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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年2月号

伊勢原市における独自の負担軽減策
―利用者本人の所得に応じた支援―

伊勢原市

伊勢原市の概要

伊勢原市は、神奈川県のほぼ中央に位置し、東京から50キロメートル、新宿から小田急線で約1時間、首都圏の近郊都市として立地しています。人口は約10万人、総面積55.52平方キロメートルのうち山林が約3分の1を占め、豊かな自然と温暖な気候に恵まれています。

また、丹沢大山国定公園の表玄関、大山詣りのまちとしても知られています。恵まれた自然と歴史文化を生かし、気品とやさしさのあふれるだれもが住みやすいまちづくり「ふるさと伊勢原」を目指しています。

平成18年12月現在の障害者数は、身体障害者手帳所持者2,282人、療育手帳所持者424人、精神保健福祉手帳所持者262人で、障害者自立支援法による支給決定者は491人となっています。

負担軽減策の検討

障害者自立支援法施行に伴い、全国的にサービス利用者の費用負担の増加とその軽減に対する要望が出されるなか、当市においても、暮らしの影響について実態把握を行いました。

また、都道府県や市町村が行う負担軽減策について情報収集を行うとともに障害程度区分判定に係る訪問調査を行うなかで、当事者の声を聴き、軽減策などの方針について検討を行いました。

負担軽減の案としては、1.月額負担上限額を軽減するのか、または、2.市の裁量で自己負担の割合を決定することができる地域生活支援事業で軽減を図るのか、の二つの案に集約されました。

まず、1の月額負担上限額の軽減については、過去の利用実態から、個々のサービス利用量が、上限まで達する利用者はわずかであったため、大きな効果が見込めないと判断されました。

そこで、2の地域生活支援事業での負担軽減を採用することとし、利用1回ごとの負担割合を軽減する内容としました。

地域生活支援事業における負担軽減の考え方

地域生活支援事業は、各自治体の裁量が大きく影響するもので、同制度の導入と実施は、長年、国主導で行われてきた障害福祉制度の大きな転換点であったと認識しています。

まさに個々の自治体の障害者支援に対する考え方が試されるときでもあったわけです。

地域生活支援事業の多くは、社会参加を目的とした事業です。当事者からも、各事業に対する、費用負担の軽減を望む声を多くいただきました。

当市には、視覚障害で、単身世帯や障害者世帯であっても、ガイドヘルパーを利用しながら、いきいきと社会参加し、自立した生活を送る方が多くいらっしゃいます。「毎日の暮らしと生きがい」のために、サービス利用は欠かせないものとなっており、負担の増大で利用が控えられ、QOLの低下が起こるのではないかと危惧されました。

障害があっても、地域で活動しやすい環境づくりに努めること、多くの方に地域へ出かけていただくことが、やがて市民の障害者理解へ、地域福祉の向上へつながると考えられます。行政からのサービス提供のみでは、暮らしは成り立ちません。市民同士の理解と、ともに支えあう意識が向上してこそ、法の目的である「地域生活」と「自立」を支援していけるのではないでしょうか。

負担軽減策の内容(表1参照)

地域生活支援事業の負担軽減策の一つ目のポイントは、負担割合を定率10パーセントではなく、半分の5パーセントを基準としたことです。市民税課税の方は「5パーセントの負担」、また、市民税非課税の方は「費用負担なし」の無料とし、全体の負担軽減を図りました。

さらに、二つ目のポイントは、費用負担の割合を決定する時に、利用者本人の所得に着目した点です。

世帯の課税状況ではなく、20歳以上の場合は、障害者本人の市民税課税状況により、負担割合を決定します。

障害の有無にかかわらず、自立のためには、経済的な安定は欠かせません。親亡き後を心配される、介護者の声も多く聞かれます。自分の収入で生活していけることが目標であれば、同居親族の収入にかかわらず、個人に着目することが必要と思われます。

現状は障害年金のみの収入の方が大半を占めていますので、利用者本人は市民税非課税となり、利用者負担は無料となります。

表1 地域生活支援事業における費用負担割合

【20歳以上】

障害者本人が市民税課税 5%負担
障害者本人が市民税非課税 無料

【20歳未満】

扶養義務者が市民税課税 5%負担
扶養義務者が市民税非課税 無料

重度障害者の負担軽減(表2参照)

介護給付は、障害が重度であればあるほど単価設定は高くなっており、定率負担では利用者負担も増大します。多くのサービス量を必要とされる方が、個々の費用負担についても高額となっていく仕組みです。

本市の移動支援事業、日中一時支援事業においては、障害の状況による単価差を廃止し、同じサービスを利用した場合は、同じ負担とすることを原則としました。

一方で、サービスの安定的供給と質の確保を図るためには、事業者サイドの採算性についても配慮を欠くことはできません。そのため、適正な人件費等コストが反映できるよう単価設定を行ったため、単価を上げたものもあります。ただし、負担割合を低くすることで、実際の負担額については、従来より軽減するよう、十分に個別の試算を行ったうえで単価設定を行いました。

表2 単価と費用負担

【移動支援事業】

  単価 利用者負担額
市民税課税 市民税非課税
1時間あたり 2,600円 130円 0円

※単価には、介護有・無の区分は設けない。

【日中一時支援事業】

    利用者負担額
市民税課税 市民税非課税
5時間以下 4,000円 200円 0円
5時間超~8時間以下 6,400円 320円 0円
送迎(片道) 400円 20円 0円

※送迎は、学校→施設についても加算対象。

子育て支援策

各市同様、伊勢原市にとっても、子育て支援は大きな課題であり、障害児を養育される方の支援についても同様となっています。

そのため放課後の一時預かりの場として、日中一時支援事業を活用するために、学校から施設までの送迎について、送迎加算の対象としました。介護者の方から学校の送迎が大変負担となっており、放課後の預かり場所があっても、自分で送迎するのであればかえって負担となるといった声を反映したものです。以前は、全額自己負担で利用されていましたので、わずかな利用者負担で送迎利用ができます。

地域生活支援事業の負担軽減策は、平成21年3月までを一期としていますが、その後の対応については、介護給付等他の費用負担や所得状況も含め、実態把握を行うなかで、「必要な方に適切なサービスが提供できること」を最優先として、再検討していきます。

他の負担軽減策

従前より実施していた市の単独事業ではありますが、地域作業所等への通所交通費助成事業、グループホームへの家賃分一部助成事業について、継続的に実施していきます。

また、補装具費の自己負担分については、市社会福祉協議会で自己負担額の半分を助成しています。

(伊勢原市保健福祉部障害福祉課)