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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年2月号

民間からの評価

障害者自立支援給付法案に思う

小中栄一

今回、「障害者自立支援給付法案」により革新的な方向を打ち出していくなら、従来のボランティアに依存する制度的課題により、諸問題を抱えている手話通訳事業についても、革新的な方向をめざしてほしいと思う。だからこそ、現在、全日本ろうあ連盟が実施している16~17年度の2年間にわたる長寿社会福祉基金助成事業の手話通訳事業再構築検討事業に期待することが大きい。この事業によって提言されることを元に制度を確立していくことができたらと思っていた。残念ながら、支援費制度の財政的問題と三位一体改革の動きの中で、一般財源化の対案という経過から時間が非常に限られていたため、私たちの検討による成果を反映できないままに法案が作られてしまうという思いが強い。特に、安定した財源確保という厳しい課題は応益負担を導入することになる。応益負担には反対であるが、避けられないならば、納得できる分かりやすい仕組みと真に安定した利用者本位の制度という担保を求めたい。また、社会のあらゆる分野においてノーマライゼーション社会の実現という理想・理念を障害者の立場に立って追求する姿勢を持ってほしい。

ある行政の責任者と話し合ったとき、彼は、今まで窓口にきたろう者の対応で困ったことはないと断言した。筆談で十分に対応できたと言う。しかし、ろう者は手話のできる職員はいないし、手話通訳派遣も利用しにくい、しかたなく一人で来て、自分にできる限りの筆談、口話、身振りで職員の説明を受けた。不本意であり不十分な応対を我慢していた。これを安易に自立していると認識しないでほしいと思う。市町村主体というなら、市町村の行政担当者は「自立」の中身は障害をもつ当事者の立場で検証していってほしい。また、自立のための支援施策は障害をもつ者ももたない者も等しく担うべき社会的な課題であり、応益の「益」は障害をもたない者にも「益」になることを社会的理解として持つべきであると思う。

手話通訳事業が地域生活支援事業における基本事業という位置づけは評価できる。市町村は必ず手話通訳事業を立ち上げていかなければならないという意識を持って、ろう団体からの要望に対応して話し合ってくれるのではないかと期待する。具体的な事業の実施要項については、できる限りの協議時間がほしい。ろう団体と行政との話し合いが欠かせないが、現状では、きちんと要望をまとめて行政に出していけるか、行政との話し合いを継続して積み重ねていけるか、課題が残る。どの地域でも必要とする手話通訳ニーズに同じ条件で応えられる制度的確立を求めていきたい。

(こなかえいいち 財団法人全日本ろうあ連盟手話通訳対策部長)