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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年7月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編 ●識別方法いろいろ●

提案:山口和彦 イラスト:はんだみちこ

山口和彦(やまぐちかずひこ)さん

25歳の時、緑内障になり、失明。全盲だが、国内外を白杖一本でひとり旅を楽しむ。20年ほど中途視覚障害者の生活訓練に携わる。現在、ロゴス点字図書館副館長。


靴の識別

昼間の会議を終えて、視覚障害者の仲間と一緒に飲食店に立ち寄りました。靴を脱いで座敷に上がり、おいしい料理を食べながら久しぶりに友人達と楽しいひとときを過ごしました。

さて、時間が経ち、席を立って自分の靴を探していました。すると、親切な店員さんが「お客様の靴は何色ですか、靴紐がついているのですか?」などと尋ねてきます。「黒色で、紐がないものです」と答えると、それが困ったことにいくつもあるのです。ひとつひとつはいてみても、ほぼ靴のサイズが似ています。男性ですと、色は茶色や黒色が多く、しかも靴のサイズも似通っているために、自分の靴を探すのに一苦労しました。

そこで、私はそれ以来、自分の名刺を入れた名札を作り、それを洗濯ばさみに取り付けました。靴を脱いだとき、名札付きの洗濯ばさみで靴をそろえておきます。こうすることによって、自分で靴を探すことができますし、探してもらっても、すぐに自分の靴を見つけることができます。


靴下の洗濯

先日、海外旅行から家に戻り、荷物の片付けをしていました。お土産などは楽しくてよいものですが、洗濯物がたくさんたまってしまいます。洗濯物は、ビニール袋に入れて持ちかえってきたものですから、そのまま洗濯機のなかに下着や靴下など一緒に入れて洗いました。

さて、洗濯物を干して取り込みましたが、同じような靴下が何足もあります。どの靴下がペアになっているのか、わからなくなってしまいました。よく触ってみるのですが、絶対間違いなく大丈夫という自信がありません。もし、色違いのもので、右と左とが違った靴下をはいてしまったら、恥ずかしいことです。たとえ、左右の靴下がちぐはぐでも、それを注意してくれる人がいるとは限りません。

私は、これから靴下を洗濯するときは、輪ゴムで靴下の足首にあたる部分を止めておくことにしました。これなら洗い終わっても、靴下をペアにして干しておけば、間違いが起きません。


割り箸と粘着テープ

私は、毎日ラッシュ時間に通勤をしています。全盲ですから、折りたたみ式の白杖を携帯して歩いています。通勤途中に、自転車や人の足に白杖をひっかけてしまうこともたびたびです。時折、白杖の接続部分が折れてしまうことも珍しくありません。

白杖は、盲人にとって命の次に大切なものだといわれるほどです。これは、白杖がなくては、一歩も怖くて歩くことができないからです。

そこで、折れたときの応急手当として、私は、割り箸と粘着テープを鞄の中に入れておきます。折れた個所に割り箸をあてがい、テープで固定するためです。もちろん、ある程度、不安定ですが、この応急処置をするだけで、再びひとりで歩くことができるのです。