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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年12月号

当事者からの意見

腎臓病の立場から
腎臓病における更生医療と障害認定の諸問題

金子智

腎不全の治療法である人工透析は、昭和42年に医療保険の適用を受けたが、当時から非常に治療費が高額であり健康保険本人以外(健康保険家族、国民健康保険)は、高額の自己負担をしなければならず、多くの腎臓病患者が医療費の負担ができないことを理由に治療を受けられず亡くなっていった。

翌昭和47年に腎臓病患者が身体障害者福祉法の適用を受け更生医療が使えるようになると、医療費の自己負担が少なくなり、多くの腎不全患者が人工透析を受けられるようになった。それと前後し、都道府県単独の重度障害者医療費助成制度でも徐々に人工透析が助成対象となり、腎不全患者の多くは自己負担なく人工透析が受けられるようになった。

昭和59年に健康保険法「改正」により健康保険本人1割負担(本則2割負担)が実施されると同時に、人工透析については「長期高額疾病にかかる特例」により月額1万円以上が高額療養費として医療保険から給付されることになった。

この制度ができてからは、都道府県単独の重度障害者医療費助成制度のみを利用する患者が増えた。その結果、患者も医療機関側も更生医療に「無関心」になり、その状態が今日まで続いてきた。しかし、今日の国、地方自治体における財政問題で重度障害者医療費助成制度の後退がすすみ、改めて更生医療を利用する患者が増えてきている。そのような状況の中で、厚生労働省の「障害福祉サービス法」(仮称)で検討されている更生医療制度の見直しについて当会は、重大な関心を持って、その動向に注視しているところである。

腎臓病の障害認定基準については、問題点として近年、腎不全患者の構成が大きく変わってきているところである。以前は、透析導入患者の原疾患は慢性糸球体腎炎などが中心であったが、近年は糖尿病性腎症からの透析導入患者が増加しており、昨年の透析導入患者の41%が糖尿病性腎症の患者である()。

その結果、従来の「腎臓疾患」を基準とした認定基準では、糖尿病性腎症患者の障害認定にあたり、時に障害等級が低く(3級)認定されることがある。その場合、自治体の重度障害者(1、2級)を対象とした医療費助成制度などの福祉サービスが受けられない状況が危惧される。

また、国から地方への権限の移譲に伴い、県、政令都市、中核都市が一定の裁量で障害認定ができるようになった。そのような中、某県とその県内の中核都市では腎臓病の認定に違いが出た。この件は、県と中核都市で協議し解決したが、今後もこうした事例が起きることが懸念される。

当会としては、地域での格差がなく全国どこにいても同じ福祉サービスが受けられることを重要視し、今度も患者運動に取り組んでいくところである。

(かねこさとる 社団法人全国腎臓病協議会理事・事務局長)

「図説 わが国の慢性透析療法の現況」(2003年12月31日現在)社団法人 日本透析医学会