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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年12月号

ニーズにあった支援とは

新堀和子

はじめに

来年度から始まる特別支援教育の、障害のある子ども一人ひとりのニーズに応じた教育と、乳幼児期から学校卒業後までの一貫した計画による支援は、私たち発達障害をもつ子どもの親としての長年の夢でもありました。

今後は「個別の教育支援計画」「個別指導計画」が作成され、学校での対応がスムーズに行われるよう、また、学校から社会への移行もスムーズに行われるよう、願わずにはいられません。

親の声

現在、モデル校に通う子どもの保護者はどのように感じているのでしょうか。次のような意見が寄せられています。

(1)診断書を持参しても、行動に問題がないので、学校から何の配慮も受けられない。

(2)通級と通常級の行事がたびたび重なり、卒業写真も撮れなかった。

(3)連絡帳が活用されないために、スケジュールの変更が、親に伝わらない。

このような中で、感じ取れるのは、連絡や相談が円滑になされていないということになります。

しかし、学校の先生はとても忙しい現状があります。教員の加配と教育ボランティアによる放課後授業や、アシスタントティーチャー、大学との連携でインターンシップの活用など、各学校の地域性や工夫によって進められています。

また、保護者の声として気になるのが、学校間の格差が生じていることです。スクールカウンセラーを中心として、きめ細かく対応していただいているという声も聞かれます。しかし、学校外とどのような連携を取ればよいのか、親と学校と関係機関が、もう少し具体的に考えられるような場をつくり、お互いの信頼関係から始まることと感じています。また、学校全体で取り組む姿勢も大きな力になることでしょう。

個別の教育支援計画と個別指導計画

個別の教育支援計画と個別指導計画は、保護者と学校関係者との共通理解なしでは策定は進められません。

しかし、まだ保護者の方たちが、この計画書の作成に積極的に取り組む姿勢が見られません。保護者向けの説明や懇談等による理解が急がれます。

また、学級担任とともに特別支援教育コーディネーターが、保護者からの聞き取りをするわけですが、その一方で、連絡の調整をする役割を担うという事情から、一部の親たちからの声として、特別支援教育コーディネーターを専任にしてほしいという要望があります。

いじめについて

最近、親の会の相談の中に、いじめから不登校になるというケースが多く見られます。しかも、いじめの内容が過激になっていることが、気になります。いじめた側が悪いという評価だけでは、根本的な解決にはなりません。特別支援教育の理念を取り入れ、広い目で子どもたちの幸せを願い、学校と家庭の連携で対処することが必要と思われます。

親としての希望

早期からの「個別の教育支援計画」は、見直しをすることで、本人に対する支援の現状や、必要な支援が浮き彫りになります。また、親亡き後の支援にもつながると考えます。

発達障害をもつ子どもたちは、フリースクールや私立学校、養護学校など、さまざまな学校に在籍しています。今後は、公立だけでなく私立学校でも、積極的に特別支援教育を取り入れるよう推進し、支援を必要とするすべての人が、一生涯を通した支援を受けられるよう、取り組みの強化の推進をしていただきたいと思います。

最後に

私たち親は、学年が変わるたびに先生に同じ話を伝え理解を求めながら、常に子どもの人生を思い、親亡き後を不安に思いながら、子育てをしてきました。

現在30歳になるわが子を思うとき、アパートで支援を受けながらの一人暮らしでも、さまざまな困難があります。そのような時の支援は、まだまだこれからの課題かもしれません。しかし、当事者は次々と社会に出て、自立をめざしています。

親としては、「個別の教育支援計画」を活用し、一人ひとりの支援の連携が構築され、地域で支援を受けながらの社会生活が送れるよう、願わずにはいられません。

また、そのためには、この特別支援教育の理念が長期的な取り組みとなり、さらに改革されますよう期待しております。

特別支援教育のキーワードは、“信頼感と連携”なのですから。

(にいぼりかずこ LD親の会「けやき」副会長)