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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年10月号

障害を越えた相談支援活動へ向けて
―生活保障・サービスとしての地域の窓口―

中村美智子

新たな法の枠組みによって明確化された相談支援

2004年に発表された「グランドデザイン(案)」は、障害保健福祉制度の解体ということで衝撃的な出来事でしたが、障がい(多摩市では障害の「害」を「がい」とひらがな表記)当事者(以下、当事者)をはじめ、障害保健福祉関係者との話し合いや折衝の末、障害者自立支援法(以下、支援法)が今年度の4月から順次施行となりました。さまざまな論議がある支援法ですが、これまで障がい者への相談支援は当事者の力量、もしくは事業所に任せられていて曖昧なカタチであったのが、支援法下においては、市町村事業へ義務づけられたことは評価すべき点ではないかと考えます。

そこで本稿では、「のーま」の精神・知的・身体の三障害の相談支援を通し、支援法下における相談支援についての現状の課題と考え方をお話します。

広域的な地域性としての課題

「のーま」は東京都多摩市にあり、ここを中心に活動しております。「ここを中心」としたのは後でお話しますが、相談支援にとって「広域性」は一つのキーワードであると考えるからです。

多摩市の人口は約14万人で東京都では中規模な地域です。手帳取得の障がい者は、精神障がい者が約450人、身体障がい者が約3400人、知的障がい者が約600人です。

多摩市の施設及び医療機関は、精神障害では作業所3か所、グループホーム2か所、地域生活支援センター1か所(のーま)、医療デイ・ケア2か所、精神科病院2か所、クリニック及び診療所5か所。知的障害では、通所授産施設6か所、小規模作業所2か所、地域デイサービス7か所、グループホーム5か所。身体障害では、通所授産施設3か所、地域デイサービス4か所、重症心身障害者施設1か所、障がい者自立生活支援センター1か所です。さらに公的な施設として、精神保健福祉センター、肢体不自由養護学校、保健所があります。

公的な施設や病院があることから、他市もしくは他県からの利用が多く、広域的な人の出入りがある地域性を持っています。多摩市は市民活動が活発で、それらが障害福祉への新たなサービスとして利用されています。しかし30代、40代の若い世代の方が年々減っており、急速な高齢化が懸念されるとともに、地域を支える「担い手」の充実が求められています。

一般公募から生まれた三障害統合型の生活支援センター

「のーま」は多摩市健康保健福祉プラン(平成13年~22年)において、障がいの種別を問わず、相談及び生活支援の拠点とする施設として設置されました。

運営は、支援法下の「指定管理者」の走りとして、運営委託団体を「一般公募」しました。

公募団体は「のーま」の運営母体である多摩市障害者福祉協会を含め2団体だけでしたが、税金(公金)で運営されることから、サービス決定手段としては大変重要であると考えます。単にカタチや体裁、財政抑制としての機能だけでなく、当事者や事業者の意見を反映し、「利用する側が利用しやすい」サービス提供ができるように、そのあり方や方法などを、しっかりと決めていく必要があると思います。さらに名称も一般公募し、平成14年4月より多摩市障がい者支援センター「のーま」が誕生しました。

「時間と場と空間の確保」と利用しやすさ

「のーま」の根拠事業は、「精神障がい者地域生活支援センター事業」及び「障がい者自立生活支援事業」の2事業です。職員は障がいごとの担当者制を設け、7人の常勤体制と1人の非常勤職員体制で行っています。1人の非常勤職員は、精神障がい当事者であり、自らの体験を生かした相談及び生活支援にあたっています。「のーま」の支援体制をより一層強化する重要な役割を担っています。

施設は、市の健康センターの4階にあり、最寄りの聖蹟桜ヶ丘駅から5分という好立地条件です。さらに広さは200m以上あり、相談室(休養室も含め)として4部屋を確保し、他にスタッフルーム、オープンスペースがあります。

ソフト面では「だれもが利用しやすいように」施設環境を整えてきましたが、常にその念頭においているのが、「時間と場と空間の確保」ということです。これは開所当初に利用された方からいただいた言葉です。利用される方へ安心感を提供するとともに、いつでもこれらを提供できるような施設でなければならないことを、改めて実感させられました。

すきまを埋める役割、つなぐ役割としてのコーディネート力

「のーま」の活動は、大きく分けて相談支援事業及びフリースペース事業です。

相談支援は電話、面接、訪問・同行によるもので、月に約300~400件の相談があります。フリースペースは居場所や交流の場として、1日に約15~20人の方が利用されています。

そしてこれらの事業を利用される方のほとんどが、現状のサービスを「知らない方」、「同じ立場の人とつながっていない方」や「ないものを求める方」などが多く、このことから地域においての「のーま」の役割は、サービス(資源)間のすきまを埋めることや、つなぐ役割を担っているといえます。すべてのサービスを1施設が提供するのではなく、その人に合ったサービスを地域にあるフォーマルなものインフォーマルなものを活用し、提供していくというコーディネート「力」が必要であり、支援法下の障害福祉サービスにとっては重要なことです。

生活保障・サービスとしての相談支援は地域の窓口

コーディネート力は、利用される方が何を求めているのか?何に困っているのか?をしっかりと把握するアセスメントと、それぞれに合った生活を総体的にマネジメントできることが求められており、同時にこれが「相談支援」であると言えます。そのような意味でこれらを実現できる専門職として、社会福祉士、精神保健福祉士の存在は支援法下においても重要な役割です。しかしこれらを担う専門職を「相談支援専門員」という新たな資格として位置づけ、法的な位置づけはなくなりました。このことは深く受け止めなくてはならないと思います。

そして相談支援は「困ったとき」にはいつでも、どこでも受けられるような「広域性」が必要です。障害によっては「近所・友人などへ知られたくない方」「利用しているサービスが多摩市だから」ということで、他市の方が利用しているケースも少なくありません。相談支援体制については、当事者をはじめ障害保健福祉関係者と共に考える場を、現在ある連絡会などを活用し、利用される方のニーズに沿って整備し再編していくことが求められます。

まとめ/障害を越えた市民サービス

これまで「のーま」の活動を通して見えてきたのは、相談支援において「障害が何であるか?」が問題ではなく、「その人が何を求めているのか?」が大切であるということです。そして相談を求めてくる当事者のみならず、地域で暮らす方すべてに対し、常に応えられる体制づくりが求められています。

そこで相談支援は「市民」のサービスであるということを我々が再認識し、相談支援体制を整備していく必要があると考えます。支援法においては三障害一元化の流れにより、障害を越えての「場」が、各市町村でも見られるようになってきました。このことにより、今まで見えなかった課題や問題が顕在化し、新たな発見へとつながっていくのではないでしょうか。

いま、まさしく始まったばかりです。「利用されている方にとって」を主眼に置き、「市民が困ることがないよう」「安心感が得られる」市民のための福祉体制を築いていきたいと思います。

最後に事業者として求められていることは、利用者へ「安定したサービス提供ができる」ように、新たな法の枠組みをしっかりと評価し、市町村や都道府県へ伝えていき、法を育てていくことと、それに伴い新たな施策提言をしていくことかと思います。

(なかむらみちこ 多摩市障がい者支援センター「のーま」施設長)