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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年12月号

座談会 障害者自立支援法の成立と今後の障害保健福祉施策

下郡山和子(しもこおりやまかずこ)
(仙台つどいの家施設長)

高橋紘士(たかはしひろし)
(立教大学教授)

田渕規子(たぶちのりこ)
(自立生活センター・東大和事務局長)

又村あおい(またむらあおい)
(平塚市健康福祉部障害福祉課)

司会:藤井克徳(ふじいかつのり)
(きょうされん常務理事、本誌編集委員)

障害者自立支援法の成立をどう見るか

藤井 10月31日に「障害者自立支援法」が衆議院で成立しました。この法律の下でさまざまな施策が講じられて、障害のある人たちの生活もだいぶ変わっていくだろうと思います。本日は、障害分野に関係して、かつ立場が異なった方々にお集まりいただき、この法律の全体的な評価、障害をもった人たちへの影響、これからの課題を中心に意見を深めていこうと思います。

最初に自己紹介の後、この法律の成立をどう見ているか、概括的な評価からお願いいたします。

▽障害者の「政策」が初めて確立

高橋 もともとは地域福祉を勉強しておりますが、障害の問題もいろいろな機会に勉強させていただく機会が多かったので、障害者自立支援法の審議会などにかかわるのは必然だったかと思っています。いまは介護保険と自立支援法にどっぷりつかっております。

私はかねがね、障害者自立支援法は基本的には支援費導入のときにやるべき政策だったと思っています。支援費は従来の措置制度を契約制度に変え、できるだけ自分でサービスが選択できるようにして支援費で補足するという制度ですから、サービス全体の体系やシステムを変えたうえでないとできなかったと思っております。

支援費導入で最大の失敗の原因は、サービス需要の伸びの予測作業が十分に行われていなくて、従来の何割増しの予算を手当てすれば、ニーズが吸収できるだろうという非常に甘い見通しだったことです。身体障害者福祉法、児童福祉法、知的障害者福祉法のつぎはぎの体系をそのままにして、単にサービスの利用形式だけを変えた改正でした。自立支援法は、いままで手つかずだったサービス体系や施設体系を再整理することを目的としたということで評価できます。

さらに、自立支援事業と地域生活支援事業など4つのサービスの構造体系をつくり、共通部分は身体・知的・精神の障害サービスを統合するという点で、画期的な内容を含んだ法律だと思います。いままでは障害者の「対策」でしたが、この法律で障害者の「政策」が確立したと思います。そのうえで、この政策の方向は、厳しい財政状況のなかで障害者サービスを拡大することを目的としています。一般的には抑制するためだと言われていますが、厚生労働省のいろいろな推計を見ると、これから伸びていくことを前提に制度を組み替えるならどういう選択があるかということで、定率負担の問題が入ってきました。

いままでの障害者対策は所得保障とサービス保障が渾然一体となって作られていましたが、二つ保障の体系を分離して、サービスについては定率負担の仕組みをつくり、所得保障は補足給付という形で対応することが入ってきています。逆に、障害者の所得保障制度の不備や課題、問題があぶりだされてきました。私は、所得保障の問題について、年金問題のときに障害年金の水準について議論されなかったという印象を持っています。この法律は、個別にはいろいろな課題があるとしても、次のステップを準備するたいへん重要な改革だと考えています。

▽重い障害の人の支援を懸念

下郡山 私は重症心身障害児の母親で、娘は42歳になります。娘の就学保障運動から私の社会化が始まりました。1975年に「仙台市重症心身障害児(者)を守る会」をつくりました。その後、小規模施設を3つ立ち上げました。平成4年に法人を取得して、平成5年から「仙台つどいの家」を始め、レスパイトサービス、B型通園事業、デイサービス事業、相談事業、ヘルパー派遣事業などを行ってきました。

自立支援法は、障害別ではなくて一元化されたことは評価しています。逆に障害程度別に区分されたことで、重度だからしょうがない、ケアホームに行けばいい、自立は無理だという形ができていくことを非常に懸念しています。また、生活介護と自立訓練に分かれていますが、自立の概念がはっきりしていません。介護とは、援助とは、支援とは何なのか。人に支援を受けながらも生きていくことが自立だとされ、ありのままで生きることも大切だと考えてきましたが、それがどこかに消えています。

どんな重度の人も一人の人間として大切に考えてほしいと思います。私の施設にいる人たちは、言葉もほとんどしゃべれない人たちですが、言葉でないもので毎日コミュニケーションをしています。日常の意思決定について言葉で表現していなくても、自己決定はしていると私たちは捉えるのですが、そういうコミュニケーションのための支援はどこにもないのです。

▽税金を使った介護保険

又村 平塚市役所障害福祉課に6年半在籍して、主に障害福祉計画と障害のあるお子さんの支援全般を担当しています。障害者自立支援法の施行準備もしていますが、市町村の立場からと個人的なお話も少し入れさせていただければと思います。

