音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年1月号

列島縦断ネットワーキング【岩手】

レインボーネットの取り組み

伊藤洋

はじめに

レインボーネットは、最初、知的障がい者を対象とした支援ネットワークとして、平成12年3月に発足しました。活動を重ねるうちに、三障がいを対象としたネットワークへの移行の機運が高まり、平成15年11月に再スタートし、現在4年目を迎えています。

当ネットの活動地域は、岩手県の沿岸北部で、以前は下閉伊地区と呼ばれていた宮古保健福祉圏域です。構成する自治体は、宮古市、山田町、岩泉町、田野畑村、川井村の5市町村で、人口は宮古市が6万人、4町村の計が4万人、全体で10万人という圏域です。

レインボーネットの概要

名称は『宮古圏域障がい者福祉推進ネット』で、『レインボーネット』は通称です。発足当時の圏域が旧7市町村で構成されていたことにちなみ、7色の虹にかけての命名でした。

会の目的は、圏域内の障がい当事者やその家族をさまざまな形で支援し、1.権利を擁護し、2.福祉の充実を図り、3.社会参加の促進を図ることをねらいとしています。

会員は、福祉施設・作業所をはじめ、行政機関、教育機関、医療機関、労働機関、社会福祉協議会、当事者団体、ボランティア団体、NPO団体、商店街振興組合、一般事業所、一般市民など、約100団体・個人となっています。実際は、委員会と部会を中心に活動していますが、それらの活動内容は次のとおりです。

「はあとふるひろば運営委員会」は、末広町商店街の空き店舗に開設している、交流スペース(はあとふるひろば1号館)と販売や就労活動の拠点(はあとふるひろば2号館)の運営について話し合う場で、当事者の皆さんにも積極的に参加してもらっています。

「社会資源創出委員会」は、圏域内に不足している社会資源を具体的に検討し、ハード・ソフト両面から新たな資源の創出に向けた検討を行う場で、必要に応じて開催しています。

「暮らし部会」は、当事者の地域生活を支援することをねらいとし、本人活動の支援、「スキルアップセミナー」や「グループホーム支援者研修会」等の企画・運営を行っています。

「発達支援部会」は、乳幼児期から学齢期の児童の発達を支援することをねらいとし、関係者のネットワークづくり、療育に関する学習会や情報交換会の開催をめざしています。

「保健・医療部会」は、精神障害に対する理解の促進のため、関係者の学習会や市民向けの講座を開催しています。本年度のテーマは「うつ病」と「アルコール依存症」です。

「就労部会」は、当事者の就労支援に取り組んでいる部会で、「ジョブガイダンス」等の企画・運営のほか、「はあとふるひろば2号館」の運営も担当しています。

「権利擁護部会」は、権利擁護システムの構築をねらいとし、成年後見制度の利用促進のための研修会開催や、『成年後見センター(仮称)』の創設に向けた検討を行っています。

「UD(ユニバーサルデザイン)推進部会」は、「人にやさしい街づくり」をめざし、小学校等の総合学習への協力や、公共の建物などのバリアフリー点検活動などを行っています。

レインボーネットの特徴

一つ目は、活動の基盤を相談援助に置いている点です。当ネットの再スタートに併せて、平成15年12月中旬から宮古市内のデパート「キャトル宮古」に「宮古地域障害者相談コーナー」が開設されて以来、当ネットはその運営に全面的に協力しており、現在も会員スタッフが交替で相談業務に当たっています。なお、前記の相談コーナーは、平成17年度から圏域5市町村の共同事業として実施されています。

二つ目は、発足当時から県の振興局(地方事務所)や市町村の障がい者福祉担当職員にも参画してもらっており、常に行政と共に考え活動している点です。

三つ目は、現在の当ネットは、単に障がい種別の幅を拡げただけでなく、地元商店街の振興組合や事業主を含む商工関係者、一般市民などにも会員になってもらい、人にやさしい街づくりの視点を明確にし、より幅広い連携をめざしている点です。

本年度の重点事業

一つ目は、障がい者と支援スタッフが共同で運営する『はあとふるひろば』の取り組みで、昨年の8月から開設しています。地元商店街振興組合との共同事業で行っているのが『1号館』の交流スペースで、身障者用トイレを備え、喫茶コーナーや作品展示コーナーを設け、いつでもだれでも気軽に立ち寄り、楽しく語りあえる居場所づくりをめざしています。

一方、岩手県立大学社会福祉学部の研究グループとの共同事業で行っているのが『2号館』の就労活動拠点で、視覚障がい者による「マッサージコーナー」と福祉施設や作業所の製品・一般農家の野菜等を扱う「販売コーナー」でささやかな商業活動を展開しています。今後は請負型の仕事の導入など、中間的な就労形態を模索する実験的な取り組みを進めています。

二つ目は、本年2月15日~16日に予定している『はあとふるフォーラム』の開催です。当ネットのこれまでの活動の成果を情報発信するとともに、当圏域の直面している諸課題である、たとえば、障害者自立支援法下の地域移行促進、成年後見ネットワークづくり、当事者活動の活性化などをテーマとし、参加者の皆さんと大いに語り合いたいと考えています。

今後の課題

障害者自立支援法の本格施行に伴い、当圏域にも「地域自立支援協議会」が共同設置されようとしていますが、今後はサブ協議会的な役割を担いながら、協議会と連携・共同して、圏域の相談支援体制の構築に貢献していきたいと考えています。そのためにも、ともすると、社会資源が集中している宮古市中心の活動になりがちな傾向を改め、圏域全体の活性化に努めていくことが、圏域住民のニーズに応える大切な視点と認識しています。

最後になりますが、ネットワークの要は人と人の良好な関係づくりだと思っています。言うは易く行うは難しですが、改めてこのことを認識し、折々の課題に応じて輪を拡げながら、より確かなネットワークづくりをめざしていきたいと気持ちを新たにしています。

(いとうよう レインボーネットワーク事務局長)