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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年2月号

民間からの評価

知的障害者の立場から―「人として普通に暮らす」理念の実現へ

仁木雅子

「グランドデザイン案の評価」を1000字でと依頼され、諸課題が多様にある中で、残念であるが視点を絞らざるを得ない。

基本的課題は「福祉国家としての理念」形成である。

(1)「財源確保ありきの改革」ではなく真の「福祉国家実現への改革」とするためには施行期日の見直しも必要である。社会保障審議会障害者部会の審議資料が次々発表され平成16年12月27日付では、第1期障害福祉計画で、利用者負担の見直し、在宅サービスに係る国都道府県の義務的負担化に関する事項の施行期日を平成18年1月、施設事業体系へ段階的移行、地域生活支援事業の実施等10月としている。障害者も、実施主体の地方自治体も十分理解、合意ができていない現状、1年後の実施は無謀であり、地方自治体の実施準備の財源確保・時間不足からくる制度実施への混乱は必至である。

(2)障害者の実生活の困難性に沿った「人として普通に暮らす」ための障害保健福祉制度の大改革でなければならない。そのために、国際貢献できる経済国のわが国は、障害福祉施策に対して「福祉国家」として予算を組む意識構造改革が必要である。所得を得られない重度障害者の自立生活を国の問題とする視点が今一つ12月27日付案には欠如している。今後、社保審障害者部会委員、全国の障害者運動によって、私たちが願う制度案に近づいたとしても、国が障害者の生活実態・特性の課題の認識不足のままで公平性・効率性の視点を重視した原案を作成したという点で、福祉国家理念の未成熟性が表出した。が、他国の福祉国家としての成熟過程でも、現在の日本のように苦しみせめぎあった時代を越え実現したことを知ると、この施策に対する私たちの歴史的責任も大きい。

(3)「障害者自立支援給付法案」の諸問題のさらに改善すべき点、1.移動支援の介護の定義に障害特性を考慮し知的障害児者も「日常生活支援」の対象とすることが「人として普通に暮らす」ことの必要条件である、2.利用者負担に関して障害者個人単位の所得に応じた負担にし「扶養義務」「世帯」の考えは撤廃すること、3.地域の中で暮らせるよう多くの選択肢整備が必要である。ケアホーム等新規の事業の具体的運営指針の説明が欠如している。ケアホーム一つとっても、利用者数と支援者と暮らす住まいの規模を考えると、発想は良いが日本の現状で実施できるのか。また重度知的障害者の24時間単身生活ケア実現の視点が必要である、4.ケアマネジメント体制の整備強化が絶対条件である。

(にきまさこ 名古屋手をつなぐ育成会理事長)