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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年5月号

運動と食事のバランスを考えてエンジョイ車いす生活

松尾清美

■メタボリックシンドロームが現れる前…32年前で21歳の時、自動車を運転中、電柱に衝突という事故で、第9胸髄を損傷しました(この時の体重は54kg)。そのため、へその上5cmから下肢が完全にマヒしています。つまり、足で歩行できなくなったのです。入院中に56kgになり、退院後、大学へ復学し「車いすになったからには勉強しかない」という思い込みの生活をしました。そんなさまざまなストレスの反動もあってか、徐々に太っていきました(60kg)。総合せき損センターへ就職してから、スポーツは卓球やマラソンを経験し、さらに車いすテニスをアメリカから日本へ持ち込み、選手として活動しながら普及活動を行ってきました。その楽しさとエネルギー消費量は多く、好きなだけ仕事をしてテニス競技に打ち込んで、好きなだけ食べて、友人たちと話して笑って過ごしていました(62kg)。

■メタボリックシンドロームの現れ、気づき…40歳を超えたころ、車いすテニスはいまだ現役で、国内トーナメントや国際大会に出場していましたが、年とともに筋力の低下と体重の重さを感じはじめました(64kg)。その2年後、健康診断で「高脂血症、血糖値が高い、脂肪肝」などの検査結果が伝達されるようになり(68kg)、医師からは、「成人病や糖尿病は身体管理を怠ったり、油断したら恐ろしいことになる。定期的な検査を受け、運動と食事量などを管理し内臓脂肪を減少させましょう!」とアドバイスを受けました。しかし、そのアドバイスも軽く受け流していました(70kg)。しかし、身体が重く感じたり、テニスの試合などで転倒して下肢につくった傷が以前ほど順調に治らなかったり、身体のマヒ部位の治癒力が減退したように感じ始め、やっと事の重大さに気づきはじめたのです。

■脊損者の身体状況とメタボリックシンドロームが現れやすい理由…完全マヒの脊髄損傷者は、脊髄の損傷部位で神経の伝達経路が遮断されたため、下肢の筋肉が自由に動かない、加えて感覚を感じないのです。そして、歩行できないためにエネルギー消費が少ないのです。つまり、私に必要なことは、運動によるエネルギー消費量と食事や間食によるエネルギー摂取量のバランスを考えて生活すること、そしてエネルギー摂取量を消費量より少なくすることなのです。家族の協力も不可欠です。そんな時、大学の医学部へ転職し健康に関して考えることになりました。結果は、1年間に8kg減量し62kgとなりました。また、50歳の時、20歳から吸っていたタバコも止めたので、毎朝の排痰もなくなり、爽快になりました。

(まつおきよみ 佐賀大学)