簡潔な言い方をしますと、現場としては「税金を使った介護保険」という評価になるのかな、と考えています。たとえば月額の上限負担の設定や、介護給付の審査会にかかるまでの流れなど、すべて介護保険にならって制度設計がされていると思いますから、現実的にはわからないことは介護保険の担当部署に聞くという方法で準備をしております。高橋先生がおっしゃったように、この法律の施行で大きな転換が図られ、いい面も出てくると思いますが、時間的な短さとていねいさに欠けることが当事者の方に大きな不安を抱かせているのではないかと感じています。

その意味では、市町村の現場で当事者の方の不安が払拭できるような、多少言いにくいことでもきちんと事実を言う形で情報提供を進めていくことが、現時点では重要だと考えています。厚生労働省は、そのための必要な情報をできるだけ早く提供していただきたいです。全体的な評価としては、多くの自治体職員は将来の介護保険の一本化も見据えながら、制度のフレーム部分を合わせてきたのではないかと考えていると思います。

▽予算カットで出てきた法律

田渕 私がこの世界にかかわったのは8年ぐらい前からで、主に障害をもっている方の自立支援をして4年経ちました。支援費の居宅介護など地域の福祉をいろいろ行っています。支援費は現場では事務的な仕事が多く、何をやっているのかと思っていたところに、障害者自立支援法が成立して、一利用者として自分の身に降りかかってくる部分もたくさんあるので、不安な状況です。

自立支援法は、いままで制度が整備されていなかった精神の方が入るとか、いいところがいくつかありますが、そもそもこの法律は国の予算カットから出てきたと思います。そう考えたときに、支援費が始まった2年前までさかのぼって考えなければいけなかったのではないかと思います。

私も支援費の一利用者で、いまは市の障害福祉課でこういう形で使いたいと1週間、1か月の申請をして支給決定されます。季節の変化や体調のいいとき悪いときなどで、使いたい時間や流れが変わってきますが、使い残したらカットされることもあります。知的障害の方がガイドヘルプを使えるようになったことは、福祉がよくなったと思うのですが、そういうことを国が考えないでの見切り発車だったと思います。そのツケを私たちがなぜかぶらなければいけないの?というのが、私個人の考えです。

▽定率負担に異議あり

藤井 懸念されるのは、応益負担、医療と福祉の共通化、児童と成人の共通化の問題などです。応益負担、定率負担制度をめぐっては最後まで争点になりましたが、今度の法律で懸念される象徴的な事項です。定率負担についてはどのようにお考えですか。

田渕 私のような脊髄損傷者の多くはすでに一般就労していて、自立生活センター系で働いている人がいないくらいです。1割負担が出てきたとき、たとえば私が普通の暮らしができるような収入が得られているのであれば、これからは行政と一利用者とのギブ&テイクで仕方がないのかなとも考えたのですが、働けないから、どうなるの?という人が多いと思うんです。もう一つは、私はサービス提供者という立場ですが、飲んだり食べたりお風呂に入ったり、最低の生活をしていくことがサービスなのかと思います。サービスを受けているならお金を払わなければいけないという発想だとしたら、何がサービスなのかをとことん議論していただきたいと思います。

支援費になって前進したのは、世帯での負担が軽くなって使う人が多くなったことですが、私のように配偶者がいたり、同居の子どもたちが収入を得てくると負担が発生します。家族の負担が発生してくると、本人は使いたくても家族の意思によってストップがかかる可能性が出てきます。この2年間で社会参加の場が広がったのに、一歩後退する状況が起こってくると思うので、定率負担についてはノーと言いたいです。

下郡山 私は、みんなが払うものは払って初めて一人の人間として認められると思っていましたから、深く考えずに「負担はいいわよ」と思っていました。ですが、6万6,000円、8万3,000円の障害年金の中から計算していくと、上限が4万200円だとすると、いいものを着たり、楽しみに使うお金はほとんどありません。減免措置を考えたと言いますが、社会福祉法人減免は預貯金者が一定額以下の人を対象としています。通所の人たちは、親が住居や食費を提供してきました。そして子どもの行く末・将来が不安なので、爪に火を灯すようにして一生懸命貯金してきました。マル優制度は350万円までですから、ほとんどの人が、一定額の貯金を超えて減免対象にはなりません。障害者は保険にも入れません。病気などに備えての貯金です。入所の人には、食事に着る物を保障してきていますから、かなりの額を貯金できているはずです。それなのに、地域移行にあたっては、親に負担をさせないと言っている。一方で、通所の人たちは、親が負担せざるを得ない状況に追い込まれているのです。親が年金暮らしになっても続くのです。

グループホームの負担がかなり少なくなったのは、施設の人たちをグループホームに出すための施策で、通所の人たちがグループホームに入れるための施策になっていません。

藤井 サービス保障、所得保障の問題の兼ね合いとおっしゃいましたが、障害をどう見るか、現に働いていない障害者がいちばん割りを食うのではないかという問題も含めて、どうお考えですか。

