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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年4月号

コムスンにおける障がい者雇用の取り組み

小田知宏

コムスンの障がい者雇用の概要

株式会社コムスンは、従業員数6,454人(常用雇用者)、うち障がい者雇用数83人、雇用率1.87%(2005年6月1日現在)の会社です。総合介護サービスを事業として、1988年に設立されました。現時点では訪問介護事業所数1,176か所・高齢者グループホーム数175か所・有料老人ホーム数12か所を全国で展開しています。また高齢者に対する介護サービスとともに、措置制度の頃から障がいのある方に対するサービスも行っています。2003年4月、支援費制度スタートと同時に、障がいのある方を対象とした「居宅介護サービス」を本格的に展開しています。

障がい者雇用の取り組み

2003年4月の支援費制度をきっかけに、障がいのある方との接点が大幅に広がり、障がいのある方への理解が進みました。事務職の人材不足もあり、事務職として知的障がい者の雇用を始めたのもその頃からです。同僚として障がいのある方への理解を深めることが、ホームヘルプサービスの質の向上にも繋がっています。経営的視点から、法令遵守・社会的貢献のため雇用率達成に全社を上げて取り組んでいます。

雇用状況

現在、身体障がい者67人(視覚障害3人・聴覚・平衡機能障害6人・肢体不自由52人・内部障害6人)、知的障がい者16人(療育手帳重度4人・軽度12人)を雇用しています。配属先は本社14%、各営業所6%、高齢者グループホーム15%、訪問介護事業所65%となっています。

業務内容

身体障がい者の業務内容は、管理職やケアマネジャー、ホームヘルパーです。知的障がい者の業務内容は、事務職・介護補助として活躍してもらっています。本社・各営業所の事務職は、パソコン入力が中心の業務です。訪問介護事業所の事務職は、記録票の仕分け・ファイリング、パソコンへのデータ入力、封筒のゴム印・印鑑押し、電話応対などの業務です。介護補助は、高齢者のグループホームで、食事の準備・配膳・片付け・お茶だしやコミュニケーションワーク、居室の掃除機がけ・トイレ清掃、ホールの清掃・レクリエーションなどのサポートスタッフとして配属しています。

採用基準

当社が掲げる採用基準は次のとおりです。

◎その人が輝ける(お客様・同僚・会社の役に立つ仕事ができ、そのことにより自分の仕事に誇りを持つことができる)

◎給与分の仕事ができる

◎身辺処理の自立、単独で通勤、安全確保・禁止事項の遵守

◎意思の疎通・報告

◎基礎的な体力

自閉症の方の事例

愛の手帳「4度」を所持している自閉症のS・Hさんを紹介します(本人・ご家族了承済み)。

「僕は、2004年10月からコムスンで働いています。原則として月~金曜日の10時から17時まで、パソコンの入力をしています。上司がチェックしたサービス実施記録用紙をファイリングしたり、月末になると終了したお客様から順次、限度額計算をするのが楽しいです。でも、僕が勝手に前月以前のプランを変更したり、パソコン操作をミスしたり、一人で留守番をしているときに勝手に知らない人を入室させたりその都度、上司から注意されることもあります。他にも高橋さん(注、就労支援センターの担当者)が4か月に一度センターに来て、自分の仕事のことや注意されたことを聞いてくれます。分からないことは上司に何度でも聞くようにしています。

僕は、以前勤務していた工場が閉鎖して2003年12月に離職しました。その後、池袋の障害者職業センターや就労支援機関で再就職のための訓練を受け、いくつかの企業を面接しましたが、パソコン入力の仕事があるコムスンに決め、働くことになりました。

給料は貯金をしたり、新聞を購入します。公休日には半蔵門線に乗って、横浜・川崎両市とその周辺のうち1か所を決め、東急バスに乗って世田谷区内に行きます。また趣味は、野球やサッカー、マラソンおよびラクビーをテレビで見ることです。これからも、注意されないように、仕事をがんばります」

S・Hさんの採用までの経緯

当社ではそれまで知的障がい者の採用実績がなかったため、就労支援機関の方にかなりお世話になりました。事前に事業所に来ていただき、仕事の内容や職場環境について一緒に考えてもらいました。職場実習・トライアル雇用を経て本採用をし、採用後も就労支援機関の方に定期的に訪問していただいています。問題が発生してもそのつど早期に解決しています。事業所に本人だけで居る時間もあり、電話の応対・仕事の進め方・来訪者への対応については約束事項を決めています。1.電話の応対は、転送機能を使い外出中の責任者へ繋げる。2.来訪者は、勝手に入室させない、です。

就労支援機関に支えられながら仕事を続ける彼の人柄は穏やかで、素直で、好感が持て、同僚からも好かれ戦力になっています。今後の活躍を期待しています。

就労支援者に期待すること

企業は常にコストを意識しています。仕事内容については企業が指導しますが、就労支援者として障がいのある方の希望と適性を考えて、企業の仕事内容にマッチする方を紹介してほしいと思います。また、てんかん発作や服薬・パニックについてもあらかじめ職場で配慮すべきことをうかがっていますが、生活面を含むさまざまな問題が起きたときに、すぐに対応してくれる就労支援者と関係を築くことが雇用継続の鍵だと思います。当社ではとても良い関係で連携がとれています。

ジョブコーチのためのオフィスワーク・パソコン講座

当社では、障がい者の事務職の方がミスを少なく、かつ効率的に業務を行うことができるように、パソコンでの業務環境にさまざまな工夫を行ってきました。その経験を「ジョブコーチのためのオフィスワーク・パソコン講座」として、今までお世話になりっぱなしであった就労支援者の方たちを対象に勉強会を開催してきました。パソコンを活用することでオフィス・ワークに知的障がい者の就労の可能性が広がります。すでに3回が終了しました。ジョブコーチをはじめ多方面の方にご参加をいただいています(有料)。夏頃に4回~6回を開催予定です。

今後の課題

障がいのある方を継続して雇用するために、家族・関係機関との連携を大切にしていきます。配属先の責任者は、本人の障害特性を把握し、本人と常に密なコミュニケーションを図って、働きやすい職場環境つくりに常に配慮をしていきます。筆者は、全国にある事業所(約1,300か所)に障がいの方が配属できるように、現場責任者の障がいのある方への理解および障がい者雇用についての啓発をしていきたいと思います。

(おだともひろ 株式会社コムスン障がい支援事業部部長)