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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年10月号

行政・学校・地域に要望し期待すること

特別支援教育に期待・要望する

全国視覚障害児(者)親の会

今後の「特別支援教育の在り方」についての最終報告が出され「特殊教育」が大きく変わろうとしている。

視覚障害者の教育については、120有余年の歴史を持っており、それがどのように変わろうとしているのか。また、盲・ろう・養護学校が今後どのような形で存続していくのか。あるいは「特別支援学校」という新しい制度下で、今までの「特殊学校」がどのような形態と機能を持った学校に変わっていくのか。盲・ろう・養護学校が地域の障害教育のセンター的役割を果たすとしているが機能や支援体制をどのように整備していくのか、具体的な内容についてはいまだに十分な説明がなされていない。

親としては、期待感と併せ、ここ数年繰り返されてきたいくつかの出来事を通じて懐疑心と不安を禁じ得ないのが率直な感想である。一つは、5年目を迎える介護保険制度は、国会論戦の中でいくつもの不明確な問題が残っていたにもかかわらず、開始の日だけはアッサリと決められてしまったこと。

二つ目は、支援費制度の決定である。これも多くの問題を残したまま一昨年スタートした。そして、発足して1年も経たないうちから、「安定した財源の確保が困難」として介護保険制度への統合を打ち出してきた経緯がある。

「特別支援教育」では、現在の盲・ろう・養護学校から「特別支援学校」(仮称)という障害の種別を越えた学校を新たに設けるとしているが、盲学校をみると重複障害の児童生徒がほぼ半数在籍している。単障害の児童生徒やボーダーライン層といわれる児童生徒も点字や拡大文字による教育を進めている。これからも盲・ろう・養護学校とも、それぞれの長い歴史の中で蓄積されたノウハウを活(い)かして、障害の特性に応じた教育方法等は継続して進めることが必要であると思われる。特に一人ひとりの教育的ニーズに応じた取り組みは、盲学校ではすでに実践されてきているところである。

「特別支援教育」がめざすものが何なのか真意が不明確な点があるが、これまでなかったものが新たに明らかにされたことがいくつかある。

  1. 教育、福祉、医療等が一体となって乳幼児期から学校卒業後まで一人の障害者と保護者等に対して一貫した相談支援体制を整備するとしている点。
  2. LD、ADHD、高機能自閉症等発達障害児に対する教育を表舞台に押し上げたこと。
  3. 特別支援教育コーディネーターを盲・ろう・養護学校のほか各小・中学校にも配置し、校内や教育機関、福祉、医療、労働、保護者等との連絡・調整等にあたる。
  4. 市町村教育委員会に就学指導委員会を置き、客観的な立場から専門的な助言を行う。

等があり、その実現が望まれていたものが多い。

文部科学省は、「特別支援教育とは、これまでの特殊教育の対象の障害だけでなく、その対象でなかったLD、ADHD、高機能自閉症を含め、障害のある児童生徒に対してその一人一人の教育的ニーズを把握し、当該児童生徒の持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するために、適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うものである」と定義している。

「盲・ろう・養護学校」が全学齢児の1.5%程度あり、先に文部科学省が委嘱して実施した全国調査で「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒」は6.3%あったという。特別支援教育の対象となる児童生徒の数が合わせて7~8%に広がることになる。

障害児教育の新たな建て直しとも言える「特別支援教育」をすすめるためには、1.~4.に挙げた各種体制づくりと、人的支援体制の確立、障害の特性に応じた専門性向上のための各種研修や研究、始まったばかりのLD・ADHD・自閉症児教育の専門家の育成や資質向上のための各種研修など枚挙にいとまがないと言える。

約1千に及ぶ盲・ろう・養護学校と3万近い小中学校に配置するとしている、特別支援教育コーディネーターの育成は、その重要性や業務範囲の多様さだけみても、対象者への研修等を一度だけで終わらせないでほしい。

毎年、特別支援教育推進連盟加入の各団体が予算要求しているが、未解決の要望が山積している現状をみるにつけ、別途関係諸団体の声を聞く機会を保障してほしい。

最近、三位一体改革の名の下に教育費も一般財源化しようとする論議も出ているが、新たな教育改革と言える、この大切な時期に、地方任せの一般財源化では、教育の地方格差の拡大につながり、国の責任を放棄するものだという声もある。

(諏訪勝三(すわかつぞう) 全国視覚障害児(者)親の会会長)