高橋 まず若干データのお話をしたいと思います。昨年11月に厚生労働省が障害サービス給付額の将来推計をしたとき、給付総額は約9,700億円、利用者の負担増は1,000億円で、入所で650億円、居宅で300億円という数字でした。ある意味では運動の成果だと思いますが、グループホームの個別減免が入り、入所者の手許金は1万5,000円を2万5,000円にするという措置が入り、事業費ベースでは522億円程度と推計して、実質1割負担がかなり削減されています。これに社会福祉法人、できればNPOまで含めようかという議論があり、減免制度は相当進んできていると思います。個別の議論としては、一人ひとりに負担が発生して心配だという意見はありますが、マクロベースでは1割負担がかなり縮小してきていることは、事実として評価をしておく必要があると思います。

もう一つは、上限付きの負担と生活保護の人は無料という意味でいえば、応能負担的な要素の入った定率負担だと思います。これは逆にいうと、市町村は事務量がたいへん複雑になるので、つらいなということはあると思います。厚生労働大臣の「できるだけ個人単位にしていく」という発言があったと聞いております。不足だという議論があることは十分承知していますが、定率負担の問題点をできるだけ回避するような制度的な裏付けがされてきたと思います。

第二点は、衆議院の附則で、所得保障の確保が入っています。厚生労働省内にワーキングチームができました。定率負担が可能な所得保障の水準をどう考えるかの議論は、論争ではなくて政策論になろうとしていますから、早い時期に議論をつめていく必要があると思います。障害者の所得状況のデータ調査を早くきちんとするべきで、それに基づいてあるべき姿の議論をしなければならないと痛感しています。

▽地方に負担を押し付け

藤井 地方自治体からみて、急に変わることについてはどう考えますか。

又村 事務的には極めてタイトなタイムスケジュールで、おそらく無理です。高橋先生がお話されたような個別に減免する仕組みは非常に細かい場合分けがされて、説明するだけでも非常に時間がかかって、なおかつご理解いただくのにむずかしい部分がある制度になっています。こういったことも、事務的には市町村にかかってきますし、施行準備にかかる事務費もすべて市町村が持ち出しです。国費ベースで500億円強の削減を計れると話されましたが、一方で、それが必要な支出であるなら異論はありませんが、日本全国で考えれば、おそらくその数倍、へたをすると10倍近い金額が施行準備のために使われているはずですから、スタート時点ですでにお金の面でマイナスを背負っている部分は大きいと思います。

市町村が主体となって事業を実施していくことがかさんだ結果、市町村が倒れてしまったら、日本が倒れることを意味すると思います。厚生労働省にはこれだけスピードを速めなければならない理由があるはずだと思いますが、地方に負担を押し付けすぎているのではないかという印象はぬぐえません。

▽審議会での不十分な議論

藤井 審議をしていく過程で、社会保障審議会は報告に時間をとって、審議が少なくて、ほんとうに機能したのか、当事者が入っていたのかという批判があります。審議のシステムについてはいかがですか。

田渕 障害者自立支援法は、障害者の生活にかかわるすべてのことです。障害者の生活を見ている人、自分の兄弟や友達にいたという人が、審議会に何人いたのかと思います。人の生活にかかわることをなぜ知らない人が決めているのという不思議な感覚になったときがありました。

高橋 障害部会には当事者委員も当事者団体の代表もいらっしゃいます。それにかかわる医師会や福祉などの事業者団体もいらっしゃる中で審議をしてきましたが、議論を詰めてやる時間がなかったのは確かです。審議時間がなかったのではというご指摘を受けるのはよくわかります。

法の施行に当たって問われるもの

▽政省令、要綱、通知を早く

藤井 ポジティブな面、ネガティブな面がありますが、障害者自立支援法は、在宅関係が来年4月から、事業関係は来年10月から施行されます。市町村の準備では、何が問われていますか。

又村 実は今年5月に障害保健福祉部から21ページもある政省令事項についての資料が出ています。つまりこれだけの事項が政省令という形で出されて、その政省令に基づいて要綱や通知が出されてからでないと、市町村では実務的な対応ができません。いまの時点で政省令はある程度できているのだと思いますが、何らアナウンスがない状況ですので、今後相当なスピードで情報開示をしていただかないと、物理的に間に合わないというのは全国どこの自治体でも一致した認識ではないかと思います。

政省令にこれだけ委ねられていることは、法の骨格は法律で決めるにしても、厚生労働省の考え、ひいては国民のみなさんの考えで、内容については運用上で対応できる部分がまだ残っていると期待を込めて言えなくもないと思います。そういう意味では、より実の上がる政省令事項が出てくることを期待しています。現場からは、とにかく急いでくださいと言いたいです。

