音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年8月号

挑戦!アテネパラリンピック

ウィルチェアーラグビー監督
塩沢康雄(しおざわやすお)さん

【プロフィール】

日本ウィルチェアーラグビー連盟代表、2004アテネパラリンピック日本代表チーム監督、2002世界選手権日本代表チーム監督(8位)、埼玉県在住(試合前、選手とミーティングする塩沢監督〈左端〉)。

―ついにパラリンピック出場の夢がかないました。おめでとうございます。

ありがとうございます。

―ここまでの道のりを簡単にお話いただけますか

97年に日本ウィルチェアーラグビー連盟が発足してから7年、全国に加盟チームは8チーム、競技者は80人ほどになりました。日本は2年前の世界選手権の結果から世界ランキングが8位になり、そのランキングが維持できたことでワイルドカードによるパラリンピックへの参加が認められました。

―パラリンピックには何チーム出場するのですか?

8チームです。パラリンピックには、世界選手権のチャンピオンのカナダと、アメリカズゾーン代表のUSA、ヨーロッパゾーンからはイギリスとドイツとベルギー、そしてオセアニアゾーンからはオーストラリアとニュージーランドと日本が参加します。この中で現在のベスト4はアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドになると思います。

―これまでアメリカ、オーストラリアなどとの国際試合で勝ったことはあるのですか?

いいえ、残念ながらありません。いい試合はしてきているのですが、やはり勝つ厳しさを実感しています。日本が所属しているオセアニアゾーンには強豪国のオーストラリア(世界ランキング3位)とニュージーランド(世界ランキング6位)が所属しています。この2か国とは何度も対戦する機会があり競技レベルはかなり近づいてきていますが、まだ勝ちを得るまでには至っていません。

―アテネをめざしてどんなことを取り組んできましたか?

やはり国際試合の経験が少ないという弱点をどう克服するかが課題です。ビデオを観てのイメージトレーニングや、外国チームについての情報収集、戦術や戦略についての研究等を行っています。日本選手は外国選手に比べて体格が小さいので、これをカバーすべくミスを少なく、チームワークを大切にすることに重点をおいた練習に取り組んでいます。

―海外遠征はされているのですか?

今年は2回の遠征を行いました。アメリカのアラバマ州とオーストラリアのシドニーです。

―9月のアテネまでの予定を教えてください。

選手は体温調節ができない頚髄損傷者がほとんどで、冷房設備がある体育館の確保が難しいのですが、9月まで代表合宿を後3回予定しています。多くの選手が仕事をもっているので、土、日を利用した合宿になります。合宿では1日7~8時間の練習を行います。

―代表選手は今、どんなことを集中して練習していますか?

このスポーツは技術とスピードがないとトップチームには勝てません。そのため筋力トレーニングは欠かせません。選手はそれぞれにジムに通ったり、自宅でウエイトトレーニングを行っています。また走力を付けるためにスロープを上がったり、車いすに負荷をかけて走りこんだりしています。全員が集まる合宿では、なるべく実戦的なオフェンス・デフェンスの練習ができるように心掛けています。特に日本は高さがないので、本番では相手チームのキーディフェンス(ゴールラインの前で行うゾーンディフェンス)に対するアタックが課題になります。外国チームの硬い守りをいかに確実に突破できるか、それとパスミスがない攻撃ができるように力を入れています。

―ずばりアテネの目標は?

まずは予選で1勝をめざしたいと思います、予選で1勝できればメダルゲーム進出の可能性が高くなります。かなり厳しい戦いになると思いますが、これまでにない面白いゲームができると思っています。

―読者のみなさんをはじめ、見所というかどんなところを見てほしいですか?

四肢麻痺者のチームスポーツとして、シドニーパラリンピックより公式競技となりました。国内ではまだまだマイナーなスポーツですが、これを機会にウィルチェアーラグビーを多くの方に知っていただきたいと思います。そして、この競技のチームプレーの素晴らしさや、車いすによるコンタクトスポーツの迫力を楽しんでいただきたいと思います。

―ありがとうございました。アテネ大会でのメダルゲームめざしてがんばってください。

(取材・編集部)

ウィルチェアーラグビー〈ミニ知識〉

  • 競技対象者は四肢麻痺者(頚髄損傷や切断等により四肢に障害がある者)
  • 1チーム4人で障害に応じてクラス分け(0.5~3.5点)がなされ、4選手の合計点は8点を超えない
  • ボールは公式バレーボールを元に開発された滑りにくい専用球を使用
  • ボールは投げたりひざの上に乗せて運ぶことができる
  • 車いすによるコンタクトが認められている。アタッカー用とブロッカー用、そして両用の車いすがある
  • 競技時間は1ピリオドが8分間で4ピリオド行われる。