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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年7月号

1000字提言

福祉のサービス化と地域づくり

冨田昌吾

介護保険の改正の議論が進むにしたがって、支援費制度を中心にした障害者福祉の改正に関しての動きが騒がしい。介護保険との統合になるのか、一部統合になるのか、三位一体の改革の中で、地方自治体へ一般財源化され移譲されるのか、それとも、支援費制度が継続するのか。いまだわからない。どうなるにしろ、障害のある人の生活が豊かになるのであれば、かまわないのだが…。

日本の社会福祉に契約制度が導入されて、いま、生活の中にサービスとしての「福祉」=「福祉サービス」が根付き始めているような感じがする。サービスの受け手ではなく、サービスの利用者・消費者として、障害者や高齢者、児童(その親)がその関係に慣れ始めている。今まで閉じこめられていた「ニーズ」がこのサービス化の流れの中で、ようやく表現できるようになり始めた。

地域での生活をしていくために必要な支援を得ていく、確保していくためには、このサービスが不可欠だ。そのことを前提にしながらも、個人的には一抹の不安を抱えている。

福祉のサービス化は、サービスの受け手と、担い手を明確に区別する。それは、契約行為として、また、金銭関係として。ことばを変えれば、障害者はサービスの受け手になりうるという意味で「障害者」である。日本の障害者福祉の中で、たとえば共同作業所のように、「共に~」を打ち出してきた取り組みは、サービス受給者関係になじまないように感じる。それは、障害者/健常者という区分けを超えることを目的にしてきたからである。

サービスは不可欠である。それが大前提である。その前提を、差別構造を明らかにもった「共に生きる」などという響きのよいことばに押し込めるつもりはない。しかし、すべてがサービスになってしまうことには、どうしても不安がある。地域社会で生活することには、「ゆるみ」が必要だと思う。はっきりしない、よくわからない空間や時間、関係などが。

地域で暮らし続けることができるサービスを確保するのが大前提で、そのうえで、地域社会に参画できる、そんな地域づくりをめざしたい。

(とみたしょうご 寝屋川市民たすけあいの会)