藤井 運用部分では、柔軟性、拡大的な適用を含めて、法律以上の可能性があるのではないかということですが、細かな決まり事はこれから出てきます。注文はありますか。

下郡山 不安がたくさんありますね。一つは行動援護です。多動で重い障害のある人も、手厚い支援をすることで落ち着いてきていますが、それは1対1での人的配置をして本人に寄り添う支援をすることで変わるのです。行動援護に定めているのは、20点以上ですが、20点は仙台市全体でも2~3人しかいません。8、9、10点の人たちにもきちんとした行動援護をしないと、行動障害が出てきます。1対1の人的配置が必要です。また、みんなと一緒に通所することも必要です。そういう人たちにどれくらい援護の費用が出てくるのか。重度包括支援もどれくらいのお金が出るのかわかりません。また、重症心身障害者通園事業(B型)は、重い障害の方が在宅生活をするうえで、とてもいい制度だと思いますが、今後どうなるのでしょうか。

もう一つは、ケアホームがミニ入所になるのではという思いがあります。重度心身障害の人も自閉症の人も、家庭的なグループホームで生活したいと準備を始めたのに、その辺の定員やお金がどうなるのかが全然見えません。また、障害程度区分の審査会は、生活を知っている人の意見が反映されなければ困ると思います。

政省令でと言われると不安です。最後のほうで、これで決まりましたと切られてしまうのか、いや厚生労働省の人も一生懸命考えてくれて、先生方もたくさんいるからいいほうへ行くだろうという思いとで揺れています。

田渕 私が住んでいるは立川市ですが、両親が住んでいる東大和市で、地元のネットワークを使って事務所をしています。立川市はいままでは財政に余裕があり、カリスマ的な障害者がいましたから制度もそれなりに充実していましたが、東大和市はサラリーマンが主で、市にお金がないのもわかっています。国に働きかけても結局は決まってしまうのだという思いと、逆にこれからは市町村と十分に話をして、又村さんがおっしゃったようにそれぞれで拡大解釈できる部分もあると思うので、市がどういう福祉計画をつくっていくのか、アンテナを張っていかないといけないと実感しています。

市町村の審査会ではいくつか不安な部分があります。重度の人は24時間何かしらのヘルパー制度などがないと生きていけないのはわかると思いますが、私は手は使えますので、家の中では高さのバリアはありますが、工夫があれば生活していけます。その人の生き方、望んでいる生活がきちっと反映される支給決定の仕方を市町村で考えてほしいと思います。そうでないと、私は1種1級ですが、ある意味で狭間の障害者になって行くだろうと思っています。

▽カギとなる市町村の取り組み

藤井 政策は、立法、政省令、通知等に予算があってできあがります。政省令が出て、予算までみて本物かどうかがわかるのですが、どうなりそうですか。

高橋 法律の次に政省令が出されて、そこでまたいろいろな議論が行われると思います。政省令では、たとえば重度訪問介護はどういう位置づけになるのか。また、予算は財務省とのやりとりで全体の枠をどう見るかで決まってくるので、介護報酬にどう跳ね返って、包括払いの数字をどう考えるかはギリギリにならないと出てこないと思います。義務的経費になったとしても、その水準が厳しいことは確かです。そこをどうやり繰りするか、運動体の立場からはどう確保させていくかになると思いますが、その辺の議論はこれからが本番です。

地域政策として障害者政策をどう再構築するかは、単に障害福祉サービスだけではないので、市町村の取り組みは重要です。又村さんは6年やっていらっしゃいますが、地域の事情をよく知っている行政マンがいるかいないかの格差がこれから開いてくるので、その辺への働きかけは重要です。介護保険は大改革でしたので、従来の福祉の時代には考えられなかった人材を投入しました。そういう決断を地方自治体がするかどうか。障害の固有の課題を体感できるような行政マンがどれだけ障害福祉の現場に張りついて計画ができるか。聞こえのいい言葉を並べた障害福祉計画からこれだけのサービスを確保しますという福祉計画にしていくことは市町村に義務付けられましたから、内実をどう充実させていくかが大事だと思います。

▽障害程度区分は、全国共通の「ツール」に

藤井 障害程度区分は大きな入り口です。当事者に不安もあるし、市町村も不安を持っていると思います。

又村 介護保険の審査会をモデルとするのは有効だと思いますが、すべての委員さんを横滑りさせてしまうようなことをしますと、下郡山さんや田渕さんがおっしゃった懸念は何も解決されずに、増幅される一方ではないかと思います。少なくとも平塚市では、障害福祉の程度区分を判定することを前提に委員さんを選定することにしていますが、これは最低限必要なことだと思います。

もう一つは、私の業務として、障害のあるお子さんを育てている保護者の方と接することが多いのですが、大人と子どもの統合が本当にいいのか、親御さんからは相当な不安と不満が渦巻いてきています。児童にはこの判定区分は当面適用しないという議論が進んでいるようですが、この法律が施行されて非常な負担になるのは、肢体不自由のお子さんの親御さんだと思います。通園施設に通い、補装具を作って、育成医療を使えば、標準的なサラリーマン家庭であれば、それぞれが4万200円の上限になります。「12万円払わなければならないのですか」と聞かれれば、「かもしれません」としか答えようがない苦しい状況があります。政省令に期待するという意味で、とりわけハンディキャップがあるお子さんに対する視点に丁寧さを期待したい、というのが担当者のレベルでの感想です。

