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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年6月号

変革・変動は飛躍のチャンス!
市町村合併と身体障害者組織

藤田勉

市町村合併により約40年ぶりに地方自治体は大きく変化し、拡大しました。合併の是非を論ずるつもりはありませんが、私たち障害者団体に与える影響は大なるものがあり、強烈なインパクトでした。わが岡山県においても78の自治体が28に統合されました。

さて、私たち身障者団体はどうしたか、どのように対処すべきか。岡山県身障連合会の経験を通してお話したいと思います。近県のある会長が嘆いておられました。ある中核的な都市が北と南に隣接した二つの町を早くに“吸収”合併しましたが、旧町の運営方法が異なっていて調整が難航し、ついには間に立った市の会長が嫌気がさしたか辞任してしまったそうです。最も恐れていた事態です。障害者団体は財産とか施設中心ではなく、人が基本となっている集まりです。その中心となり有能で意欲的な人材を失ってしまったのです。

私は平成16年当初より合併に関しては、事前のすり合わせを県下の市町村会長にお願いし、岡山県最初の自治体合併は1郡の3町が対等合併で“すんなりと”一緒になりました。3町の身障団体も合体することになりましたが、郡代表の経理面の“不適切?”を追求され辞任交代。何も不正を行ったのではなく、会計処理の感覚が異なり、歴代の監査役も“当然・適切”と40年間やってきたのです。郡会長には、元気を出してくださいと励まし、ようやく役員引退を引き止めました。

合併を甘く見てすり合わせが十分でなかったと反省しています。それからは合併の際は事前の話し合いを積極的に開催するように奨励し、その会合に私はどんどん出かけて行きました。今までの実例を伝え、合併予定団体の実情を、特に会計・財産については包み隠さず話すように、隠すと後で不信の元となり、信頼を失うと“警告”までし、役員人事については我を張らないようにお願いしました。

さて、私が住む人口9万の津山市と周辺の4町村合計人口2万とが合併することになりました。合併半年前に、身体障害者団体の合併に関する“懇談会”を発足。それぞれが同格で話し合い、自由に遠慮なく話せる雰囲気を作り、自治体合併後に協議会に切り替えて具体的協議を始めました。

1.吸収合併でも、初めから指導的にならず、「一緒にやっていくからよろしく」となるまで待ちました。

2.これまでの状況・組織・財政をすべて情報公開しました。

3.「どうせ一緒に持って行かれるのだからと、役員で旅行に行くなどして保有金を浪費するならば、合併前で町村団体の裁量とはいえ、人格の問題になる」とはっきり念を押しました。障害者団体の品位を傷つけ、会員と社会一般の信頼を失うことは厳に慎むべきことです。

4.合併後、幹部役員は積極的に新たに編入した地域に出かけ、実情把握に努めました。

5.有能で意欲ある人をどんどん役員に登用しました。

地方自治体が合併すると、障害者団体もなぜ合併しなければならないのか、今一度、振り返ってみましょう。

1.一つに補助金への依存体質にあり、補助が当然という考え方が定着しています。ノーマライゼーションの理念から補助金のあり方を議論するべきかもしれません。

2.平成の大合併は、当然障害者団体への補助金もその対象になるでしょう。私のところも合併前各市町村からの補助金は合計で120~130万円ぐらいありましたが、悪くすれば5割ほど激減するかもしれません。何とか合併直後の17年度予算は前年どおりに盛り込まれました。

3.私たちは合併が予想される約1年前から、市当局と折衝してきました。新しい自治体がどう動くか、シュミレーションを立てることも必要です。

4.悪くばかり考えないで、合併直後の新首長は新しい施策を実施しようと燃えています。魅力ある障害福祉施策を提案してください。

補助金依存体質から少しずつ自ら事業を行い“自立”する障害者団体に変化し、若い障害者にも魅力ある団体になっていき、ある意味では社会に信頼される良きチャンスが訪れたかもしれません。会長さん方、苦しいでしょうが頑張ってください。

合併に取り残された山間・僻地の極小自治体に言及してみます。人口1千人にも満たない自治体が独立・独歩で進むのは住民自治の大原則ですが、財政力が弱いと地方交付税の切り下げで、真っ先に福祉カットが起こる可能性があります。

自立支援法の基本綱領の一つは末端自治体への権限委譲であり、村役場の少ない職員に調査・決定・実行のすべてがその裁量が委ねられる。行政の遅延や効率の悪さが当然予測されます。そこで私は提案したい。障害者団体の会長さん、隣村の障害者も行政の枠を越えて仲間に入れ、共同体を構成して小さな障害者の会を守ってあげてください。岡山県には広域連合体の身障協会も結成され現実に対応しています。

合併に伴い地方行政委員も変更され新たに選任される場合が多くあります。その委員会のメンバーになり、市町村行政に積極的に参画し、発言をする機会を確保しましょう。特に福祉、中でも障害福祉の委員会には絶対選任されるようになりましょう。この合併の変革の時期を失わないように行動してください。

地方選挙が行われます。障害者団体は中立であるべきと、端からタッチしない姿勢は感心しません。障害者は立派な社会市民であり、選挙という民主主義の基本に無関心であってはなりません。個人的にも関心を持ち、団体の目的・理念に照らして地方政治家のビジョン・人格等をよく判断すべきです。確固とした政治意識を持つことは、団体の発展充実に必ずつながります。これからも合併後の新たな組織・新たな住民意識を逃さず、より強い内容充実した障害者団体に脱皮していただきたいと衷心より願います。

(ふじたつとむ (財)岡山県身体障害者福祉連合会会長)