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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年2月号

民間からの評価

重度障害者の人権保障を求める

佐藤聡

グランドデザインは重度障害者にしわよせした改革案である。なかでも重大な問題点は、国・都道府県の補助制度の見直し、支給決定プロセスの透明化(認定審査会・ケアマネジメント・共通の尺度)である。

今回の改正でホームヘルプなども義務的経費になった。万々歳のように見えるが、実は国・都道府県の義務的経費には上限がある。「障害程度区分ごとに設定される標準的な費用額に利用者数を乗じて算定される額を上限」と書かれている。問題はこの標準的な費用額がいくらになるのかだが、現在は一番重度でも月125時間が基準となっている。このままだと125時間以上の介助が必要な障害者が多い市町村は、すぐに上限を超えてしまう。これでは長時間介助の必要な重度障害者は生活ができない。

支給決定プロセスの透明化自体は全く問題ない。必要な人に必要な介助量が支給され、適正に使っているのがわかるのは良いことである。しかし、今回の案は透明化という名目の元に支給量を減らす方向に働くものではないか。

認定審査会は、介護保険と同じように、医療関係者など自立生活・地域生活に理解のない人が委員になったら、適正な時間数が支給決定されなくなる。「自己決定」「個人のニーズに基づく支給決定とサービス」という支援費制度の理念はどうなるのか。

ケアマネジメントの制度化は、必要な人が使えるのは良いことだが、自分でケアプランを作れる人までもが必ずケアマネジャーを通さなければならないのは問題である。ケアマネジメントは両刃の刃。介護保険でも問題になっているように、人の生活に介入してしまうという危険性を持っている。義務化されなくても今の介護保険と同じように実質的にケアマネジャーを通さざるを得ない仕組みも同じことである。自己決定を阻害し、本人主体の生活ができなくなってしまう。

サービス共通の尺度は、地域生活のニーズに基づく適切な尺度であればいいのだが、支給量を減らすような尺度になったら大問題である。必要な人に必要な時間数がでない。

私たちは必要以上の介助や贅沢を求めているわけではない。人権のある生活、そのために必要な制度・政策を求めているだけである。健常者が自由に生活してよいように、障害があっても同じ生活をしてもよいはずである。貴方が持っている人権を、私たちは求めてはいけないのか。厚労省にも、重度障害者の人権を保障しようと考える職員は必ずいるはずだと信じている。

(さとうさとし メインストリーム協会事務局長)