高橋 障害程度区分については、児童を対象とした障害程度区分の考え方は成熟しておりませんので、適切な方法が開発されるまでいままでのやり方を使うより仕方がないと思っています。成人の障害程度区分については、日本で唯一機能しているのは要介護認定の方法ですから、それは使わざるを得ない。身体障害については、去年の調査で0.9ぐらいの相関がありますから、そのままいける。知的障害についてはやや相関が低いので、二次判定のガイドラインをきちんとして修正する仕組みを作ればやれるであろう。精神障害についてはサービスモデルがないので、要介護認定の項目に精神症状とか生活機能の状況を加えたもので補正をかけて、不利益な認定が起こらないような形での整理をしているところです。

11月中には、障害程度区分の暫定的な考え方を公表しますが、3年後には固有のニーズをきちんと反映できるもっと優れた尺度を開発しようと、新しい発想で作業の準備中です。これは「道具」です。介護給付についてのサービスの必要度の尺度としての、国庫負担にかかわる部分を全国共通の尺度にするという意味ですから、従来の障害者手帳などにとって変わる区分ではありません。厚生労働省は、この考え方をわかりやすく示すことが緊急に必要だと思います。

下郡山 細かいところはありますが、障害程度区分はツールであるというのならいいと思います。ただし、障害程度区分が、重症児だからとか、IQがこれぐらいだからこのサービスは利用できないというように使われたり、差別の道具になっては困ります。障害程度区分の作成目的を明文化して、それ以外には使わないことを明確にほしいと思います。

高橋 私は、IQのような振り分けとしての使い方には反対です。いまの支援費で使っている障害程度区分は自治体間でばらつきがあるので、国庫負担基準を扱うには共通尺度を作りたいということで、振り分けのためのものではありません。

個人の必要をどう考えるか。市場サービスは支払い能力があれば買いたい物をどんどん買えることで調整がついていますが、社会サービスは利用する人に原則9割が給付されるわけですから、9割の給付費を負担している人たちがいるわけです。全体の予算が10割、5割カットの時代になぜこの経費だけ20パーセントも伸びるのだと財政当局に言われ続けてきたことがあって、長時間介護で1,500万円を超える方が少数ですが相当数いらっしゃる。それは税金で支えているわけですから、その方々を支えられるのかという課題提供をすべきで、支えましょうという合意が成立すれば、そういう形で制度が動いていくはずです。

下郡山 そういう議論がされたことがないのは、当事者団体や当事者が社会に対して訴える、コミュニティワークとかソーシャルワークをしてこなかったことでもあると反省しています。世論を変える運動をしなければならないと思いますね。

高橋 自立支援法をめぐる当事者の運動は課題提起をしてきたと思いますが、地域で生活するのにどれだけの支援費が必要かという情報を出して支持を求めるというような運動が必要だと思います。

田渕 自立支援法を真剣にとらえている障害者は本当に少ないんです。私のように手が利く障害者で支援費を使っている人がそんなにいないことが問題だと思います。自立生活センターなど当事者運動がほかの障害者に広がっていかなかったから、結局一部の人の問題で、多くの人たちの問題にならなかったところが私たちの運動の新たな課題だと思います。

障害程度区分の問題は、言葉でとらえてしまうと振り分けされてしまうのではないかという感覚はぬぐいきれません。その人がどういう生活をしていきたいのかをきちっと審査会で考えていただけるのかは、高橋先生のお話を聞いても不安はあります。介護保険の審査会が横滑りすることはないというお話もありましたが、介護保険もコンピュータで判定されるやり方がいいのかどうかの問題があると思います。

藤井 みなさんから多く出てくる不安は、オールジャパンの一つのツールとしてはわかる反面、社会資源、サービス基盤が少ない中で、障害程度区分は抑制のためのツールとなりかねないということですが。

高橋 これは、障害福祉計画との関係が出てきますが、あまり議論されてこなかったのは、地域生活支援事業です。コミュニケーション支援や移動介護の相当部分は地域性があるのでそこでやるということですから、どれだけ充実したものにしていけるのかが問われると思います。同時に介護給付についても、障害福祉計画で整備計画を立てることになっています。国の言い方によれば、地域格差を引き上げるために自立支援法という考え方でやると言っています。その辺を実効あるものにしていくための数量的計画を作るのが、最初だと思います。それが出されれば、地域で本当にこの数字でいいのかという議論が上がってきます。そういうような形で底上げをしていく中で、障害程度区分がツールとして使われていくことになると思います。

▽質の高いサービス提供事業者の確保

藤井 市町村障害者計画は義務的ではありませんが、9割以上でつくられ、4割近くが数値目標をもっています。いままでの計画をみていると、数値目標があっても増えるという担保はあるのか、その辺はいかがですか。

