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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年10月号

ほんの森

特定非営利活動法人・大阪障害者雇用支援ネットワーク編
障害のある人の雇用・就労支援Q&A

評者 松井亮輔

本書は、障害者雇用のさまざまな具体例やノウハウを含む、ガイドブックとして1997年に出版された『障害のある人の雇用促進と就労の安定を図るために―実践と展開Q&A』を、その後の社会経済動向や労働市場動向、ならびに障害者雇用制度の変化などを踏まえ、その内容を大幅に増補・改訂したものである。

本書の編集にあたった大阪障害者雇用支援ネットワーク(代表理事・関宏之大阪市職業リハビリテーションセンターおよび大阪市職業指導センター所長)は、「大阪の障害者雇用を日本一に」(1995年の連合大阪第7回定期大会における前川朋久前会長就任演説の一節)を実現させるために、障害者の雇用・就労支援に熱心に取り組んでいる事業主、労働組合、支援機関および労働行政関係者等が集まって1996年3月に設立。2001年には特定非営利活動法人に発展したものである。

同ネットワークは、その発足以来、障害者の職場体験実習、企業をベースにした職業訓練である「インターンシップ」、インターンシップ実習中に支援にあたる市民ボランティアである「就労支援アドバイザー」養成と派遣事業、障害者就業・生活支援センター支援、ならびに障害者雇用に関する企業相談や情報提供などを積極的に行ってきている。因みに、厚生労働省(当時の労働省)が1999年1月から2001年3月まで実施し、障害者雇用機会の創出に大きな成果を上げた、「障害者緊急雇用安定プロジェクト」(1か月間の職場実習と3か月間の試用雇用がセットになったもの)は、同ネットワークが創始したインターンシップをモデルとしたものであることにも象徴されるように、同ネットワークの試みは、全国的にも少なからぬインパクトを与えてきている。

本書は、そうした事業に直接携わってきた、障害者雇用・就労のさまざまな側面を熟知する支援機関、労使および労働行政関係者等により分担執筆されているだけに、障害者雇用をすすめるうえでのヒントが随所に見られる。

わが国の障害者雇用は、「雇用率制度」を柱としてすすめられているが、法定雇用率1.8%に対し、実雇用率はいまだ1.5%にも満たないといった現状を改善するには、企業現場での取り組みを支援する、地域の支援ネットワークがいかに重要かを大阪障害者支援ネットワークは、雄弁に物語っている。その意味では、障害者の雇用・就労支援をすべく地域ベースのネットワークづくりをめざす関係者をはじめ、障害者雇用・就労に何らかの形で関わる方々にとって、本書はまさに必読のテキストであり、ぜひ指針として活用されることをお勧めしたい。

(まついりょうすけ 法政大学現代福祉学部)