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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年3月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●快適な近未来生活してみませんか?●

提案:貝谷嘉洋 イラスト:はんだみちこ

貝谷嘉洋(かいやよしひろ)さん

NPO法人日本バリアフリー協会代表。カリフォルニア大学大学院修了。上智大学後期博士課程修了。著書に「魚になれた日」講談社等。NHK厚生文化事業団障害福祉賞専門委員。読売プルデンシャル福祉文化賞受賞。E-mail:kaiya@npojba.org

横になったまま、マウス1つでパソコン操作!電話、リモコン操作、環境制御も!


ステップ1 横になったままパソコンをできるようにする

ニーズ:筋ジストロフィーのため全身の筋力が著しく弱く、座位を長時間保つことによって、関節の痛みや骨の変形を引き起こします。最も楽な横になる姿勢でパソコンを操作することにより体への負担を減らし、電動車いすに座っての外出の時間を延ばしたいと思いました。

ソリューション:まず、パソコンの液晶ディスプレイをVESA規格のアームに取り付けます。次にそのアームをキャスター付のベッド用テーブルに取り付けます。それぞれの部品の角度や位置を調整して横になった時、ちょうど目線にディスプレイの中心がくるようにします。最後に、コードレス・マウス(光学式)を利き手の右手の一番動かしやすいところに設置します。

予算:ディスプレイ(1~2万円)、 アーム(0.5~1万円)、ベッド用テーブル(2~3万円)、コードレス・マウス(0.5~1万円)。


ステップ2 マウス操作のみで電話をかけられるようにする

ニーズ:横になった状態で、左手にコードレス電話を持ち使用することはできますが、いつも持っていることはできないので、近くに介助者がいない時にマウス操作で電話ができるようにする必要性がありました。

ソリューション:lPフォンをパソコンにインストールします。ふつう、インターネットのプロバイダーがそのためのサービスを提供しています。あとは、マイクとスピーカー(ディスプレイに組み込まれたもの)をパソコンにつないで、音量を設定するだけです。

予算:毎月のプロバイダー契約料金+数百円。また、固定電話より安価の通話料。なお、スカイプというソフトを使えば、無料で通話することも可能です。マイク(2~3千円)。


ステップ3 マウス操作のみでリモコン操作、そして環境制御までも

ニーズ:横になったままパソコンを操作していると、ベッド用テーブルが邪魔になり枕元のリモコン装置を自分で取ることができません。介助者が近くにいない時でも、自分で電気機器を操作して快適に過ごしたいと思いました。

ソリューション:自分にとって最適な職住環境を求めて、自室を改装しました。その際に、テレビチューナー、DVDデッキ、プロジェクター、ステレオ、また8種類の照明器具、3つの電動ブラインドを赤外線リモコンで操作できるようにしました。同時にステップ1のように設定したパソコンにクロッサムというソフトと機器を取り付け、これらの電気機器の赤外線周波数を記憶させました。それによってマウスでリモコンを操作でき、上記すべての電気機器を操作できるようになりました。

予算:クロッサム(2~3万円)※現在は販売していません。近々、改良品発売予定です。


☆以上のように3つのステップを踏んで職住の環境を自分にとって最も快適にしました。数年という長いスパンで、技術開発を待ち、改装をしつつ達成しました。今ある技術をうまく工夫して組み合わせることにより、それほどお金をかけずにダイナミックに職住環境を改善することができます。