高橋 数値目標を作ると、その責任と数値の意味が問われます。もう一つは、事業者をどう参入させるかという議論です。高齢は多くの事業者が参入していますが、どれだけ参入してもらえるかは、当事者も参加しながらのダイナミックな政策過程が必須だと思います。

又村 平塚市では市長の号令の下、「協働」の重要性が言われていまして、障害福祉計画の策定も、当事者の方のみならず、一般公募市民の方にも入っていただいて、ご意見をいただくような形がいま検討されています。計画を立て数値をあげたことに対する責任という意味では、事業所参入をお願いしていかなければいけないと考えています。

平塚市では、支援費が始まるときに障害のあるお子さんのサービスは白紙状態でスタートしましたが、すでに実費で事業サービスを提供していた実績のある施設に職員が足を運び、ぜひ参入してほしいとお誘いをして事業所になっていただいた経緯があります。同じように自立支援法でも質の高いサービスの提供が見込まれる事業所に積極的に事業参入を促していく必要が出てくるだろうと考えています。

藤井 事業所を運営されている下郡山さんは、これに関しての備えはありますか。

下郡山 職員の専門性が大切ですから、職員の専門性を高める研修や、マンパワー育成のために役立ちたいと思ってヘルパーの養成事業などを行っています。また、一般市民に理解してもらうために、仙台市重症心身障害児(者)を守る会という名前で法人格をとったのですが、いまは法人と運動体を分けて、法人は「つどいの家」とし、運動体を「しょうがい福祉ネット仙台」と改めました。高齢の意味もかけて「しょうがい」にして、福祉ネットワークを仙台で組もう、まず地域の中で横のつながりをつくろうと親たちが各区でサロン活動を行っています。

障害のある人たちの暮らしはどう変わる?

藤井 障害をもった人たちの生活水準、政策水準を下げてはいけないことが大きな一つのポイントだと思います。障害者の生活は、この後どうなっていくと思われますか。

▽支えられるか、重い障害のある人の地域社会

田渕 自立生活センターと居宅介護の2つの事業所をやっていますが、人がいないと重度の人が地域で生活するのはむずかしいのに、人の確保がたいへんになってきています。自立支援法の中で、重度包括支援や細かいところはまだ金額が出てきていませんが、どれくらいの単価が出てくるのかが心配です。出てきた金額によっては、鉄道の幹線から外れた東大和市では人が確保できないのではと思います。

職員の養成はものすごく大事だと思いますが、介護や福祉の世界の人離れを実感していて、これから飛び込んでくる人がいるのだろうかという不安があります。施設から地域へといっても、重度の人は15人、20人の人がいないと生活ができませんから、金額が不安なところです。

藤井 今回の新規事業は、就労移行支援や就労継続支援もありますが、いまの案では日払いになりそうで、施設長も非常勤でいいとか、この業界がやせ劣ってくる心配があります。成果主義も適正な範囲ならいいという意見と、障害と成果主義は合うのかという意見があります。

又村 プライベートで地域の保護者の方とお話していると、この法律が成立したことによって、できるのかできないのかという区分の考え方が強くなっていくのではないかと感じます。一つのキーワードは、「就労」です。就労ができる方のためと就労が難しい方のためのサービスメニューに整理されているという印象を受けます。厚労省が就労できる方向けのサービスは、就労ができるなりの支援体制で人員配置も大丈夫だと思っているのであれば、後退の印象を与えてしまうのではないかと懸念しています。

先ほどのお話に絡むのですが、市町村の立場としては、24時間介護の必要な方が地域生活を支援するためには、最も高い障害程度区分でもサービスが提供しきれない分のサービス量を支給決定しなければならない。もし区分間流用が認められなければ、それを越えた部分はおそらく市町村の持ち出しになります。そうなったとき、市町村としてどれだけその負担に耐えられるか、耐えられなければ、24時間介護のサービスは支給決定することができないのかという懸念が現場ではあります。

サービスの後退はあってはならないと考えていますが、財政的な担保が市町村レベルでどこまでできるのか、いまの国庫補助金、今後は国庫負担金がどのようになっていくかが、障害者の暮らしぶりに影響を与えざるを得ないのでは、という認識です。

高橋 現在サービスを利用されている方の問題と、これから新しくサービスを使う、精神障害、知的障害の方、今回は見送られましたができるだけ狭間の人たちもという、おそらく二つの問題があると思います。いまの利用者の問題は、具体的な水準や介護報酬は政省令、通達のレベルがどう決まるかで左右されるとしか言えません。ただ、はっきり言えることは、制度変更は不利益変更を起こしてはいけないのが原則ですから、国は自治体や当事者とも議論をしながら、誠実に方針を出してほしいと思います。

