「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年12月号
列島縦断ネットワーキング【埼玉】
職業教育に重点を置いた高等養護学校の開設
小澤嘉昭
1 はじめに
高等養護学校の開設に向けては、「彩の国5か年計画21」(平成14年2月)においてその必要性が位置づけられるとともに、平成15年の「埼玉県特別支援教育振興協議会」において、社会のノーマライゼーションの一層の進展を図るため、高等部における専門的な職業教育を進める観点などから、具体的な検討の必要性が指摘されました。
このことから、平成16年度に設置された「高等養護学校調査検討委員会」から、知的障害のある生徒一人ひとりの職業的自立を図ることのみならず、知的障害養護学校の教室不足を解消するためにも、早急に、高等養護学校を設置すべきであると提言が出されました。
これらを受けて、平成17年度に基本計画を策定し、平成19年度4月に、埼玉県では初めて、高等養護学校が2校開校することになりました。
2 高等養護学校設置の基本的な考え方
(1)教育課程
ア.職業教育に重点を置いた教育課程を編成・実施し、産業社会や雇用関係機関等と連携を図りながら一般就労率100%をめざす。
イ.産業社会のニーズを踏まえた学科・コースを設置する。
(2)教育環境
ア.職業教育に重点を置いた教育課程を編成・実施するために必要な施設設備等、教育環境の整備を図る。
イ.地域の産業社会等と連携し、地域の教育資源や社会人特別講師等の活用などにより職業教育を充実する。
(3)特色
ア.特別支援学校として、他の県内特別支援学校と連携を図り、県全体の職業教育の充実に寄与することのできる、特別支援教育のセンター的機能を果たす高等養護学校にする。
イ.地域連携を推進し、教育活動への支援システムを設け、職業教育を充実する。
3 高等養護学校の紹介
埼玉県立養護学校さいたま桜高等学園の紹介
さいたま桜高等学園は、埼玉県の県庁所在地、さいたま市の桜区に、旧県立衛生短期大学の校舎を全面改修し、また生徒の社会自立に向けて、新たに実習棟や生活ホーム棟、温室を建築しています。
以下に、設置学科・コースのねらいを紹介します。
1.生産技術科
▼農園芸コース……農作物や果樹、花等の栽培や管理を通して働く力を育成する。
▼フードデザインコース……パンの製造や販売、自分たちで収穫した農作物や果物等の加工を通して働く力を育成する。
2.家政技術科
▼福祉コース……高齢者の介護等の方法を学ぶことで働く力を育成する。
▼服飾デザインコース……生地等の染色、衣類・装飾品の製作を通して働く力を育成する。
3.工業技術科
▼木工コース……大型木工機械の操作及び簡単な家具の製造を通して働く力を育成する。
▼インテリアコース……木工機械等の操作及び室内インテリア等の製作を通して働く力を育成する。
4.環境・サービス科
▼環境コース……ペットボトルのリサイクル機械の取り扱いを通して、リサイクル社会の理解や機械操作の基本技術の習得をめざします。
▼メンテナンスコース……ビル等の清掃業務の知識と技術の習得、清掃機械の取り扱いを通して働く力を育成する。
埼玉県立養護学校羽生ふじ高等学園の紹介
羽生ふじ高等学園は、関東地方のほぼ中央の羽生市に、県立高等技術専門学校の校舎を全面改修し、また、全面改修だけでなく、実習棟や生活ホーム棟、温室、体育館も建築しています。
以下に、設置学科・コースのねらいを紹介します。
1.農業技術科
▼農業コース……野菜の栽培及び農耕機械の操作等に関する知識と技術の習得を通して働く力を育成する。
▼園芸コース……草花等の栽培や農耕機械の操作等に関する知識と技術の習得を通して働く力を育成する。
2.生活技術科
▼フードデザインコース……パン等の製造及び販売に関する知識と技術の習得の学習を通して働く力を育成する。
▼メンテナンスコース……ビル等の清掃業務の知識と技術の習得、清掃機械の取り扱いを通して働く力を育成する。
4 週日課等について
授業時数は週約30時間を予定し、その中の半分に相当する15時間程度を「専門教科に関する学習」に充てて、働く力を育成していきます。また、部活動は、生徒の着実な職場定着を支える余暇活動に結びつく重要な活動と位置づけて、ほぼ毎日行っていきます。
産業現場等における実習は、1年次に2週間程度。2年次は2~4週間程度、3年次では4~8週間程度、専門教科の中で実施していきます。
日課表(予定)
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
8:45~8:55 | SHR | |||||
9:00~9:50 | 1 | 数学 | 数学 | 専門 | 保体/情報 | 専門 |
9:55~10:45 | 2 | 専門 | 国語 | 専門 | 保体/情報 | 専門 |
10:55~11:45 | 3 | 専門 | 家庭 | 専門 | 英語 | 専門 |
11:50~12:40 | 4 | 専門 | 家庭 | 専門 | 職業 | 専門 |
12:40~13:25 | 昼休み | |||||
13:25~14:15 | 5 | 情報/体育 | 美術/音楽 | 専門 | 国語 | 専門 |
14:20~15:10 | 6 | 情報/体育 | 音楽/美術 | 専門 | LHR | 専門 |
15:10~15:40 | 7 | SHR・清掃 | 総合 (奉仕) |
SHR・清掃 | ||
(16:00) | 部活動 | 部活動 | ||||
15:40~17:00 |
5 おわりに
両校とも、生徒一人ひとりのニーズにしっかり応えられるよう、1学科16人(各コース8人)の生徒募集を行い、平成18年12月16日(土)に第1回の入学選考を行います。
高等養護学校の開校は、埼玉県民の悲願であり、開設準備室では、多くの県民からの期待を肌で感じています。「一般就労率100%をめざす」という課題は大変重く、労働部局等と具体的な連携の在り方について検討を重ねる等、県民からの期待に応えられるよう、開設準備委員長の下、開設準備委員全員で日々努力をしています。
(おざわよしあき 埼玉県立養護学校さいたま桜高等学園開設準備委員)