき調査し事業所指定を行う。
ケアプラン作成委託事業
8,553,000円
障害者の地域生活を支援するため、通所施設等、障害者の身近な施設でケアマネージメントを行うケアプランナーを指定し、ケアプラン作成とモニタリングを社会福祉法人やNPO法人に委託する。(知的、身体障害者を対象)
ケアプラン作成 1件あたり 12,300円×560件=6,888,000円
モニタリング  1回あたり  3,700円×450件=1,665,000円

図 長野市障害ふくしネット概念図