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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年2月号

民間からの評価

難病重度障害者に福祉の保障を!

松本るい

私の立場は、難病ALS人工呼吸器装着、在宅療養の夫の扶養義務者である。そして日本ALS協会秋田支部の相談係でもある。

事例1 夫は50歳でALSに罹患、闘病22年、そのうち人工呼吸在宅17年目である。ALSは、体は重度障害でも頭は正常、意欲的でリハビリ、意思伝達(パソコン)、外出支援など活動的な要求が多く、介護に慣れた自選ヘルパーを24時間頼み、公的ヘルパーを組み合わせて介助してきた。お蔭で22年間、何とか米作農家の経営主として励むことができた。

事例2 介護保険要介護度5でも、訪問介護は毎日4時間程度。これでは重度障害者は生きてゆけない。何とか支援費をと、昨年秋田支部では患者各自、自治体に申請をした。わが家でも車いすで村役場に陳情すること3回、ようやく認められ、月90時間の支援費がついた。そして7月から事業所も開所、自薦登録ヘルパー方式で運営、少しながら改善した。

しかし、秋田県内同病者の場合、町村差があり、サービスの利用は低く抑えられ、進展しないケースもあり、何とかしなければと当惑している。

グランドデザイン案を読んで、私が注目し熟読したのは、「極めて重度の障害者を包括的に支える仕組み」の標題である。「基本的な考え方」として、利用者のニーズを大切に臨機応変な対応ができること、またサービスの種類や量を自由に設定できるなど、患者側の要求に適応する考え方はとても有り難い。

また、対象者のイメージとして「身体:ALS等の極めて重度の障害者…」と、ALSを明記した表現は印象的で、当事者としては改革への期待が持てそうに感じる。

問題は包括的報酬の量であるが、低い一定額にならないことを、くれぐれもお願いしたい。その理由は、ALSはいまだに原因も治療法も究明されていない。罹患すれば患者は特効薬を待ちこがれ、進行する障害におびえ悩む。事例1のとおり、近年は介護があれば、人工呼吸器を着けて生きてゆける時代になったが、24時間介護の保障がないことが最大の悩みである。せめて、ALSの治療法が究明されるまでは、特定疾患医療の保障のように特定疾患の福祉も保障してもらいたい。その保障として、この包括的報酬を実施されれば、事例2のような自治体差は解消すると思う。

そうなれば、日本のどこに住んでも、恵まれない境遇に置かれても、患者は安心して人工呼吸器を着けて生きる道を選択できる。

(まつもとるい 日本ALS協会秋田支部)