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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年8月号

列島縦断ネットワーキング【神奈川】

総合福祉サポートセンターはだのにおける「障害福祉なんでも相談室」の取り組み

香坂勇

1 法人設立の背景

戦後の社会福祉制度の創設期は、戦後急増した戦災孤児、戦傷病者あるいは引揚者など生活基盤そのものを失った方々へのいわば貧困対策が福祉施策のすべてでした。その後、高度経済成長下で国民の生活水準が向上し、社会福祉制度も低所得者対策としての限定的な福祉から、福祉サービスを必要とするすべての方々が利用できる普遍的な福祉へと発展してきました。

この間、経済の低成長を背景に、第2臨調に基づく行財政改革とともに福祉の見直しが行われ、さらに平成の時代に入り、少子高齢社会への対応や国民の生活意識の変化を踏まえた社会福祉基礎構造改革が行われてきました。今日では、社会福祉法の改正、介護保険法の制定や障害者福祉サービスの支援費制度への移行など、福祉サービス利用者をとりまく環境は大きく変化しています。社会福祉基礎構造改革では、措置制度から契約利用制度への移行によるサービスの利用者と提供者の対等な関係の確立と、個々人の多様なサービス需要への地域での総合的な支援などが基本的方向として示されています。

ところで、措置から契約へ、そしてケアマネジメントの導入等制度的な改革は達成しつつありますが、目的に沿った改革はほとんど達成されていません。それは、契約利用制度におけるサービス利用者の権利保障システム(総合相談事業・成年後見制度利用支援事業)が未整備な上、地域での総合的支援をめざした障害者ケアマネジメントの体制整備がいまだ法的整備の準備段階であることなどが如実に物語っています。

NPO法人「総合福祉サポートセンターはだの」(以下、サポートセンターはだの)は、このような背景を踏まえ、生活に特別な困難のあるすべての方々の権利を保障し、かつ必要なサービスが適切に提供されるよう支援するために、秦野市を総合福祉推進地域とした総合相談事業、ケアマネジメント事業並びに成年後見事業等の積極的な展開をめざすことを目的として、平成18年1月11日に設立されました。

2 事業方針

サポートセンターはだのは福祉と法人の基本理念「福祉サービス利用者の権利を保障するため」を具現化するために、次の基本方針を定めています。

(1)福祉サービスを自ら選び、利用するために、地域の社会資源ネットワークの強化、活用と連携による総合相談事業を実施する。

(2)自ら希望する生活が尊重された暮らしの実現のために、専門職員による公平、中立かつエンパワメントの視点によるケアマネジメント事業を実施する。

(3)特別な困難のある方々に適切な支援がなされるために、意思決定の困難な方に対しては成年後見制度の利用支援事業、そして災害時の援護に関しては防災支援事業を実施する。

3 基本事業の概要

(1)総合相談事業

総合相談窓口を常設し、福祉サービス利用者のサービス利用、生活相談並びに情報の提供を行っています。また、平成14年8月設立の秦野市障害福祉事業連絡調整会議との連携により、調整会議構成団体が開設する各相談窓口間との連絡調整、情報交換を促進し、福祉サービス利用者がより身近な地域で、総合的な相談、支援が実現するように努めています。

(2)ケアマネジメント事業

障害者ケアマネジメント従事者を配置し、生活に特別な困難のある方々の地域生活を支援しています。特に、サービス利用者の意向を尊重するとともに、地域資源の調整、開発により、保健医療、教育、就労や福祉サービスの有機的な連携に努めています。

また、はだの障害福祉ネットワーク(調整会議構成団体の相談担当者で構成)との連携により、各相談窓口担当者の協力の下、適正かつ公平なケアマネジメントの実施に努めています。

(3)成年後見制度事業

社会福祉士を配置し、特別な困難のある方々や障害のある方々の権利を保障するために支援しています。特に、判断能力が十分でないために意思決定が困難な方々には、成年後見制度の利用を支援しています。

また、成年後見申立て支援の他、法人後見人あるいは法人後見監督人などの任に当たることができるよう、弁護士、社会福祉士あるいは司法書士などとの協力関係の構築に努めています。

(4)防災支援事業

災害時に予想される困難等の個人情報を提供された方々に対して、地域協力者の確保と個人情報の管理を一元的に行い、災害発生時における被災防止、救援活動、情報拠点として機能するように努めています。

4 具体的な事業展開

(1)総合相談窓口の開設

市内の身体・知的・精神、重症心身等の障害児者の各施設、作業所、市社協、市役所の担当者で構成するはだの障害福祉ネットワークは平成18年7月、だれでも安心して気軽に相談できるように「障害福祉なんでも相談室」を開設しました。市の保健福祉の活動拠点である秦野市保健福祉センター内に設置し、サポートセンターはだのが事業を受託しました。

(2)総合相談支援事業の概要

1.身体、知的、精神の3障害に関する総合相談を、来室、電話、訪問で応じています。

2.事業内容は、福祉サービスの利用援助(情報提供、相談等)、相談支援事業の企画、立案、社会資源を活用するための支援、社会生活力を高めるための支援、はだの障害福祉ネットワークの運営、その他、必要な支援に関すること。

3.相談日は、月~土曜日の午前10時~午後4時。ただし毎週火・木・土曜日は、相談強化日として、はだの障害福祉ネットワークから相談員が派遣されます。

4.他の相談日は、サポートセンターはだのに所属する職員(社会福祉士、精神保健福祉士)が対応しています。

5.秦野市障害者自立支援協議会(平成19年2月設立)との連携の強化を図ります。

5 障害福祉なんでも相談室の相談実績

平成18年度の受付件数は833件、対応件数は1059件でした。相談を障害別にみると、精神37%、身体18%、知的15%、その他30%と精神障害の方の相談が特に多い傾向がありました。相談内容別では、生活全般36%、サービス利用34%、制度利用24%、その他6%でした。相談形態は、電話での相談が69%、来所相談が30%です。


図 拡大図・テキスト

6 今後の課題

一つ目は、就労支援対応の整備です。障害のある人の就労支援は広域で取り組んでおり、秦野市としては対応していませんでしたが、実際には支援が行われています。今後は、その支援を体系化する必要があります。

二つ目は、ネットワークの有効活用です。はだの障害福祉ネットワークの構成メンバーには、身体、知的、精神の専門の指定相談事業者がいます。サポートセンターはだのも指定相談事業者として中立的な立場で対応していますが、今後は、相談内容に応じて、サポートセンターはだのがコーディネーターの役割をし、それぞれ専門性のある事業所と役割分担し、より専門性を生かした支援を行っていく必要があると考えています。

三つ目は、制度の狭間にある人たちへの対応です。現在、専門的な支援が必要とされる発達障害や高次脳機能障害などの人たちを支援する機関が少ないと感じています。今後は、専門性のある支援が必要な方たちへの体系づくりが必要だと考えています。

(こうさかいさむ 総合福祉サポートセンターはだの理事長)