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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年4月号

列島縦断ネットワーキング【沖縄】

沖縄県における観光のバリアフリー化の取り組みについて

沖縄県観光商工部観光企画課

国内における高齢化やノーマライゼーションの進展などを背景に障害者や高齢者の旅行参加が増加しつつありますが、観光地においても、ハード・ソフト両面にわたる受入体制の整備が求められております。

沖縄県においても官民による沖縄観光のバリアフリー化への取り組みが進められつつありますが、十分とは言えない状況にあります。そのため、沖縄県ではすべての人にやさしい観光地づくりをめざし、平成16年度から「沖縄県観光バリアフリー化推進事業」を実施し、観光のバリアフリー化に向けた取り組みを始めております。

この事業は平成16年度から18年度までの3か年のモデル事業ですが、観光のバリアフリー化は3年間で確立できるものではなく、この事業をきっかけとして継続した取り組みを確立していきたいと考えています。

このたび、本紙に掲載させていただくにあたり、沖縄県の観光の現状や観光のバリアフリー化推進のこれまでの取り組み、今後の取り組み予定を紹介させていただきます。

1 沖縄観光の現状

沖縄県の入域観光客数は、日本復帰の年である昭和47年の44万人から順調に伸び続け、平成17年で550万人と過去最高を記録しており、いわゆる「量」の部分は好調に推移しており、観光産業は沖縄県のリーディング産業と言われています。

本県観光の課題として、いわゆる「質」の部分を高めることにあり「質の高い沖縄観光の実現」すなわち、付加価値と観光客の満足度の高い沖縄観光を実現するため官民一体となった取り組みを進めております。

2 沖縄県観光バリアフリー化推進事業の目的

この事業は、障害者や高齢者の受入体制の整備を主眼において実施しておりますが、そのめざすところは、障害者、健常者の区別なくだれでも楽しめる観光地、観光地のクオリティの向上にあります。

3 推進事業の課題

障害者や高齢者へのアンケート調査の結果、沖縄観光バリアフリー化の課題として、バリアフリーに対する県内の意識の向上、情報提供の拡充、ハード面の適切な整備、ソフト面の拡充、行政内及び行政と民間の連携・協調などが課題としてあげられました。

また、沖縄観光の現状として、より沖縄の魅力を味わうため「団体型旅行」から「個人型旅行」へと移行してきていますが、高齢者や障害者の方は個人型旅行への移行のバリアが多く、今後は「個人型旅行」への移行や「行けるところに行く旅行」から「行きたいところに行ける旅行」に移行することが課題となっています。

これらの課題を解決するため「沖縄観光のバリアフリー化を推進する上での基本的な考え方」をとりまとめ、この考え方に沿って事業を展開しております。

4 推進事業の内容

この事業は、(1)観光バリアフリー化の推進方策の検討、(2)サポーター育成事業、(3)情報提供事業、(4)モニターツアーの実施を柱として実施しております。

(1)「観光バリアフリー化の推進方策の検討」は、学識経験者、福祉関係者、観光関係者の代表者などで構成する検討委員会や実務者、担当者などで構成するワーキンググループ会議を設置して、観光バリアフリー化推進のため、方策の検討を行っております。

(2)「サポーター育成事業」は、観光事業者等を対象に障害者等への接遇セミナー・講習会を開催しております。その内容は、旅行の際にバリアを取り除く接客方法の講義、車いすに乗ってもらうなどの疑似体験、障害をおもちの方に旅行の際に感じているバリアについてのご講演をいただいております。

また、県外のバリアフリー先進地の方々にバリアフリーのまちづくりをどのように確立してきたか、などのお話もいただいております。

さらに、観光事業者等に現場で活用してもらい、接客レベルの向上に寄与するように接遇セミナーの内容などをまとめた「接遇ハンドブック」を作成しています。

(3)「情報提供事業」は、観光施設、宿泊施設などのバリアフリー情報を掲載したサイト「誰でも美ら島ネット(だれでもちゅらしまねっと)」を平成17年10月1日から公開しております。1日当たり平均40件程度のアクセスがあります。現在、視認性の向上や音声機能の追加など機能の拡充をしているところです。(ホームページアドレス http://barifuri-okinawa.org/

(4)「モニターツアーの実施」は、沖縄本島、宮古島、石垣島の観光地を車いす使用者、視覚障害者、聴覚障害者にモニターとして参加していただき、バリアフリーの検証を行いました。その意見として「触って楽しめるものがもっとあればよかった」「適切な案内板がほしい」「旅行先のさりげない介助はうれしい」などの意見が出されました。

これらの意見はバリアフリー化に限らず、観光地の受入体制の整備全般に繋がることであり、観光のバリアフリー化はまさに観光地のクオリティを高めることになります。今後の推進事業に生かしていきたいと考えています。

5 推進事業の成果

観光バリアフリー化の接遇セミナーや講習会などに、のべ約400人の観光事業者等が受講しています。この推進事業のワーキンググループ委員のNPO法人の活躍がマスコミに取り上げられる機会も増えてきており、徐々にではありますが、県内の観光バリアフリー化の必要性の認識の広がりが出てきています。

6 推進事業の今後の展開

18年度も、課題である「県内の意識の向上」や「ソフト面の拡充」のため、引き続き接遇セミナーなどを開催しながら、「情報提供の機能拡充」のため情報サイトの機能を拡充していきます。また、新たに「ハード面の適切な整備」の課題解決のためハード整備セミナーも実施します。さらに、全県的に観光バリアフリー化の継続的なしくみを広げるため、県内1地域で観光のバリアフリー化推進のケーススタディを実施していきます。

沖縄県の観光バリアフリー化の取り組みは、まだまだ歩み始めたばかりですが、県民すべてがケアサポーターになる「誰にでもやさしい観光地」をめざしていきたいと考えています。