一方で、財政的に逼迫していることは事実です。厚生労働省は、ほかの施策の実現を断念して支援費に回してきたという現実があります。私は、公費制度の限界をここ数年感じざるを得ません。義務的経費になろうとも、自動的にサービスや支援費が増えるとはとても思えないので、不利益な変更は起こらないようにしなければと思います。そこで、支えるに足る支援は何かという議論を地域の中でやっていかなければいけないと思います。

藤井 下郡山さんは、今日は地方代表でもありますが、地方では運動は少なく、サービス基盤は弱いので、重い障害者のみならず、ものを言わない人が割を食うこともあると思います。

下郡山 職員には、政治はすごく大切だといつも言っていますが、若い人は新聞を取っている人が少ないんです。一人ひとりが自分の問題として考える習慣を身につけてほしいです。地方の人は昔、中央に痛めつけられていましたから、陳情、陳情で上ばかり向いてきました。自分の足元で、自分たちで考える習慣が少ない風土がありますから、一人ひとりの自己確立も必要ですし、理解しあうためには地域のまちづくりをしっかりやらないといけないと思います。障害者団体も育成会、守る会、身障協会など縦割りの組織になっていますから、団体間の横の連絡もつくらなければと思っています。また、学校や社協、各関係機関、さまざまな住民運動をしている方々とのネットワークづくりの中で、理解を得ていかなければと思っています。

今後の課題

藤井 政省令、予算も見えない中で不安がありますが、法律のスタート日程は決まっています。こういう課題が残っている、こういう課題に光を当てていきたいなど、現段階での重要課題を話し合っていきたいと思います。政省令にも影響しますので、又村さんからいかがですか。

▽支援を必要とするすべての人を支える仕組みづくり

又村 一点目としては、法律は成立しましたので、よりよい形で施行していくことが重要だと思います。個別の話では、高橋先生もおっしゃったような狭間の方々、発達障害の方々の問題があります。多くの自治体で発達障害のお子さんの療育相談が行われていますが、知的障害のあるお子さんよりも、現行の手帳制度にはなじまない、生活面で課題を抱えたお子さんの比率が増えてきている状況です。こういったお子さんも自立支援法のサービスを必要としている場合があります。そういった方々をどういった形で組み込んでいけるか、3年後の見直しのところかもしれませんが、その課題が一点です。

もう一点は、おそらく今後、障害福祉の施策は、「障害福祉サービス」というくくりですべてを解決することができなくなってくるのではないかと思います。協働の視点で、行政がいままで福祉とはかかわりがなかったようなNPO法人や市民団体も含めて、地域での生活の仕組みをつくる支援をして、地域の生活をするための資源が横に広がっていくような仕組みを作ることが重要だと考えています。

田渕 東大和市も、親の会や通所のデイサービスなど小さなグループはたくさんあるのですが、グループ同士が情報交換することがなかったんです。ようやく、いろいろな立場の人たちが一つの拠点が必要だとまとまってきました。市では第三次地域福祉計画の委員会が立ち上がっていますし、自立支援法の福祉計画の策定が義務付けられていますので、できる限りの数値目標を立てていただいて、実現可能なところで私たちの意見も聞きながらやってほしいと思います。

制度改革では、サービスの低下はあってはならないという高橋先生の話をお聞きして、少し光が見えてきた気もしますが、障害をもっている人だけでなく、すべての人が暮らしやすいまちづくりを考えながら、近所の人とのお付き合いとか、制度ではない社会資源を使いこなしていけるように、私たちも外に出て行かないといけないと思います。制度が充実してくると、逆に狭い世界で生活していることが見えたりします。言っていることが矛盾するかもしれませんが、なかったらないなりにいろいろ工夫をして、生活していく力をつけていけるような地域にしていくことが大事だと思います。

高橋 いくつかの論点があるかと思いますが、財源的に厳しい状況が続く中で、どれだけサービス水準を上げ、なおかつ新しい利用者も使いやすいように、全体の水準を上げていくかが大きな課題だと思います。反論があるのはよくわかりますが、私の個人的な見解では、介護保険を活用して、長時間のニーズについては公費で補足する仕組みへ転換するのが次の課題だと思います。そのうえで、市町村ではいままで障害福祉対策をすべて福祉課が背負っていたところがありますが、どう地域政策の中に織り込んでいくか。自治体はすべての地域住民に責任を持つのが原則ですから、さまざまなハンディキャップをもって福祉サービスを必要とする住民にきちんとした施策を行っていく地域づくりが大切です。

もう一つ、高齢者については虐待防止法ができました。障害者差別禁止法との絡みもありますが、権利擁護の仕組みに本腰を入れて取り組まないといけないと思います。なぜなら、支援費で多くの方は当事者としての契約能力が乏しいのに、支援費制度導入のときに安易に第三者契約を認めた責任は大きいと思います。契約制度に適した権利擁護の仕組みをどう作っていくかは、地域で生活する方には重要です。また、サービス事業者、とりわけ施設の方々には相当な意識改革をしていただかないといけない。ずっと「世話をしてあげている」できましたが、契約制度では当事者がサービスを利用するわけですから、その視点をどう入れていくか等も含めて、課題はたくさんあると実感しています。

