「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年2月号
大崎市における独自軽減策
大崎市
大崎市の概要
平成18年3月31日、古川市・松山町・三本木町・鹿島台町・岩出山町・鳴子町・田尻町の1市6町が合併し、新生「大崎市」が誕生いたしました。
大崎市は宮城県の北西部に位置し、仙台市より北へ約40キロメートル、人口が約14万人(県内第3位)、面積は約800平方キロメートル(県内第2位)と東西に長広い市域を有し、奥羽山脈から江合川と鳴瀬川の豊かな流れによって形成された肥沃な平野「大崎耕土」を有する四季折々の食材と天然資源、そして地域文化の宝庫です。
今後は、県北の中核都市としての役割を果たすべく、市民と共に新しいまちづくりを行ってまいります。
法改正後の現状
合併から一夜明けて翌4月1日、ご承知のとおり「障害者自立支援法」が施行されました。
この法改正後、関係者からの反響は大きく、福祉サービスを利用する障害者の方やそのご家族からは、これまでの「応能負担」から利用するサービスの量と所得に応じた「定率負担」に変わったため、利用日数を控える(自粛する)方が増えました。一方、サービスを提供する事業所からも、利用を控えられたことに併せて、日額制等の導入により、大幅な収入減となり「良質なサービスの提供ができなくなる事態に直面している」というご意見や、中には残念ながら「合併したら、障害者が生活しにくくなった」と訴える方もいました。
さらに、同年7月末日、障害福祉サービスの利用者団体(市内手をつなぐ育成会等親の会)とともに、福祉サービスを提供する事業所と合同で、市に対し「利用者負担の軽減と事業所への補助を求める」要望書を受けて、直ちに市独自軽減策の検討に入りました。
なお、本市の障害福祉の現状につきましては、平成18年3月31日現在で、身体障害者手帳保持者4,963人、療育手帳保持者866人、精神障害者保健福祉手帳保持者415人となっております。
独自軽減策の実施
このような状況下の中、緊急に市内障害福祉事業所の実態調査を実施した結果、本格施行となる10月以降の利用料ならびに事業所の運営に対し、次のような市独自軽減策を実施することと致しました。
(1)福祉サービス利用者への軽減策
今回の法改正で、事業所の実態調査を踏まえ、障害者ならびにそのご家族の意向を考慮し、最も影響を受けたと思われる居宅介護(ホームヘルプ)、短期入所(ショートステイ)、生活介護・共同生活(グループホーム)、共同生活介護(ケアホーム)等の「通所」「在宅」系の福祉サービスを利用しているすべての方々への軽減策を実施することに致しました。所得等の制限を設けず、当分の間、利用料を半額に軽減します(表1、2参照)。
表1 障害別内訳
対象者 | 予算額 | |
---|---|---|
身体障害者 | 68人 | 894,000円 |
知的障害者 | 270人 | 5,631,000円 |
精神障害者 | 28人 | 112,000円 |
障害児 | 22人 | 207,000円 |
計 | 388人 | 6,844,000円 |
表2 事業別内訳
事業名 | 対象者 |
---|---|
身体障害者通所施設事業 | 7人 |
身体障害者ホームヘルプサービス事業 | 52人 |
身体障害者ショートステイ事業 | 1人 |
身体障害者デイサービス事業 | 8人 |
知的障害者通所施設事業 | 110人 |
知的障害者ホームヘルプサービス事業 | 29人 |
知的障害者デイサービス事業 | 15人 |
知的障害者グループホーム事業 | 97人 |
知的障害者ショートステイ事業 | 19人 |
精神障害者ホームヘルプサービス事業 | 22人 |
精神障害者グループホーム事業 | 6人 |
障害児ホームヘルプサービス事業 | 9人 |
障害児ショートステイ事業 | 13人 |
(2)市内通所施設への対応策
市内通所施設を対象に、当分の間、国が実施している激減緩和策とあわせて、市独自に15%上乗せし、95%まで運営費の補填(ほてん)を行います。
なお、このような市の独自軽減策の実施については、担当職員が直接事業所等へ出向き、説明会を開催しました。
特に利用者への請求に際しては、障害者ならびにそのご家族の負担を考慮し、当初から利用者負担軽減後の金額を請求し、残りの負担金額を市へ請求するよう事務処理等の協力をいただいております(表3参照)。
表3 市内施設6施設
予算額 | ||
---|---|---|
内訳 | 身体障害者施設(1施設) | 249,000円 |
知的障害者施設(5施設) | 8,618,000円 | |
計 | 8,867,000円 |
地域生活支援事業
このたびの法改正に伴い『地域生活支援事業』として、実施主体が市町村へ移行した事業がいくつかありました。
ご承知のとおり、「相談支援事業」もその中のひとつであり、これまで宮城県事業として実施してきた「精神障害者地域生活支援センター響」いわゆる精神障害者のための相談支援事業が、県内で唯一本市の駅前施設内に開設されていました。しかし、10月1日の本格施行を控え、独自軽減策と同様、早急な対応を迫られました。
ちなみに、同施設内で身体障害者の相談支援事業を大崎圏域で実施していた関係上、大崎市をはじめ隣接する4町(加美町・色麻町・美里町・涌谷町)との合同会議を緊急に開催しました。協議の結果、それぞれ単独での対応は年度途中ということもあり、人材確保や財政的にも困難であることが報告されました。これまでの経緯もあり、前述した身体障害者相談支援事業と同様に共同で経費を負担し合い、三障害の相談事業を一括して対応できる事業所へ委託した次第です。
なお、この間、一部地元新聞紙上にて、「宮城県は9月末で事業を廃止するので、大崎市へこれまでのセンター運営の引き継ぎを依頼したところ、同市は財政難を理由に断った。」という報道が流れた時にはさすがに閉口いたしました。しかし、1市4町協力の下、障害者の方々の地域生活を第一に考え、おかげさまで混乱を招くことなく、何とか10月1日の本格施行と同時に新たな事業をスタートさせることができました。
今後の障害者施策
障害者自立支援法の施行から間もなく1年が過ぎようとしておりますが、昨年末に厚生労働省から提示された見直し施策の対応も含め、我々はまだまだとどまることなく走り続けなければなりません。
いずれにしても『障害をもつ方々が、地域で安心して暮らせる社会の実現』という、まさに今回制定された法律の目的が達成できるよう、今後とも障害をもつ方、そのご家族、事業所等の関係者の方々、隣接する市町や県を含め、協調して障害者福祉のさらなる充実に努めてまいりたいと考えております。
(大崎市保健福祉部社会福祉課)