下郡山 ノーマライゼーションの実現を考えたときに、課題はものすごくあることに気がつきます。自閉症の方がこだわりの中で触法行為などを起こすことがありますが、警察の人たちに理解されないで刑務所に結構送られているという話とか、移動の問題も交通機関を自由に使える支援さえあれば、違ってくると思います。交通バリアフリー法を作っても、バスの運転手がリフトを使いこなせなかったり、自閉症の人がボタンを押すことに対して叱責するなど、問題はたくさんあります。教育の問題も大きいです。

だれもがいつ人の支援が必要になるかもしれないことも含め、少子高齢化の時代では社会保障の問題がネックになってくるかと思いますが、もっとユニバーサルな社会にしたいと思います。

▽どう活かす、3年後の見直し規定

藤井 グランドデザインが初めて描かれましたが、私はグランドになっていないと思います。基幹的な政策がことごとく欠落しています。一つは、家族負担からの脱却です。せめて厚生労働省の施策は家族負担をなくしてほしいと思います。今回も、最後は家族依存です。二つ目は、所得保障です。

また、ようやく障害者の範囲は検討すると言っていますが、障害の定義はきちんとされていません。知的障害者の定義がまだ確立していないし、精神障害の定義は手付かずで、そのまま使われます。それから、社会的資源の法的な根拠をもった拡充策です。昨年8月に厚労省が素案として時限立法を作ると言いながら引っ込めましたが、基盤整備があまりにも不十分です。こういったことが、今度の法律で抜け落ちていますから、引き続き考えていくべきだと思います。

法案には、3年の見直し規定が入りました。見方によっては、3年間の暫定法です。この3年間に介護保険との統合も消費税も上がってきますから、大きなターニングポイントだと思います。3年間に何をなすべきか。最後に一言ずつお願いいたします。

▽政策を動かす基盤づくりを

下郡山 むずかしいですね。3年間でできるかどうかわからないですが、まず障害者を親と切り離す、一人の人間として認めて接するということで、成年後見制度を含めて権利擁護をきちっとしてほしいと思います。

高橋 自立支援法のもとではいろいろなデータ収集の仕組みを持っていますから、厚生労働省はもちろんですが、市町村でもデータに基づいた障害者施策を推進していただきたいですね。3年間でやらなければならないのは、政策を動かしていく基盤としての仕組みをきちんと確立していくこと。そのうえで、介護保険を活用して、障害固有の特性に応じた部分を自立支援法でやるという方向だと思います。藤井さんがおっしゃった欠落部分を少しでも埋めていく基盤づくりを3年間でぜひやっていただきたい。そういう意味では、国・自治体を通じて政策当局が政策能力のある人材配置を継続してやるべきだとも思っています。

田渕 東大和市は小さな市ですが、市の財政の中でまだまだスリムにできるところはあると思います。国会に行って国会議員が黒塗りの車に乗っている姿を見ると、移動手段なら軽自動車でいいのではと思ってしまいます。国も市も本当に財源が厳しいのがわかれば、私たちもない知恵を絞ると思いますが、本当にないの?という疑問がある中で、自立支援法が出てきているので、この3年間で国も市町村もスリムにできるところはしていただきたいと思います。私たちも、こういう方法もあるのでは、自立支援法のここはいいからと知恵を出し合って、3年間で少しでもいい法律、制度を作っていければと思います。

藤井 基礎データが不備のまま、自立支援法の議論は始まったのですが、民間の側が実態を出していくことが弱かったと思います。法律が施行されたら、民間の側で、こういう問題があります、こういう面は意外といいですよというチェックポイントのようなものを作って、全国の基礎データを蓄積できたらいいと思います。

又村 この3年間の最低限の条件は、制度がスムーズに施行できるように市町村ができる限りのことをやるのが大前提です。そのうえで、高橋先生がおっしゃったような将来的に税金ではない方式でサービスが提供されるのなら、どういう部分が障害のある方にとって固有のサービスで、どういうサービスが共通化できるのか、基盤づくりが重要だと考えています。一方で、今日生まれたハンディキャップのあるお子さんは3年後には3歳になってしまいます。グランドデザインはグランドではないというお話がありましたが、グローバルということであるならば、生まれたときからハンディキャップのある方への支援は、3年間で緊急に解決すべき課題ではないかと思います。

藤井 私は、日本で初めて政治の表舞台で障害者問題が十分ではないにしても、語られたと思います。ぜひ、いい意味で継続していってほしいし、厚労省もいい人材をこの分野に投入してほしいと思います。司馬遼太郎ではありませんが、「この国の形」といったときに、障害者問題はこの国の社会保障の形の原点になっていくと思います。社会にもっとアピールしていきながら、とりあえず3年間は官民力を合わせていいほうに育てていきたいということを結びにしたいと思います。長時間ありがとうございました。